7月28日、参議院で安保関連法案に対する実質的な審議が始まりました。そこで、集団的自衛権の行使と戦争との関係を問う質問がありました。そのやり取りをそのままここに書きだします。

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福山哲郎議員
「A国からB国に攻撃があります。我が国と密接な関係にあるB国から要請を受けて、日本は存立危機事態の場合、武力行使ができる。しかしながら我が国には攻撃はありません。A国とB国は紛争ないし戦争状態です。要請を受けて日本が武力行使をしに行くということは、これは総理、戦争に参加をすることですよね

私は、実は自分のHPその他も含めて、『戦争法案』とか『戦争国家』とかいう表現は使ったことがありません。冷静に議論したいと思っているからです。

しかし集団的自衛権を行使するということは、自衛のためであれ、他衛のためであれ、戦争に参加をすることだと、このことは総理、お認めいただけますか

「お認めいただけますか」と聞いているのだから、「はい、認めます」か、「いいえ、認めません」のどちらかで答えるのがまともな日本語の会話です。そして、「いいえ、認めません」の場合なら、真意を説明してその誤解を解けばいいのです。

ところが、これに対する総理の回答はこうでした。
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安倍晋三総理
「今回ですね、我々が容認をした集団的自衛権、これはいわば一般に言われる集団的自衛権のすべてではなくて、まさに三要件に当てはまるものに限るわけであります。

それはすなわち、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、それにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が脅かされる明白な危険があること。これを排除してですね、我が国の存立 ―他の国ではありません― 我が国の存立を全うし、国民を守る、まさに日本の国民を守るために、他に適当な手段がないこと。必要最小限度の武力行使にとどまるべきこと。この3要件が当てはまる場合、集団的自衛権に置きましてもこの3要件に当てはまる場合があるとの考え方の下にですね、47年の見解、『必要な自衛の措置』の中に当てはめよう、ということになったわけです」


全く質問に答えていない!

質問は「戦争状態にあるA国とB国の一方の要請を受けて武力行使を行うことは、A国とB国との戦争に参加することだと思うが、それを認めるかどうか」というものです。それに対し安倍総理が答えたのは「三要件に当てはまる場合に武力行使が可能になります」というものであり、全く議論がかみ合っていません

今回の安保法案に関する議論を見ていると、野党が「Aですか?」と聞いているのに、Yes, Noで答えずに全く違う説明をするということが多々見られます。一方、はっきりと答えると、例えば「先制攻撃なのではないですか?」と聞かれて、外務大臣が「国際法上は先制攻撃に当たります」とはっきりと答えてしまい、その後の総理の答弁とかみ合わなくなる、という事態が起きています。はっきり答えたらまずいから答えないのは見え見えです。

これに対し、当然福山議員は追及を続けました。
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福山議員
「私の質問には全く答えていただいてません。

A国とB国は紛争しているんです。戦争中なんです。B国から要請を受けて -同意と言うことも政府は言っていますが- 武力行使をするということは、このA国とB国の紛争ないしは戦争に参加をすることですね、と聞いています。

説明をしてくださいと申し上げているわけではありません。戦争に参加するかどうか答えられないのだったら、答えられない理由をお答えください。
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安倍総理
「今福山議員が仰っているのは、集団的自衛権をフルに認めているときの例として私に質問をしているわけでございます。まさに密接な関係にある他国に対する攻撃に対して、こちらがいわば攻撃をすると言うことでございますが、まさにそれに対しては我々は三要件が当てはまっているということを従来から申し上げているわけでございまして、三要件が当てはまっている中においてですね、いわば武力攻撃、この存立危機事態における武力攻撃に対してですね、我々はそれを排除する行動を行うわけでございます。

まあ、ですから、例えばですね、A国とB国が紛争状態になっている中においてですね、我が国の存立にかかわりがない場合は、我々は、例えばA国に対するB国からの要請があったとしても、我々はこの戦いに参加することはないわけでございます。

ここを明確に言わなければならないわけでありまして、まさに我が国の存立にかかわるですね、
国民の生命・自由・幸福追求の権利が脅かされる明白な危険があるという認識を取った時にですね、まさに我々は武力行使を行う。これをですね、ここのところが、一番肝心なところではないかと、このように思っているところでございます

安倍総理の説明は、福山議員の言っていることは「限定的」集団的自衛権ではなく「フルスペック」の集団的自衛権のことだから、そもそもそういう事態はないのだ、という意味です。

