<ざっくり言うと>
  • 肘を曲げて手を下腹部あたりで交差させてのお辞儀を、「朝鮮式お辞儀(コンス)」として文句をつけている人がネット上に多数見受けられる。
  • 実際には黒澤映画にもその動作があるように、特殊なポーズではなく昔からあった。
  • ネット上のこの手の「朝鮮だ」「在日だ」という話はほとんどがデマだと考えたほうがいい。
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ご存知の人も多いでしょうが、ネット上で「『朝鮮式お辞儀』(『コンス』というらしい)をやめよう!」という運動をしている人たちがいます。なんでも下の写真のようなポーズが「コンス」だそうです。

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そして、これに似たお辞儀を見ると、「在日だ!」「反日だ!」「文化侵略だ!」と言い、「このような見苦しいポーズを撲滅しよう!」と活動しているようです。
「コンス」とか「朝鮮式お辞儀」だとかで検索すると、山ほどサイトがヒットします(これとかこれとかこれとか)。そもそも「朝鮮式」=「反日」「在日」という発想自体、「キムチを食べたら反日」と言い出しそうでバカらしいものですが、この動作が「朝鮮式お辞儀」だという噂がネットで拡散されたため、これに似たポーズをしただけで在日認定されたり反日認定されたり嫌がらせをされたりしかねません。 ↑朝鮮式お辞儀「コンス」を見たら「お客様の声」に記入し、従業員に「朝鮮の方ですか?」と聞くんだそうです。朝鮮の人だったら何だっていうんでしょう?
「朝鮮の方ですか?」
「はいそうです」
「……」
何がしたいねん? 江口寿史のイラストに文句をつけて、これを理由にカード解約って…。こんなことやってたら、「江口寿史は朝鮮人だ!」→「江口寿史が連載していた『少年ジャンプ』は朝鮮雑誌だ!」→「『ドラゴンボール』も『ワンピース』も『スラムダンク』も朝鮮漫画だ!」とかなっちゃうんじゃないですか?


こんな風に在日認定、反日認定、嫌がらせ行為をする人が現実にいるみたいなので、少々調べてみました。


「コンス」「朝鮮式お辞儀」の撲滅キャンペーンをやっているサイトでは、よく下の図が引用されているようです。それによると、「お腹や股間で手を重ねる」のは「妙なポーズ」で、日本の礼儀作法にはないものらしいです。へ~。(この「小笠原流」ってのが日本の「正しい」お辞儀だって誰が決めたんでしょう?)

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仮にお腹や股間の前で手を重ねるのが朝鮮式だとしたら、それが日本に広まったのは、韓国文化が日本に紹介されるようになったかなり最近の事かと思われます。このイラストによると、日本の「正しい」お辞儀の仕方とやらは昭和の時代までは誰でも自然に身についていた」らしいので、朝鮮式お辞儀が広まったのは平成になってからのことなのでしょう。なので、昭和にこのポーズがあるかどうか、調べてみました。


というわけで、昭和の映画と漫画をちょっと見てみました。肘を曲げ、お腹や股間の前で手を重ねる「妙なポーズ」はあるでしょうか?


やはり日本映画の巨匠と言えば黒澤明、というわけで、『天国と地獄』(1963年(昭和38年))を見てみました。

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主人公の奥さん、だいたいいつもこの肘を張って手を交差させたポーズです。このままお辞儀をするシーンもありますし、男が手を股間あたりで交差させたままお辞儀をするシーンもありました。これも先ほどのイラストのチラシを作った人に言わせれば、「妙なポーズ」「変なお辞儀」なんですかね?

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まさか1963年の黒澤映画が、朝鮮式を採用している、なんてことはありませんよね? 黒澤映画に対して「朝鮮式だ!」とか「おしっこ我慢ポーズだ!」とか言うんですかね?


さらに古い、黒澤明の初期の作品、『酔いどれ天使』(1948年(昭和23年))でも、肘を曲げ、手を体の前で組んでするお辞儀が登場しています。

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指の組み方が「コンス」とは違っていますが、男女とも肘を曲げ、手を体の前で組んでお辞儀をしています。まさか終戦直後、昭和23年の黒澤映画に「朝鮮がー」「コンスがー」「反日がー」とか言いませんよね?


