直近の東京都知事選で、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が61万票を獲得して話題を集めました。

田母神氏は所謂「ネトウヨ」と呼ばれる人たちの熱い支持を受けたそうですが、彼が最初に話題なった「『真の近現代史観』懸賞論文」で最優秀藤誠志賞を受賞した彼の論文「日本は侵略国家であったのか」を読むと、「張作霖爆殺がコミンテルンの仕業」であるとか、「ルーズベルトはコミンテルンに操られていた」とか、典型的な陰謀論が書かれていて、しかも参考文献や歴史資料の引用が全然ないため、論文としてはまるで成立していません。「説明と証明の区別がついていない」という好例の一つでしょう。

そもそも、この懸賞論文の選考委員の一人が田母神氏です。言っちゃえばやらせの出来レースですね。

この論文だけでも彼がトンデモさんだということがわかりますが、今回は彼の主に核・原発関連のツイートから、彼がどれだけデタラメで危険な人物であるかをご紹介したいと思います。田母神氏を支持している、または田母神氏の主張をよく知らない人は、是非ともご一読ください。

田母神氏のデタラメで自分勝手な解釈は、彼の発言の随所に見受けられます。例えばこんなことを言っています。
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参照

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中国で起きている損害賠償請求については、私もおかしなものだと思っています。1972年の日中国交正常化の時の共同声明で「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」となっていて(外務省HP)、この共同声明とサンフランシスコ平和条約との関係から、個人請求権もないと日本の最高裁判所は解釈しています(参照)。

しかし、田母神氏は「講和条約を結んだらそれ以前のことは問題にしないのが国際法」などと滅茶苦茶なことを根拠にしています。

もちろんそんな「国際法」など存在しません。もしも「講和条約を結んだらそれ以前のことは問題にしない」のであれば、日韓基本条約締結以前に占領された竹島を日本は問題にしてはいけないことになってしまいます。もちろん、サンフランシスコ講和条約後にアメリカから沖縄返還を求めてはいけなかったことになってしまいます。そんなバカな話はありません。田母神氏のこの発言は、法律や条約をないがしろにし、日本に領土放棄を迫るものになってしまっています。こういうふうに、その場その場で都合のいい解釈をしようとすると、自分にしっぺ返しが来ます。田母神氏はその好例。

また、田母神氏は福島出身でありながら今なお原発推進派であり、彼は「20キロ圏内は安全」だと主張しています。
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もちろんここで田母神氏が言っていることはであり、原爆投下での直接被爆以外に、その後広島や長崎に入って被曝した「間接被爆」(または「二次被爆」「入市被爆」)と呼ばれる現象が存在しています。田母神氏はそんなことも知らないのです。

しかも「危険か危険でないかを検証すべき」ではなく、「危険ではないことを証明すべき」と言っています。彼がどれだけ結論ありきかよくわかります。

また、田母神氏は今年2月6日の報道ステーションで、

「(福島第一原発の)周辺が危なくて住めないと言っている放射線医学の専門家は世界中に一人もいない」


「住めるにもかかわらず、科学的根拠のないまま『避難しろ』と言ったから生活が滅茶苦茶になった」

と断言しています。

この発言に、一体何の根拠があるのか全く分かりません。調べてみると、もちろんデタラメであることが分かります。

20キロ圏内の放射線量は公表されていますが、とても田母神氏の言うような安全な場所には見えません。

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福島県HP
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大熊町HP

ご覧の通り、20キロ圏内には線量が毎時5μ㏜を超える地域があり、中心である大熊町にはなんと毎時30μ㏜を超えるところもあるのです。東京都の放射線量が大体毎時0.05μ㏜程度であることを考えると、600倍です。

ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づいて、日本が定めている「一般人が浴びても差し支えない」としている被曝線量は1ミリ㏜(=1000μ㏜)、原発作業員でさえ「年間最大50ミリ㏜、5年で100ミリ㏜」(つまり年間平均20ミリ㏜)という基準になっています(原子力機構HP)。1ミリ㏜なら、毎時0.114μ㏜、20ミリ㏜なら毎時2.283μ㏜です。20キロ圏内には、原発作業員の被曝線量限度をはるかに超える地域が点在していることが分かります。