しかし、福山議員は最初にパネルを用いて、このことに言及し、そのうえで、A国とB国の紛争に参加することについて質問しています。もしもこの質問が的外れならば、

「それは確かにA国とB国との戦争に参加することですが、その事態を放っておけば、結局我々は戦争に巻き込まれます。そうなる前に、戦火が及ぶのを待つのではなく、積極的に参加することで被害を最小限に食い止めようというのがこの法案の意図であります」

と説明すればいいのです。ところが、安倍総理は絶対に「戦争に参加することです」とは言わないこの発言をしてしまえば、「戦争法案」というのが「誤解だ」と言えなくなってしまうからです。

福山議員はさらに続けます。
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福山議員
私はここで、最初に存立危機事態のことを、総理が言ったことをちゃんと説明しました。そのことを説明してくれなんて言っていません。
そして日本の存立に関係ない時に戦争に行くのかなんて一言も聞いてません。
集団的自衛権を限定であれ何であれ -ここ(パネル)にちゃんと「限定的集団的自衛権」って書いてありますよ- A国とB国が紛争中で武力行使をしに行くというのは、戦争に参加をすることですね、A国とB国の紛争に参加をすることですね、と聞いています。
なぜ答えられないのかという理由も答えていただいていません。時間がもったいないです。委員長、この答弁の姿勢は、私は非常に不誠実だと考えております」
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安倍総理
「これはまさにポイントについて説明をさせていただいているのでありまして、ここがですね、ここが大切なところでありますが、A国とB国がですね、紛争状態にあって、B国がA国に攻撃を受けた時にですね、いわばB国から依頼を受けた。今福山委員が示している、そこに三要件が当てはまるということを前提という質問でございますね。

ということであったときに、しかしその時にA国とB国の紛争の元、そのものをですね、そのものに対して我々が撃滅にいくということではないわけでございます。そこが問題であります。今までもですね、今までも説明をしている通りですね、A国とB国が戦っていて、いわばA国に対してですね、その国の領土に上がっていって撃滅をするということではないわけでありまして、我が国の存立に関わる事態に対応するためであります。ここのところはどうかご理解をいただきたい。これがですね、まさに私たちの解釈であるわけであります」


欠片ほども質問に答えていない!

さっきの答弁よりもさらに回答がずれました。「相手国の領土に乗りこんで撃滅しようというわけではない」って、だれがそんなことを聞いていますか? それに日本が撃滅する気がなくたって、日本が攻撃したら相手国は日本を撃滅に来ますよ。相手からしたら日本に「侵略」されたに等しいんですから。日本に相手を撃滅するつもりがなければ、たとえ日本が攻撃を加えても、相手は日本を撃滅しないとでも思っているんでしょうか? とんだ脳内お花畑です。

ここで審議は中断しました。当然ですよね、こんなに噛み合っていないのですから。再会した後、福山議員が同じ答弁を繰り返す総理に対し、単純明快な答えを求めました。
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福山議員
「総理、単純なんです。これは戦争に参加をすることかどうか、一言で答えてください
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安倍総理
「それはまさにですね、三要件にある必要な自衛の措置、必要最小限度の実力行使をとる、そしてそれはですね、まさに我が国の存立にかかわる脅威に対してそれを排除するために取るということで、その国に乗り込んでいって撃滅するというのとは違う。つまり、B国とともにですね、そこに大規模な空爆等を行うと言うことではなくて、まさにそれはですね、我が国に対する存立、そして国民の生命や自由、そして幸福追求の権利を脅かす脅威に対して、それは排除するということでありまして、それに必要な自衛の措置をとるということであります。

またしても同じ回答を繰り返すだけ。

このあと内閣法制局長官が登場して、「自衛の措置だから戦争ではない」という答弁をします。安倍総理はこの後記者に対しても、「戦争という表現はふさわしくなく、自衛の措置だ」という回答をしています(時事通信)。

ここに安倍政権の卑怯さがあります。

他国に軍隊を送ることを「積極的平和主義」と呼び、他国の軍隊を守ることを「集団的自衛権」と呼び、今度は「自衛のためだから戦争ではない」と言いだしました。

じゃあ、太平洋「戦争」は何だったのでしょう? 東京裁判で東条英機は「自衛のためだった」と主張しました。じゃあ、あれを当時の日本人はあれを「大東亜自衛の措置」と呼びましたか? 「大東亜戦争」と呼んでたじゃないですか。

