<ざっくり言うと>
  • アイヌ語は日本語の方言ではない。
  • アイヌ語と日本語には、語彙、文法、音韻、あらゆる点で共通性がない。
  • アイヌ語と日本語が同一祖語を持つなどと主張している言語学者は皆無。
  • アイヌ語が日本語の一方言だなどというでたらめな主張は、「アイヌを先住民として特別視する必要はない」「『アイヌ民族』などというものは存在しない」という主張につなげるためのものと思われるが、どんな主張をするにせよ、こんな言語学の常識を完全に無視した妄想を根拠にしてはいけない。


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はっきり言って、こんなことを記事にするまでもないと思うのですが、世の中には非常に変なことを言う人がいるので、騙される人がこれ以上増えることを少しでも防止するために、記事にしておこうと思います。


「アイヌ語は日本語の方言である」と言う人が世の中にはいるようです。最初その主張を聞いた時には耳を疑い、冗談か何かかと思ったのですが、どうやら本気でそう言っている人がいるようなのです。

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(参照)


こんなでたらめなことを主張しながら、「知ったかぶるの止めてください」と言ってる@kulukulmawaru12とか、鏡を見ろよと言いたくなりますね。


彼らの主張を見ていくと、おそらくはアイヌの先住民族性を否定する目的でこんな変なことを言っているのだと思われます。

↓日本のアイヌ支配を正当化し、アイヌの民族性を否定する一環として、「アイヌ語は日本語の方言」と言う人。他のツイートを見てみると、坂東忠信や山田宏や根戸ウヨ子、遠子先輩、高須克弥などをRTする、‏典型的愛国カルトだとわかる。
もちろん、アイヌ語が日本語の方言だなんてのは、言うまでもなく大嘘ですので、こんなことを信じないようにしてください。


結論から言います。アイヌ語と日本語は全く関係ない別言語で、現在の言語学では、アイヌ語は他に同じ語族に属する言語を持たない「孤立した言語」とされています。


おそらくこの手の人は「比較言語学」という言葉も知らないのだと思いますが、2つの言語が同一の祖先をもつということを証明するための最も基本的な作業が、基礎語彙の類似です。例えば、ドイツ語と英語であれば、water→Wasser(水)、father→Vater(父)、mother→Mutter(母)、son→Sohn(息子)、daughter→Tochter(娘)のように、基礎語彙の多くが非常に似通っていることがわかります。これが言語が同一の語族に属することを示す手がかりの一つです。


ところが、日本語とアイヌ語の基礎語彙には、類似性は全く認められません。「水」は「ワッカ」、「父」は「イヤポ」、「母」は「ハポ」、「息子」は「ポ」、「娘」は「マッネポ」であるように、英独間に認められるような単語の類似は日本語とアイヌ語の間には全く存在しません。(「『母』と『ハポ』は似てるじゃないか」という人がいるかもしれませんが、それは日本語の「名前」と英語の「name」が似ているのと同じで偶然にすぎません)


また、上で紹介したツイートで「アイヌ琉球語どちらも、音韻と文法体系が一致しているので日本語に系統する方言」だとか「語順が一致しているからアイヌ語は日本語の方言」などと言っている人がいますが、言うまでもなく大嘘です。音韻と文法体系は、言語の親縁性とあまり関係ありませんし、第一、日本語とアイヌ語は音韻も文法も全く異なりなります。(逆に、日本語と韓国語は文法的に非常に近いが、基礎語彙がまったく一致しないため、同一系統とは考えられていない)


文法に関しては、SOV語順という程度の共通性はありますが、世界の言語の過半数はSOVなので、何の因果関係の証明にもなりません。アイヌ語には助詞もありませんし、言語の分類として日本語が「膠着語」であるのに対し、アイヌ語は「抱合語」に分類されます。説明が面倒なので省きますが、日本語とアイヌ語の文法は語順以外ほとんど共通性がありません。


音韻ももちろん全く異なります。日本語の音節がほとんど母音で終わる「開音節」であるのに対し、アイヌ語は子音で終わる「閉音節」があり、小さい「」「」「」など日本語にも英語にもない音があります。


以上のように、語彙でも、文法でも、音韻でも、アイヌ語と日本語には類似性がほとんど存在しません。言語学者で、アイヌ語と日本語が同一祖語を持つとか、アイヌ語が日本語の方言だとか言っている人は皆無だと言って構いません。「アイヌ語は日本語の方言だ」などと言うのは、「マオリ語は英語の方言だ」と同じレベルの愚かな発言です。


「アイヌ語は日本語の方言」だなんて、かなり信じがたいことを言う人がいるのは、どうやら「アイヌを先住民族として特別視する必要などない!」、さらには「『アイヌ民族』などと言うものは存在しない!」という主張につなげたいからだと思われますが、どういう主張をするにせよ、「アイヌ語は日本語の方言」などというあまりにも言語学の常識を無視した妄想を根拠にするのはやめていただきたいものです。


余談ですが、ニュージーランドでは先住民族の言語であるマオリ語が公用語に指定されており、小学校の必修言語です。一方、一つの言語を死に追いやっておきながら、「もうアイヌ民族など存在しない」と平然と言ってのける連中の存在は、先進国・民主主義国として、恥ずべきものだと言わざるを得ません。

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