また、時々勘違いされることがありますが、ICRPが「100ミリ㏜を越えなければ健康への影響は確認できない」としている100ミリ㏜とは、1年間ではなく生涯での累積です。大熊町のような場所では1年足らずで被曝線量100ミリ㏜に達する可能性が十分ありますし、既に原発の影響を疑わせる小児甲状腺がん患者が出ています(参照)。田母神氏の「福島第一原発周辺が危険で住めないなんて言っている放射線医学の専門家は一人もいない」なんてのは、ただの妄想です。逆に、安全だと言っている専門家を紹介してほしいです。

また、こんなことも言っています。
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参照

彼は避難などさせなければ死ぬ人はいなかったと主張したいのですが、それは「20キロ圏内は安全である」という、それこそ何の科学的根拠もない彼の単なる願望に支えられている主張にすぎません。

普通に考えれば、原発事故がなければ避難もなかったのだから、原発の安全性に対する疑問が出てくるだろうに、彼はいまだに原発安全神話を信じていて、事故が起きたにもかかわらず、事故現場周辺まで安全だと思い込み、住民を避難させたことに怒りを感じているのです。結論ありきで現実を歪めているようにしか私には見えません。「科学的根拠なしに住民を避難させた」と言う田母神氏ですが、彼の福島原発周辺安全論こそ、何の根拠もありません。

ぜひ彼には、安全性を証明するために防護服なしで原発周辺で生活してほしいものです。

それに、彼がここで言っている「地震後3カ月もたってから避難」と言っているのは何のことなのでしょう? 最初の避難は3月11日の当日に始まっているのですが、この「3か月後の避難」とは何のことなのか、わかる人がいたらぜひお教えください。田母神氏が何かを勘違いしているんじゃないかという気がしますが。

さらにさらに、彼は選挙中こんなことまで言っています。

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朝日新聞

「50年間、運転中の原発でなくなった方は一人もいない」

これを聞いた時の私の感想。

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田母神氏は、本気でこんなことを言っているのでしょうか? まさか彼は東海村JCO臨界事故を知らないのでしょうか。この事故では2名が死亡、1名が重症となっているのですが。田母神氏は、自分に都合の悪いことは忘れるみたいですね。

「広島長崎で二次被爆はない」とか「福島原発周辺は安全」とか「日本で原発事故で死んだ人はいない」とか、無知をさらし、願望と現実の区別がついていない田母神氏。

選挙でこんな彼に投票した人たちは、彼が核武装まで主張している人間だと知っているのでしょうか。

彼は核武装を主張し、こんなことを言っています。

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毎日新聞HP

彼は「核武装すれば世界で発言力が増す」と思っているのです


それは北朝鮮と同じ発想だろう!


ここにも彼の結論ありきの非科学的妄想がにじみ出ています。核武装すれば発言力が増すかどうかは、北朝鮮、インド、パキスタンを見ればわかります。彼らに国際社会でどれだけの発言力がありますか? 「核武装して発言力を持とう」というのは、完全に北朝鮮と同じ発想です。田母神氏の発想は金正恩レベルです。もし日本が核武装なんかしたら、それこそ北朝鮮に核を持つ正当性を与えることになってしまいます。「日本から身を守る自衛のためだ」って言われてします。田母神氏はそういうところまで頭が回っていないんでしょうか?

また、核を持っていない国が発言力がないかと言ったら、ドイツは核を持っていませんが、EUの実質的なリーダーであり、発言力を持っています。アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの核保有している所謂5大国が発言権を持っているのは、核を持っているからではなく、彼らが第二次大戦戦勝国で、国連が連合国をベースにしているからでしょう。発言力のある国が真っ先に核を持ったのであり、核を持っているから発言力があるのではありません。田母神氏の発想は原因と結果が逆です。

