<ざっくり言うと>
  • 審議拒否自体は野党戦術として当然ありうるもので、自民党は野党時代に85回も審議拒否している。審議拒否は「サボり」ではない。
  • 問題は、何を求めて審議拒否をしているか、与党がどう対応したかである。
  • 野党の求めていたものは、当然のものにすぎない。
  • 自民党は震災時に復興担当大臣としての入閣さえ拒否している。
  • 「自民党のほうが野党よりもマシ」というのは、道理に合わない批判により人工的に作られた神話に過ぎない。


(スポンサードリンク)

「野党がダメダメだから、仕方がなく自民党を支持しているんだ」という発言はよく聞かれます。


しかし、果たしてそうでしょうか。


「野党がダメダメだ」という根拠としてよく挙げられるのが、「野党は反対ばかり」「野党は政策議論をしていない」「野党はモリカケばかり」などです。


しかし、実態を見れば、それがどれも間違いであることがわかります。


前々回は「『野党は反対ばかり』『野党は政策議論をしていない』はデマである」というのをやりました。


前回は、「『野党はモリカケばかり』はデマである」というのをやりました。


今回は、野党の「審議拒否」についてみてみましょう。ということを見ていきたいと思います。

・野党の要求は当然のものばかりだった


自民党支持の人が言う野党批判に、野党の審議拒否があります。4月下旬から5月上旬にかけての審議拒否で、野党はGWも含めて「18連休」などと揶揄されました。「野党の審議拒否は、レギュラーになれない野球部員がストライキするようなもの」などという批判も目立ちました。


しかし、そもそもどうして野党は審議拒否をしたのでしょうか。そこを忘れては話になりません。


例えば、レギュラーになれない野球部員がストライキをするにしても、単純に実力が足りないのにストライキをしたら、それはカッコ悪いだけです。


しかし、レギュラー選手ばかりが優遇され、他の選手は球拾いやグラウンド整備ばかりやらされる。レギュラーはグラウンド整備に参加もしない。監督はレギュラー選手の練習だけを見て、他の選手には実力を見せるチャンスさえ与えられない。こんな状況だったら、改善を求めてストライキをするのも当然でしょう。


問題は、なにを求めてストライキ(審議拒否)をしたか、その理由と、監督なり与党なりがその求めに応じどう対応したか、という点です。


当時、野党が与党に求めたものは以下のようなものです。
(1)麻生太郎財務相の辞任
(2)森友・加計問題の全容解明のため、柳瀬唯夫経済産業審議官らの証人喚問
(3)財務省による文書改ざんの調査結果を月内に公表
(4)自衛隊の日報問題や自衛官の暴言問題の事実確認
これらの要求について、少し見てみましょう。

そもそも麻生太郎が辞任していない方がおかしい


まず、麻生太郎の辞任ですが、野党に言われるまでもなく辞任していないとおかしい。大規模な公文書改竄という、日本の憲政史上他に類を見ないを引き起こした省のトップであるのですから、責任を取るのは当然だと言えます。しかも、その公文書改竄をやらかし、国会で数々の虚偽答弁を繰り返し、国民を1年以上にわたって騙し続けた佐川理財局長(当時)を「適材適所」と言って、国税局長官にまで出世させたのですから、任命責任を問われるのは当然でしょう。

3295ebee
公文書改竄発覚後も、麻生太郎は佐川宣寿を「有能」「きちんと仕事をしてきた」「適材適所」と言い続けた

「麻生は知らなかった」などと言って擁護する人もいますが、経済同友会のトップが「民間企業なら普通は辞める」と言っているように、これほどの問題を起こしたのに辞めないほうが異常なのです。


事実、民間企業は、改竄や捏造などが行われた場合、それをやらかしたのが末端の人間であっても、社長まで引責辞任ということ普通に行われています。例えば、安倍晋三は、朝日新聞を国会の場で批判し、その際に「サンゴ記事捏造事件」に触れて、「朝日新聞は誤報をしても謝らない」などと非難しました。


しかし、サンゴ記事捏造事件を行ったのは、完全に末端のカメラマンだったにもかかわらず、社長が引責辞任しています。ちなみに、朝日新聞に限らず民間企業では、捏造や改竄では、直接的に知っていたはずのなくても社長の引責辞任は当然です。


神戸製鉄データ改竄事件→社長引責辞任
東芝不正会計→社長引責辞任
シチズン子会社データ改竄→社長引責辞任
東レ子会社データ改竄→社長引責辞任
『発掘!あるある大事典2』捏造事件→テレビ局社長引責辞任



高校バスケットの試合で生徒が審判を殴った事件がありましたが、その事件は、監督が殴ることを指示したわけでもなんでもない、突発的な事件だったにも拘わらず、監督は解任され教員としも無期限停職。さらに、関係あるわけない理事長、校長、教頭まで、3ヶ月の減給処分となりました。(参照


このように、捏造や改竄のような大きな事件や、組織運営の根幹にかかわるような事件(部活における暴力事件など)を引き起こした場合、何も関わってなくても、トップが何らかの責任を取るのは当然のことです。野党が求めた麻生太郎の辞任は、至極当然の要求だと言えます。本来、野党に要求されるまでもなく、麻生太郎は自ら辞めていないとおかしいですね。

