在日外国人に対する生活保護について、しばしばネットでは「諸外国では外国人に生活保護を与えるなんてありえない」というような主張が見られます。

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「普通の国では母国に帰ってもらうんだよ」

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「自力生活できないなら母国へ送り返すのが普通の国」

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「外国人が生活保護を受けること自体が不自然」


さて、実際は諸外国での外国人に対する生活保護の扱いはどうなっているのでしょう? 彼らの言う「普通の国」がどういう国を指すかわかりませんが(本当にこの手の人って「普通の国」とか「普通の日本人」とかって言葉好きだよな)、欧米の事情を見てみましょう。

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国会図書館所蔵の「人口減少社会の外国人問題 総合調査」という調査の中の諸外国における外国人への社会保障に関する項目を見てみるとわかりますが、ドイツとフランスでは社会保障において、不法滞在でなければその国の人間と外国人とを区別しません。イギリスにおいても、長期滞在者であれば外国籍でもイギリス人と同じ社会保障を受けられ、アメリカでも一部は州の裁量になっていますが、フードスタンプなどは合法滞在者であればアメリカ人と区別なく受け取ることができます。


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↑ドイツ

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↑フランス

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↑アメリカ


ご覧のとおり、G7各国では適法の長期滞在者であればほぼ本国人と変わらない保護が受け取れるようです。つまり、
「普通の国では自力で生活できない者は母国に帰ってもらう」
「外国人が生活保護を受けること自体が不自然」
などの言説は、少なくとも欧米先進国基準に照らし合わせると明らかに事実誤認があり、思い込みで発言しているだけだ
ということがわかります。

ところが思い込みと言うのは怖いもので、中にはこんな勘違いをしている人もいます。

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EU裁判所が「生活保護目的の外国人には交付しない」としたことを「外国人に生活保護は交付しない」と読み替え、それを「世界の常識」だと言ってしまいました。うーん、すごい。


もちろん皆様お分かりですね。「最初から生活保護『目的』でやってくる外国人には生活保護を交付しない」というものであり、「外国人に生活保護を交付しない」なんてものではありません。まったく、伝言ゲームというものは怖いものです


実際の判決内容を見てみましょう。これはドイツで生活保護を求めたルーマニア人女性に対する判決なのですが、このルーマニア人女性はドイツで職探しをしておらず、最初から社会保障だけを目的にドイツに来たことがわかります(ドイツの社会保障は手厚く、ルーマニアでまじめに働くよりもいい生活ができると言われています)。

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ちゃんと読みますと、「ドイツは、社会保障を受けることだけが目的のEU外国人に対して、社会保障の交付を拒否することができる」と書いてありますね。


前述のとおり、ドイツでは社会保障においてドイツ人と外国人を区別しません。ここで拒否されたのは、ドイツで働く気もなく社会保障だけを目的にした移民であり、普通にドイツで働き生活してきた外国人が困窮した際には、生活保護を受けることができるのです。


いやあ、思い込みとは怖いものですね。「社会保障『だけ』が目的の外国人には社会保障を交付しないでいい」というのを、「外国人に生活保護を交付しないのは世界の常識」なんて読み間違えるのですから。


中にはもっとひどい思い込みもあります。

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参照

この人は、フランスの場合「生活保護や補助金はフランス人のみ適用~」だの「移民2世・3世は犯罪をすれば強制送還」だの言っていますが、もちろん嘘です。


いや、「嘘」と言うより単純な事実誤認でしょうか? これはフランスの右翼政党「国民戦線」が主張している内容であって、現在フランスで行われている政策ではまーったくないのです。先ほど紹介しましたように、実際にはフランスでは社会保障において外国人とフランス人を基本的に区別しません。この人の場合は、自分が求める情報が見つかったから、よく読みもせず確かめもせずに飛びついたのでしょう。ちゃんと自分の頭を使わないで脊髄反射だけで行動しているとこうなりますから気をつけましょう。


さて、話は少し戻りまして、先ほど紹介した「外国人に生活保護を交付しないのは世界の常識」などと勘違いされていた人のツイートに「日本も最高裁で違憲判決出てるよね?」とありますが、これについても述べておきましょう。


最近最高裁で「外国人には生活保護法に基づく生活保護の受給権がない」との判断が示されたことで、「外国人の生活保護に違憲判決が下った!」と騒ぐ人たちが続出しました。


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↑「在日外国人への生活保護に違憲判決が出た」と騒ぐ方々。


「生活保護 外国人 違憲」で検索すると山ほど出てきます。



ところが実際の内容を見てみると、ぜーんぜん「違憲判決」なんて出ていないことがわかります。


今回の裁判は、生活保護の支給を拒否された外国籍の人が起こしたものなのですが、そもそも最初から外国人に生活保護を受給する法的に保障された「権利」はありませんでした。先に紹介した国会図書館所蔵の調査を引用してみましょう。

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見てわかる通り、「外国人の生活保護受給権は認められていない」ものの、行政措置によって「少なくとも緊急な場合であれば日本人と同じよう件で生活保護を受給できる」と解釈・運用されてきました。しかしそれはあくまで行政が判断する措置であって、「権利」ではないので不服申し立て等は出来ません。

今回の最高裁の判決はこのようなものでした。

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(↑判決全文はこちら


外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により
事実上の保護の対象となり得る
にとどまり、
生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、
同法に基づく受給権は有しない」



お分かりでしょうか? 今回の判決は、外国人は「法律に基づく生活保護受給権は有しない」が、外国人を「行政措置により事実上の保護の対象となりえる」としているのです。これはこれまで行われてきた行政措置の在り方を追認するものであり、外国人の生活保護支給に違憲判決が出たなんてものでは全くないのです。

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↑実際の判決内容はこれまでの行政運用を追認したものであった。(参照


いやあ、繰り返し言いますが、本当に思い込みや伝言ゲームって怖いですね。これまでの行政措置を追認した判決を、「これまでの行政措置は違憲である」と勘違いして拡散する人がこんなにも大勢いるのですから。


外国人に対する生活保護等の社会保障については、これからも長く議論の対象になることでしょうが、少なくとも「『普通の国』では外国人に生活保護支給などしない」だの「外国人への生活保護は違憲判決が出ている」だの、事実誤認のデタラメに基づいて議論してはいけませんね。正しい情報なしに、正しい結論も正しい行動もあり得ません。ちゃんとデータを調べ、正しい情報に基づいてこの問題を考えていきたいものです。


==愛国カルトに騙されないための心得==
1.ツイッターやまとめサイトではなく、
  信頼できる情報源を探そう。


2.伝言ゲームをする人間を信じないようにしよう。

3.せめて事実かどうかググるぐらいのことはしようぜ。
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