ざっくり言うと
  • 「民主主義=多数決」「少数派は多数派に従え」と言う考え方は、民主主義でなく典型的ファシズムの考え方
  • 民主主義と独裁の違いは、選挙の有無ではなく、少数意見を尊重するかしないかである
  • 多数決を少数意見を抹殺(否定)する道具に使ったら、それは民主主義ではない
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公文書改竄などで「日本の民主主義の危機」と言われております(これこそまさに「国難」だなあ…)。


そもそも民主主義とは何か、ということを考えると、どうも、日本は民主主義というものの理解度が低いんじゃないかと思えてきます。というのも、このブログでも、「民主主義=多数決」と思っている人のコメントが頻繁に寄せられるからです。別に多数決を「悪」と言うつもりはありませんが、「民主主義=多数決」ではないということを毎回説明するのが大変なので、今回はそこを記事にしてみたいと思います。

「多数派=正しい」「少数派=否定」は民主主義ではない


まずは、漫画『HUNTERxHUNTER』(冨樫義博著、集英社刊)に、多数決について描かれているシーンがありますので、ご覧いただきましょう。

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(『HUTNERxHUNTER』3巻より)

>>多数決は非常に便利で効率的に思える
>>だがそれは危険で甘い罠!

>>決をとるという行為は
>>一見個人の意思を尊重しているように思える

>>しかし!!
>>実は少数派の意思を抹殺する制度に他ならない!!



ちゃんと認識していない人も多いかと思いますが、「多数決は少数派の意思を抹殺する制度である」ということは、少年向け漫画にも描かれているほど自明のことです。果たして少数派の意思を抹殺することは民主的なのか、という問いが生まれてきますね。


しかし、「民主主義=多数決」と思い込んでいる人のコメントを見ると、彼らは「多数派が正しい」と同時に「少数派の意思を抹殺のが民主主義」と思っているように思えます。例を出しましょう。

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>>選挙は多数決だ。そしてその多数は民意である。少数意見はどこまでいっても少数意見でしかない。少数意見が反映されたければ国民に訴えて多数派になるのが自然だろう。

>>たとえわずかな差でも、多数でなければ、民意とはいいづらい。少数派にいちいち構っていたら何もできないだろう。

こちらの記事のコメント欄より

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>>少数派が何いったって無駄。これが民主主義
>>国民を信じられないようなファシスト野郎が民主主義そっちのけで、
>>安倍政権に縦突いてるのは滑稽

こちらの記事コメントより

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>>デモは反民主主義的な行為、言論の暴力に過ぎません。
>>現政権が嫌なら選挙で、自らの意思を示せば良いだけです。
>>それが民主主義、多数派を優遇.優先する現代の社会システムでしょう。

こちらの記事参照

>>要するに徹底徹底徹底的に、
>>あなた達の意見は否定されてるのです。



「少数意見が反映されたければ多数派になれ」と言うのは、「多数派にならなければ意見は反映されない」という意味に他なりませんし、「少数派が何を言ったって無駄」とまで言う人もいますね。


さらには、民主主義を「多数派を優遇、優先するシステム」というとんでもない勘違いをしている人や、選挙で少数派になった側には「あなた側の意見は否定されている」と言ってしまう人までいます。「少数派になる=意見が否定される」らしいです。なんで選挙で少数になったってだけで、意見が否定されんといかんのだ…。


日本では国民の95%以上が同じ民族ですのでイメージしづらいかもしれませんが、外国をイメージしてもらえればすぐにわかります。少数民族と多数派の民族とが存在している国で、多数派の民族が少数派の民族を虐げているとしたら、それは果たして民主的でしょうか?


選挙が行われれば、多数派の民族が議会の多数を占めることができます。多数派を優遇し、少数派の意見が否定されるのが民主主義なら、多数派の民族は少数派の民族を無視していいことになります。果たしてそれが民主的でしょうか?


多民族国家でなくても、日本でも同様です。原発から出る放射性廃棄物の最終処分場はいまだに決まっていませんが、例えば青森県に作ろうという案に国民投票が行われたと考えてみましょう。青森県の県民全員が反対しようと、自分のところに最終処分場を作ってほしくない残り46都道府県の賛成によって最終処分場を青森に作ることになったら、果たしてそれは民主的な決定でしょうか? 「多数派=民主主義」なら、多数派が自分の嫌がることを少数派に押し付けても民主主義ということになりますが、それは民主主義なのでしょうか?