・ほかの要求も当然のものばかり


野党が求めた他の要求も、どれも当然のものばかりです。


(2)森友・加計問題の全容解明のため、柳瀬唯夫経済産業審議官らの証人喚問

→偽証罪が適応される証人喚問を求めるのは当然で、それを偽証罪が適応されない参考人招致で済ませようとした自民党がおかしいですね。柳瀬唯夫の証人喚問にさえ応じていれば、野党は審議拒否をすることはなかったのですから、野党の審議拒否は、自民党の頑強な隠蔽体質の結果にすぎません。


(3)財務省による文書改ざんの調査結果を月内に公表

→当たり前すぎますね。


(4)自衛隊の日報問題や自衛官の暴言問題の事実確認

→当たり前すぎますね。

このように、野党が求めた要求は、どれも当たり前のものです。これを拒否して強引な国会運営をしたのですから、野党が審議拒否という行為に出るのは当然です。


当たり前のことを与党に求めている野党。


野党の求めは拒否するのに、自分たちの法案審議には参加しろと言う与党。


審議拒否を、「野党がわがままを言っている」と勘違いしている人が多いですが、実際にわがままを言っているのは完全に与党の方です。

・野党時代の自民党の審議拒否の多さ


「審議拒否するような野党は支持できない」という人もいますが、これもおかしな話です。なぜなら、自民党は野党時代に審議拒否をしまくっていたからです。

2018y07m29d_090405413
2010年10月

この時、自民党は「証人喚問や参考人招致、石川議員の辞職勧告の本会議上程、ひとつでもやってくれたら、いつでも審議に応ずる」と言っていますから、今回の野党の審議拒否とよく似ていますね。

2018y07m29d_090720840
2011年6月

こちらは「首相が退陣するまで審議拒否する」と言ってますから、もっとすごいですね。

2018y07m29d_090910708
2012年4月

この時は、「前田武志国交相と田中直紀防衛相を更迭しない限り全面的な審議拒否」ですので、麻生太郎の処遇を審議拒否の理由に入れた野党を批判できませんね。


そして、自民党の野党時代の審議拒否は85回に及ぶそうです。
s_ice_screenshot_20180430-200514

なお、勘違いしてほしくありませんが、私はカンニングした生徒が「〇〇ちゃんもカンニングしてた」みたいなことを言いたいのではありません。


むしろ真逆で、審議拒否自体は、野党の国会対応として当然にありうることなのです。問題は、その時与党がどういう対応をしていたかです。今回のように、公文書改竄を引き起こし、証人喚問を拒否し、改竄や隠蔽の事実確認さえやる気がないくせに、自分たちの法案審議は進めるとなれば、審議拒否という対抗策は、野党として当然取りうる口頭です。

・東日本大震災での入閣を拒否した自民党


また、自民党は都合よく「国難」という言葉を使いますが、東日本大震災という本当の国難の時、民主党政権は震災対応で挙国一致体制を築くため、当時の自民党総裁である谷垣氏に復興担当大臣として入閣することを申し入れています


しかし、自民党はそれを拒否。民主党の震災対応を非難するならば、自ら復興担当大臣になってあるべき震災対応を見せるべきでしょうが、実際に担当大臣になってヘマやって叩かれるより、与党を叩く立場のほうが党として都合がいいと判断したんでしょうね。民主党政権の震災対応を非難されてる皆さん、自民党の復興担当大臣入閣拒否の件、お忘れじゃないですか?


このように自民党は、挙国一致で震災対応に当たるための入閣さえ拒否しているのです。それで、おかしなことをおかしいと言っている今の野党に、「足を引っ張っている」なんてよくもまあ言えたものです。

・野党提出法案の審議を拒否しまくる自民党


与党の国会運営が強引な時に行う野党の審議拒否は見た目にはっきりわかるためクローズアップされやすいですが、現自民党政権は、見えないところで審議拒否を繰り返しています。


野党は今国会では29の法案を提出しましたが、審議入りには与党の合意が必要であるため、そのほとんどが審議入りさえされずにお蔵入りにされました(参照)。「児童相談所緊急強化法案」なんかも、審議拒否されてますね。「航空保安法案」も、民法改正案も、原発ゼロ基本法案も、審議されずに潰されましたね。(参照参照


野党提出の法案は審議さえせずに拒否し、自分たち提出の法案の審議は拒否するなとは、ずいぶんと勝手な話じゃないですか。

・「自民のほうが野党よりマシ」は作られた神話である


まず、審議拒否自体は、野党対応として当然ありうる選択肢です。問題は、野党が何を求めて審議拒否をしているのか、与党がどう対応したかです。


今回、野党が与党に求めたいたことは、どれも当たり前のものばかりであり、与党が一切応じなかったのですから、審議拒否は当然の流れです。柳瀬唯夫の証人喚問など、断る理由が全くありません。それを参考人招致にとどめるというのは全く理がなく、自民党の隠蔽体質の表れと言わざるを得ません。


そして、野党時代の自民党の審議拒否は85回に及び、東日本大震災時にも挙国一致体制を築くことを拒否しました。野党時代の自民党の対応を見れば、「自民党のほうが野党よりもマシ」なんてことはとても言えません。


「自民党のほうが野党よりもマシ」というのは、自民党の震災時の入閣拒否や、審議拒否などを無視し、野党の審議拒否理由や、与党対応を無視し、「審議を拒否した」=「仕事をサボった」などという、道理に合わない批判によって築き上げられた、人工的な神話にすぎません。


次回、「国民合意をとるという国会議員の責任をサボっている自民党」に続きます。

にほんブログ村 政治ブログへ 
にほんブログ村 政治 ブログランキング
(スポンサードリンク)