それに、「米国がやっているように、他国にお金を出させて自分たちの金は自分たちのために使った方がいいでしょう」と言っていますが、それもデタラメです。例えば国連分担金で言えば、米国は日本の倍以上出しています。日本の「思いやり予算」なんてものを見ると、米国が日本に金を出させて日本は言われるがままのように思えてしまうのでしょうが、米国は田母神氏の言うように金を出さずに核の力で他国に言うことを聞かせているわけでもありません。
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外務省HP

また、日本はBBCの好感度世界調査ランキングで2012年は世界1位、2013年のランキングでも世界4位でした。

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BBCのHP

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BBCのHP

世界から日本が信頼を得ているのは、核武装なんかせず、金を出して国際貢献してきたからでしょう。核武装しているインド、ロシア、イスラエル、北朝鮮、パキスタンの評価の低い事。田母神氏はこんな国の仲間入りがしたいんですかね?

「他国に金を出させて
自分は金を出さない。
そして核の力で
相手に言うことを聞かせる」。


これが田母神氏の目指す日本です。


単なる自分勝手でわがままなジャイアニズム。北朝鮮と同レベルの国に成り下がろうというのが田母神氏のしようとしていることなのです。

以上のように、田母神氏の言っていることは、どれもこれも自分に都合がいいように事実を曲解したものばかりです。

張作霖爆発をコミンテルンのせいにしたり、広島長崎で二次被爆はないと言ったり、福島原発周辺は安全だと言ったり、日本で被曝して死んだ人はいないと言ったり、核を持てば発言力が増すと言ったり。

何一つまともな根拠はなく、「説明と証明の区別がついていない」という典型的な例だと言ってもよいでしょう。

どうも、私の印象では田母神氏が支持を集めたのは、彼の政策や人柄ではなく、彼が中国韓国への強い反発を見せているからではないかという気がします。先ほど引用した毎日新聞のHPでも、とある支持者について

>>別に政策にピンときたわけではない。
>>「中国や韓国に外交上つけ込まれ何となく損をしている」という思いに、
>>田母神さんがはっきりと応えてくれると感じた。

と答えています。

たしかに、中国や韓国に対して、ムカつくことが多々あるのはわかります。しかし、田母神氏のデタラメ具合は、そんな「中韓が嫌い」というだけの理由で支持していいレベルのものではありません。彼はなんでも自分の都合のいいように解釈し、周りが見えていません。

中韓が嫌いだから田母神氏を支持している皆さん。もう一度よく考えてみてください。田母神氏の考えの通りにすれば、中韓に文句を言われなくなると思いますか? 中韓関係以外のことで、彼が言っていることが本当に根拠があって支持するに値するまともな内容ですか?

政策などにピンと来ていないのに、「『中国や韓国に外交上つけ込まれ何となく損をしている』という思いに応えてくれると感じた」だけで支持してよいのか。彼が何を言っているのか、何をしようとしているのか、彼が信用に足る人物か、本当に核武装を主張したり、科学的根拠なしに「原発周辺は安全」なんて言えてしまう人物に力を与えることが日本のためになるのか。

この記事が田母神俊雄という人間について、再考するきっかけになれば嬉しく思います。

==愛国カルトに騙されないための心得==
・歴史資料を見ずに従来の歴史の常識を
 「間違ってる」と言う人を信じてはいけない。

 (張作霖爆殺をソ連の仕業にするためには新たな歴史資料検証が必要。
  それをせずに、日本に都合がいいように陰謀をでっち上げるような人を信じてはいけない)

・間接被爆も知らないような知識で
 核武装を主張する人を支持してははいけない

 
・結論ありきの調査を主張する人を支持してはいけない。
 (「危険かどうかを検証すべき」ところを「危険でないことを証明すべき」などと主張する人に
  正しい検証結果など出せない)

・東海村も知らないような浅はかな知識量で
 原発の安全性を語る人間を支持してはいけない

・「核武装して発言力を持とう」などと
 北朝鮮並の発想をする人間を支持してはいけない


・原因と結果を逆にする人間を信じてはいけない

・中国韓国が嫌いだというだけで、
 北朝鮮並のトンデモさんを支持してはいけない


・上記全てに当てはまる田母神俊雄を信じてはいけない
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