少し前に、このブログのトップ記事のコメントで、読者の方から日本の「自虐史観」に関する産経新聞記事を紹介されました。
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産経新聞記事

この記事を紹介してくれた人は、「満州事変は自衛の措置だった」とか「マッカーサーは間違っていたのは日本ではなくアメリカだったと認めたいた」だの、絵に描いたような右翼的大日本帝国称賛者であり無知な歴史修正主義者でして、当然この産経記事も肯定的に紹介していました(読みたい人はコメント番号682からどうぞ)。

そして、流石にそのような人が紹介してくれただけあり、この産経新聞記事も、実に稚拙で、典型的な「1ビット脳」を晒していました。

1ビット脳」とは、複雑な世界を理解することも、理解できないことを理解できないとありのまま受け止めることもできず、「YesかNoか」「正義か悪か」「敵か味方か」のように、極限まで単純化して考えることしかできない人のことです。

戦争で、一方を正義、一方を悪と決めつけるようなものが、その典型と言えます。このような考え方に陥っている人は、 戦争でのA国の行為を批判しただけで、「B国が正しいと言うのか!」と批判しだします。「戦争そのものが悪だ」とか「どちらの国も正義ではない」というような考え方はなく、「悪と正義」「加害者と被害者」というような考え方しかできないのです。

産経新聞は、見事にそのような頭を晒してくれています。

>>45年3月10日未明の東京大空襲は、女性や子供を含む死者数推計10万人超、被災家屋26万戸超、罹災者100万人超の大惨事となった。後の広島、長崎への原爆投下と並ぶジェノサイド(大量殺戮)であり、人道上許されない戦争犯罪だといえるが、国会議員の認識は甘い。

>>民主党の細野豪志政調会長は2015年3月10日の記者会見で、東京大空襲について「国策の誤りを反映した結果だ」と述べた上で、ナチスのユダヤ人虐殺を引き合いにこう語った。

>>「ホロコーストを全体としてしっかりと総括しているのがドイツだ。わが国が先の戦争で自国民はもちろん、周辺諸国に対して大変な被害をもたらしたことについて真摯に反省することは重要だ。残念ながら今の安倍政権を見ているとそこに疑念を持つ。戦後70年を迎えるにあたって心していかなければならない」

>>
日本は侵略戦争を仕掛けたのだから米軍による無差別空襲を受けても仕方がないとでも言いたいのか。そもそも日本の戦争とホロコーストを同列に語ること自体が支離滅裂としか言いようがない。これが民主党政権で閣僚まで務めた国会議員の歴史観なのだ。


民主党の細野氏が東京大空襲について、「国策の誤りを反映した結果だ」と述べたら、それで「東京大空襲を肯定するのか」と批判しているわけです。なんと情けない1ビット脳でしょうか。産経記者がどれだけ低レベルな発想しかできないか、如実に表していると言えるでしょう。

実際の細野氏の発言を見ると、どこにも東京大空襲を肯定するような、「日本が悪いのだから仕方がないことだった」と読み取れるようなことは書かれていません。

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(↑民主党の公式HP

>>10万人の方々が命を落としたと言われる空襲でございまして、
>>やはりあれだけの犠牲を出したということ自体、わが国としては、
>>しっかりと我々胸に刻まなければならない出来事だと思いますし、
>>やはり「国策の誤り」というものを反映した結果でもあると思っております。


「あれだけの犠牲を出したということ自体、しっかり胸に刻まなければならない」と言っているわけですから、普通の読解力があれば、空襲を「日本が悪かったから仕方がなかった」と言っているとは読めないでしょう。戦争という国策の誤りにより、あれだけの犠牲を出してしまったということを反省しなければならない、と言っているのであり、「日本が悪かったのだから、空襲も仕方がなかった」と言っているなどと、どうして読めるでしょうか。日本が戦争をしたことを批判・反省しているのであり、米国による空襲を肯定する発言など一言もしていません。

これを読んで、東京大空襲が「日本が悪かったのだから仕方がなかった」などと考えていると読み取れるというのは、産経記者が、正義か悪か、被害者か加害者かというような、1ビット脳の考え方しかできていないからでしょう。「日本は間違っていた」と考えることを、「米国は正しかった」と脳内で勝手に読み替えているのです。

さらに言えば、産経記事は

>>そもそも日本の戦争とホロコーストを
>>同列に語ること自体が支離滅裂としか言いようがない。


と言っていますが、細野氏の発言を読んでみると、はっきりと「(ホロコーストと)日本の様々な責任の問題と同列に論じる必要はないと思います」と言っているのです。産経はちゃんと発言を聞いてないんじゃないですかね?

