ここまで2回(第1回第2回)にわたって、上念司氏の憲法理解がどれだけ稚拙で幼稚で陳腐なものか紹介してきましたが、今回はその続き、「常識は選挙結果で決まる」の回です。

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前回の最後で、上念氏がこのように発言していることを紹介しました。

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本人のツイート

>>常識が憲法に書いてない。
>>でも、憲法に書いてないことが憲法の解釈を決めている。

>>9条の解釈だって、常識に合わせて変化していいはず

上念氏が何を言っているのか少々わかりづらいと思うので解説しますと、まず、法律は解釈によって運営されるものなわけです。上念氏はここで前回の
「牛丼合憲論」を持ち出します。憲法第13条には「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と書かれていて、牛丼を食べることは、その「自由」や「幸福追及」で保障される権利であり、公共の福祉に反しないということは、常識的に考えて明らかなのだから、国民は牛丼を食べる権利を有していて、その権利は尊重されねばならない(法律等で牛丼を食べる権利を侵害してはならない)、となるわけです。

ここまでは誰でもわかる理屈だと思います。そして、法解釈が常識に合わせて変化することがある、というのも事実で、例えばアメリカ合衆国では、かつて公共施設での黒人分離政策は合憲とされていましたが、1950年代に人権意識の高まりにより、違憲だとされるようになりました。

私としては、「平等」や「人権」の考え方の変化と、これまで違憲とされてきた集団的自衛権を合憲とする解釈変更では、かなりレベルの違う問題だと思います。何度も出している例え話ですが、「馬しか通ってはいけない」という法律があって、シマウマが「馬」に入るかどうかは解釈次第で変わり得ることであり、平等や人権の考え方の変化はこれに当たると思います。一方、これまで違憲とされてきた集団的自衛権を合憲だというのは、「馬しか通ってはいけない」という法律に対し、「この『馬』は牛馬の意味であり、牛も通っていいのだ」と言い張るようなものだと思います。

しかし、「常識」の変化により法解釈が変化することがありうる、ということ自体は事実です。


それで上念氏は、「9条の解釈も常識に合わせて変えていいのだから、現在の常識に照らし合わせて、集団的自衛権は合憲だ」と言いたいわけです。

しかし、一体いつそのような常識ができたというのでしょう?

何度も紹介している通り、憲法学者の98%が、集団的自衛権は違憲だと言っています
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弁護士ドットコム参照

さらに、元最高裁判所長官が「違憲」だと断じています。

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朝日新聞2015年9月3日

つまり、
憲法の専門家の常識に照らし合わせれば、集団的自衛権は違憲、というのが常識なわけです。

ところが、このような専門家の意見に対し、上念氏は真っ向から対立し、「学者やめたら?」とまで罵倒します。

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本人のツイート

では、上念氏が集団的自衛権を合憲だと考える根拠、すなわち集団的自衛権を憲法が認めているというのが常識だと考える根拠は一体何なのでしょう?

それを知って、私は度肝を抜かれました。

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本人のツイート

>>憲法学者が「常識」の番人なんですか?(略)
>>日本には選挙と言う制度があるんで、
>>それを使って広く国民に聞いてみたらいいんじゃない?


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本人のツイート

>>選挙って仕組み知ってるか?
>>世論を国政に反映するんだぜ!


つまり、上念氏は、「常識は選挙結果で決まる」と言っているのです。

そんな馬鹿なことがあるか!!!

そもそも選挙は常識を測るものでもないし、選挙で勝った側が常識だなんてそんな理屈があるわけがありません。安倍政権は選挙では大勝しましたが、投票率52.7%の選挙で、5割弱の票を取ったにすぎませんこちらの記事参照つまり、自公に票を投じたのは国民の約2割5分ですし、そもそも選挙では、全ての党が常識はずれでろくでもなくても、どこかが勝つわけです。選挙で勝った方が常識だったり、選挙で常識がはかれたりするわけがありません。

まして、「アベノミクス解散」と呼んだ解散です。「アベノミクスが評価された」までならまだわかりますが、「憲法9条から集団的自衛権を読み取れる」なんてことが支持されたり、ましてや「常識」になったなどということは、全く意味しません。実際、どこの世論調査でだって、安保法制支持は5割を切っていました。これのどこが「常識」でしょうか。

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参照

もし「カラスは白いとする」という公約を掲げている人が、経済政策を評価されて当選した場合、「カラスは白い」というのが常識になったと言えるでしょうか。言えるわけがありません。

選挙は常識を測るものなどではありませんし、選挙結果が、これまで合憲だったものが違憲になったり、違憲だったものが合憲になったりする根拠にはなり得ません。


まして、もし上念氏が言う通り、集団的自衛権が必要だというのが「常識」なのであれば、解釈改憲なんかして物議を醸さなくたって、堂々と憲法96条の手続きに則って、憲法改正によって集団的自衛権を合憲化できるはずです。なんたって、それが「常識」なんですから。

上念氏のように、選挙で勝った者が「常識」だという考えは、それ以外を「非常識」として排除する恐れを孕むのみならず、選挙で勝った者の暴走を食い止める手段を放棄する考え方だと言って過言ではないでしょう。独裁政権とは、このような考え方の下で生まれます。

上念氏は、集団的自衛権を違憲と考える憲法学者に対し、「無責任」だと言い、「学者やめたら?」と罵倒しました。しかし、専門家である憲法学者の98%もの意見を無視し、これまでの解釈内で可能な法案を作ることも放棄し、改憲も放棄し、選挙結果を「常識」扱いして解釈変更で済ませることのほうが、よっぽど無責任な考え方でしょう。なんのために改正手続きが定められていると思っているんですかね。

上念氏は憲法問題について、「憲法学者に騙されるな」と言います。一方、上念氏は経済評論家です。憲法問題について、「経済評論家に騙されるな」という言葉の方がよほど適切であると強く思います。

==追記==

上念氏は、議論の後こんなことを言っていました。

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>>結局最後は誹謗中傷。
>>負け惜しみ

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>>パヨクは議論で負けると罵倒して無視する

こいつ、議論に勝ったつもりでいるのか…。

しかも、自分で「パヨク」なんて言葉を使ったり、「勉強以前に洗脳を解かないといけない」と言ったりして罵倒、誹謗中傷をしておきながら、自分は相手が罵倒したり誹謗中傷したりしていると批判する…。だめだ、こいつ…。

自分が支持する方が「常識」だと思い、専門家も否定し、こんな議論しておきながら勝ったつもりになり、自分は他人を罵倒、誹謗中傷しておきながら、相手から罵倒されると相手の議論レベルが低いかのように批判。

上念司、ジャーナリストを名乗るなら、もう少し客観性というものを磨く必要がありますね。

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