自衛だろうが侵略だろうが、武力行使は戦争以外の何ものでもありません。それに、A国とB国が紛争中に、B国の要請に基づいて日本がA国に武力攻撃を行えば、A国から見れば日本から侵略されたに他なりません。安倍総理や横畠内閣法制局長官の答弁に当てはめたって、これは戦争です。「戦争ではなく自衛の措置」なんて完全なる詭弁です。

自民党はこんな卑怯な言葉のすり替えをしないで、堂々と「A国とB国の戦争に参加することですが、それは日本の国の存立のためにやむを得ない戦争なのであります」と答弁すればいいのです。そうやって説明したうえで、国民を納得させればいい。でもそのように説明したら国民を納得させる自信がないから、「戦争法案だ」という声が一層高めるのが明白だから、こういう卑怯な答弁をしているのです。

さらに、安倍総理は「日本の存立を脅かす明白な危機」と繰り返し述べています。じゃあ、どういうのが明白な危機なのでしょうか。

安倍総理はその判断基準について、こう述べました。

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相手が「日本を攻撃する意図がないと公言」している場合でも、こちらが相手の意図を推測して「攻撃するつもりだ」と判断したら、「存立危機事態」と見なして自衛のための攻撃を行うことがありうると述べたのです。

相手は「日本を攻撃しない」と公言しているんですよ。それでも、「攻撃してくるに違いない」と決めつけて、こちらから先に攻撃する。

これ侵略じゃなくて何ですか?

イラクがアメリカを攻撃するつもりなくても、「大量破壊兵器を持って、アメリカを攻撃するつもりだろ」って言ってイラク戦争を仕掛けたアメリカと何の違いがあるんですか、これ? こんなのは「歯止めがない」どころか、むしろ積極的に戦争しかけることしか意味しません。

昔「少年サンデー」に連載されていた『炎の転校生』(島本和彦作)というギャグ漫画で、主人公がライバル(と自分が思っている相手)に対して、
「今は、きみにうらみはないが…
 そのうち必ずできる!!
 そうなる前に…おれはきみを倒そう!!」

と言うシーンがあります。
もちろんこれはギャグシーンで、完全にただの被害妄想なのに、それを爽やかに少年マンガっぽくが言うという荒唐無稽っぷりが面白いのですが、安倍総理の言っていることは「少年サンデー」のギャグマンガ並です。
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↑島本和彦『炎の転校生』。安倍総理の答弁はギャグマンガ並みである。

安倍総理は「丁寧に説明していきたい」と言っています。これが安倍総理の「丁寧な説明」です。

安倍総理は衆議院で「116時間かけたので審議は尽くされた」と述べています。
こんな質疑応答で時間を空費して、「審議は尽くされた」なんてどうして言えますか?

安倍総理は「国民の理解が進んでいない」と言います。しかし、既に多くの人に指摘されていることですが、逆に国民の理解が進んでいるからこそ、時間が経てば経つほど反対が増えているのだと思います。

例えば、前回「質問内容が卑怯だ」として紹介した読売新聞の世論調査。この調査でも、6月頭には賛成40、反対48だったものが、7月末には賛成38、反対51に差が広がっています。
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6月頭の調査
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7月末の調査

私も、最初の段階では、この法案には「違憲」という立場から反対でしたが、内容を「戦争法案」と呼ぶことには抵抗がありました。しかし、答弁を聞けば聞くほど、「戦争法案」以外のものには全く見えなくなってきます

質問からずれた答弁を繰り返すことで時間を空費し(こんな答弁して何が「116時間もかけたから審議は尽くされた」だ)、戦争を「自衛の措置」とすり替えることで国民の眼を逸らそうと詭弁を用い、ギャグマンガ並みに荒唐無稽な「明白な基準」を持ち出してくる。

自民党内部からは「沖縄のメディアは左翼に支配されている」なんてネトウヨが言いそうな典型的な発言が飛び出し、総理補佐官は「日本のためならば法的安定性は関係ない」と、憲法無視を公言する。自民党は、朝鮮人差別発言を行っていない点を除けば、あとはネット上の愛国カルトと殆ど変らなくなってしまったと感じています。

我々は微力かもしれませんが、主権者は総理ではなく国民です。私はこれからも、ネットで、外で、反対の声を挙げていきたいと考えています。

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