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この発言は、「ドイツはホロコーストという歴史上最大の犯罪行為について過去の総括をしている。日本も過去の総括が必要である」という内容であって、戦後のドイツの反省の仕方を見習おう、と言っているのであり、戦前の日本とドイツの戦争犯罪を同列に語っているのでないことは明らかです。

産経は発言内容をちゃんと読んだのか怪しいです。「ホロコースト」とか「反省」とか「国策の誤りの結果」とか、2,3のキーワードだけ聞いて、「ムキーッ!」と怒って記事を書いたのではないでしょうか。だとしたら、せいぜい個人ブログの書き込みレベルです。新聞を名乗る資格などありません。勝手に曲解して「これが民主党の歴史認識だ」などと書いていますが、明らかに産経の歴史認識がおかしいから、発言内容を理解できていないだけです。

==追記==

別の記事で、細野氏は東京大空襲について「米軍による残虐行為」と発言しています。

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上述記事の1週間後の産経新聞

「日本の国策の誤り(戦争を始めたこと)の結果、東京大空襲で多くの犠牲者を出した」という考えと、「東京大空襲は許し難き戦争犯罪だ」という考えは、対立するものではなく、一人の人間が両方の考えを持つことは可能なのです。

それを、
「0か1か」「YesかNoか」「OnかOffか」のように、対立して共存しえない考えと思い込み、勝手に東京大空襲容認論という拡大解釈をする1ビット脳の産経新聞は、やはり新聞を名乗る資格などありませんね。ネットの書き込み程度の価値しかありません。

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産経新聞の1ビット脳加減がわかる、もう一つの記事を紹介します。広島の原爆を描いた『はだしのゲン』が、小学校の図書室で閲覧制限がかけられた、ということが話題になったころの記事です。

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産経新聞過去記事の魚拓

>>「はだしのゲン」は、原爆投下後の広島で生きる少年を描いた作品だが、
>>一部に旧日本兵が首を刀で切り落としたり、
>>女性を乱暴して殺したりする残酷な場面が出てくる。
>>米国の原爆投下は日本が戦争を起こしたことの報いだとする
>>「原爆容認論」が、子供たちの心にすり込まれる恐れもある。


断言しますが、この記事を書いた産経記者は、『はだしのゲン』を読んでいません。

旧日本兵が首で斬り落としたり、女性を乱暴して殺したりする場面というのは、全10巻のうち、第10巻に1ページあるだけです。それも天皇の戦争責任を問うシーンであって、その場面を読んで原爆容認論が心に刷り込まれるなんてことは絶対にありえないでしょう。

『はだしのゲン』を読んだことがある方ならお分かりになると思いますが、このマンガでは一貫して戦争と原爆を否定しています。日本が戦争したことを強烈に批判していますが、原爆がその報いだなどと読めるシーンは一切存在せず、それどころか、「原爆は日本の行為の報いだ」と言うアメリカ人に対し、主人公のゲンが怒りをあらわにするシーンがあります。『はだしのゲン』では、米国の原爆が日本の戦争行為の報いだというような原爆容認論を、一貫して徹底的に否定しているのです。

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(中沢啓治『はだしのゲン』7巻、汐文社、106-107頁)

また、ゲンは母親を原爆で無くし、その遺体を持ってマッカーサーに会いに行こうとするシーンもあります。

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(同246-248頁)

「おどれらアメリカは永久にこの罪は消えないぞ」

「アメリカが広島と長崎におとした原爆の罪の深さを言うたるんじゃ」

「アメリカが原爆で何十万人の人間を地獄のように苦しめて殺す権利がどこにあるんじゃ」

「お互いに悪かったんじゃ。なんで日本人だけが罰をうけんといけんのじゃ」

「勝った国のアメリカだって責任をもつのが当たり前じゃ」


これを読んで、「原爆容認論」が刷り込まれる子供が一人だっているでしょうか。

産経記者が『はだしのゲン』を読みもせずに、日本軍の残虐シーンの1ページだけを見て記事を書いたことは想像に難くありません。取材対象を読まずに勝手な思い込みで記事を書いているなら記者失格ですし、もし『はだしのゲン』を読んだ上で「『原爆容認論』が子供に刷り込まれる恐れがある」なんて思ったのだとしたら、そんな読解力がない記者は、やはり記者失格です。どっちにしろ、この記事を書いた人は記者を名乗る資格などかけらほどもないでしょう。産経新聞自体、新聞を名乗る資格があるとは思えません。

最初に紹介した記事で、産経新聞はこのような主張をしています。

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>>「敗戦」という国家存亡の危機から復興し、
>>国際社会で名誉ある地位を築くまでになった日本。

>>決断の時は迫りつつあります。
>>国会議員の与野党を問わず、戦後の真の歴史を知らずして、
>>その時を迎えるとしたら、
>>日本国民としてこれほど不幸なことはありません。

>>国会議員よ、歴史から目を背けてはならない。

私は産経新聞のこの部分の主張には完全に同意します。

敗戦という国家存亡の危機から復興し、国際社会で名誉ある地位を築くまでになった戦後日本の基礎となってきた日本国憲法を「恥ずかしい憲法」と呼ぶ安倍総理大臣。

日本の戦争を批判したら「原爆容認論」だなどと言いだす、批判対象を読みもせず理解力もないまま、戦争批判を「自虐史観」などと中傷する産経新聞。

歴史を知らずして、こんなデタラメがまかり通ったまま「その時」を迎えるとしたら、日本国民としてこれほど不幸なことはありません。

国会議員よ、歴史から目を背けてはならない。その通りです。戦争批判を原爆容認論と考えるような幼稚な発想や、「自虐史観」などという中傷をして、歴史から目を背けてはならないのです。

産経新聞は、歴史から目を背けるの脳の容量が1ビットしかないので仕方がないにしても、せめて取材対象から目を背けない程度の気概は持ったらどうでしょうか。それができないなら産経新聞に新聞を名乗る資格などありません。


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