民主主義とは、少数派の意見も尊重して、初めて成り立ちます。「多数派=正しい」「少数=否定」では民主主義ではありません。そのような考え方は、少数民族を虐げる前近代的な野蛮な国家と変わらないものなのです。「民主主義=多数決」と思っている人の考え方は、近代民主主義国家の基本を根本から理解していないと言わざるを得ません。


(※こういうことを言うと、バカが必ず「『少数派=正しい』とでも思ってるのか」と、頭の悪さ丸出しのことを言ってくるのであらかじめ反論しておきますが、「少数派=正しい」なんて言ってませんからね。どっちかが正しくてどっちかが間違ってるではなく、少数派も含めた全員の意見を尊重するのが民主主義だと言っているんです)

「民主主義=多数決」なら国会はいらない


次に、そもそも国会とはなぜ存在するのかを考えてみましょう。


上で紹介した人たちが言うように、もしも「民主主義=多数決」であるならば、選挙が終わった時点で、もう国会など必要ないはずです。だってそうでしょう? 多数派が正しく、少数派に構わなくていいのならば、選挙で多数を占めた側が全部決めてしまえばいいということになります。


しかし、実際には国会というものが存在します。それはなぜかと言うと、少数意見をちゃんと反映させるためです。国会は与野党が集まって議論をする場所ですので、少数意見を反映させなくてよいのなら、そもそも国会自体が必要ないのです。


全員が意見を出して、できる限り全員が納得できる形を目指す。そのために国会はあるのです。事実、国会の法案の多くは全会一致になっています。例えば直近の4月13日の参議院本会議では、3つの法案の投票が行われましたが、そのうち2つが全会一致となっています。(「野党はなんでも反対ばかり」とか言ってるバカは、こういう事実を知らないだろ)

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(↑3法案中2つが全会一致で可決)

もちろん、毎回全会一致が得られるわけではないので、最終的に多数決で決めることを否定しませんが、「民主主義=多数決」という認識は、議会制民主主義国家においては、完全に間違っていると言わなければなりません。

「民主主義=多数決」という考えこそファシズムの根幹


「民主主義=多数決」と思ってる人は、選挙で多数を取った者を批判することを「ファシズム」扱いすることがあるようです。

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>>少数派が何いったって無駄。これが民主主義
>>国民を信じられないようなファシスト野郎民主主義そっちのけで、
>>安倍政権に縦突いてるのは滑稽

こちらの記事コメントより
しかし、この考え方は完全に間違いです。


なぜなら、ファシズムの代表例であるナチスは、圧倒的な支持を得て、選挙で多数派になることで、政権を獲得したからです。


政権獲得後、ヒトラーは「民意」を背景に全権委任法を作り、国の権力を掌握しました。独裁体制を確立した後も、ドイツ人はナチスを支持し続けました。ヒトラーの独裁は、「民意」に支えられた、「多数派」による独裁だったのです。


もしも「民主主義=多数決」ならば、ナチスは非常に民主的だったことになりますが、実際には最も民主主義から離れた政権とみなされています。しかし、ナチスドイツが、同じように「多数派」が政権を担う他の国と何が違ったかというと、「少数派」の意見を否定したことです。ユダヤ人や障碍者などのマイノリティーはもちろんの事、反ドイツ的な考え方の人間は処刑まで含んだ徹底的弾圧を受けました。


「民主主義=多数決」と思っている人は、うえで紹介したように、
 「少数派にいちいち構っていたら何もできない」
 「少数派が何いったって無駄」
 「(多数派を占めた)政権に縦突いてるのは滑稽」
 「多数派を優遇.優先する現代の社会システム」
 「徹底徹底徹底的に、あなた達(選挙の少数派)の意見は否定されてる」

などと言うわけですが、このような、「少数派は多数派に従え」と言う考え方こそ、ファシズム思想の根幹なのです。

民主主義とは、選挙で独裁者を選ぶシステムではない


もしも「民主主義=多数決」であり、選挙で多数派を占めたほうが「正しい」とされ、「少数派が何を言っても無駄」で「多数派が優遇、優先」され、選挙で勝利した「政権にたてつく」ことが許されず、少数派の意見が「徹底徹底徹底的に否定される」のであれば、それは選挙で独裁者を選んだだけ、ということになってしまいます。


独裁と民主主義の違いは、選挙があるかないかではなく、少数意見を尊重するかしないかです。普通選挙が行われ、圧倒的支持率を得たら民主主義なのであれば、ロシアのプーチン政権は、史上稀にみる民主的な政権ということになってしまいますね。


最終的な意思決定の道具として多数決を用いることは否定しません。他にありませんからね。しかし、多数決はあくまで道具です。道具は使い方次第で凶器になりえます。多数決を、少数派の意見を抹殺するための道具として使ったら、それは決して民主主義ではありません。

===追記===


こういうことを言うと、絶対にネトウヨさんが「少数派の負け惜しみザマァwww」と言ってくるのが目に見えているので、あらかじめ反論しておきますが、2017年の衆議院選挙において、自民党は小選挙区で47.8%、比例代表では33.3%の得票率ですからね。得票率でいえば、与党と野党では、野党支持者のほうが「多数派」ですからね。

現在自民党が圧倒的な議席数を持っているのは、48%の得票率で75%の議席を獲得できる、小選挙区という歪な制度によるものですから、そこをお忘れないように。

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