次に、日本人の映画と言えば山田洋次監督の『男はつらいよ』です。1969年(昭和44年)の第1作を見てみました。

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肘を曲げ、手を下腹部の前あたりで交差させたままお辞儀をしていますね。まさか『男はつらいよ』が朝鮮式のお辞儀を採用している、なんてことはありませんよね?


もう一つ、日本の漫画と言えば手塚治虫です。『ブラック・ジャック』を調べてみました。

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↑秋田書店『週刊少年チャンピオン』1975年(昭和50年)12月1日号「古和医院」

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↑同1976年(昭和51年)12月13日号「ホスピタル」


おやおや、昭和20年代、30年代、40年代、50年代のどの作品でも「お腹や股間で手を重ねる妙なポーズ」が登場していますね。すぐに「朝鮮がー!」と言って怒ってる人たちって、黒澤明や山田洋次や手塚治虫にも「朝鮮式だ!」「コンスだ!」「反日だ!」って怒るんでしょうか。


これらから考えると、「もともとも韓国に関係なく日本でも行っていた仕草が、インターネットで朝鮮認定された」というだけのことの可能性が高そうですね。


第一、仮に朝鮮式だったら何だって言うんですかね? 「野球は敵国のスポーツだ」なんて言ってたのと変わらないですね。ネットではキムチ鍋が好きというだけで在日認定されたりしますので、こじつけられれば何でもいいんでしょうね。


実は2019年1月21日現在、「お辞儀」でGoogle検索すると、最上位に来るのはWikipediaですが、上位2番目に表示されるサイト上位3番目のサイトのサイトでも以下のような写真が使われております。Google画像検索でも、現在トップに来る写真は、彼らの言うところの「朝鮮式お辞儀」です。
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「お辞儀」での検索上位2位のサイトで使われていた写真

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「お辞儀」での検索上位3位のサイトで使われていたイラスト

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「お辞儀」での画像検索上位1位のサイトで使われていた写真


イラスト素材販売サイトでも、この形のお辞儀のイラストが多数見受けられます。NPO法人日本サービスマナー協会とやらの動画でも、肘を曲げて手を前で組んだお辞儀が、綺麗なお辞儀として紹介されています。このサービスマナー協会というのも朝鮮に支配されているのでしょうか? そもそも、ネトウヨさんたちの頭の中では、どうして朝鮮人はそんなにも頑張って朝鮮式お辞儀を日本に浸透させようとしていることになっているのでしょう? 



上で紹介したイラストによると、このお辞儀は「テレビの女子アナ、ドラマの俳優、CM、スーパーレジ、あらゆるところで遭遇する」となっているんですが、仮にこれらが本当に朝鮮式なら「韓国の文化浸透力すげえ!」ってな話になっちゃうと思うんですけど、ネトウヨさん的にはそれでいいんでしょうか? 日本中のあらゆるところで日本のお辞儀文化が韓国文化に負けてしまったってことになっちゃうと思うんですが、ネトウヨさん的にはそれでいいんでしょうか?


韓国人が「日本人がオレらの真似してるぞww」って言うのなら心理的にわかるんですが、日本人が「三菱もauもセゾンも女子アナも俳優もCMもレジのバイトもサービスマナー協会も、日本のあらゆるところで韓国文化が浸透しているぞ!」と主張するのは変じゃないですかね? むしろ「このお辞儀に朝鮮は関係ない! 日本独自のものだ!」と主張するほうが、発想としてはずっとわかりやすいのですが。韓国人に「この日本文化は韓国起源だ」と言われると怒るのに、このお辞儀については逆に「韓国起源だ!」と強く主張するのはどうしてなのか、私にはなかなかその心理はわかりかねます。


ネトウヨさんは、マスコミやら広告会社やら通信会社やらをなぜかやたらと敵視して、「在日だ! 朝鮮企業だ!」と呼びたがりますので、多分、何か敵にしたいターゲットがいて、そこが行っていたお辞儀の仕方を朝鮮と結び付けて在日企業認定したってことなんでしょうね。そうしたら、もともと韓国朝鮮と関係なく広く行われていた動作なので、日本中のあらゆるところに韓国文化が浸透しているという変なことになってしまったと。


この人たち、そんなに韓国が強大な影響力を持っていることにしたいんですかね? 韓国に日本のお辞儀の仕草まで変えてしまうような文化影響力があるとは私には思えないんですが。


なんかネトウヨさん達って、実は「韓国すげえ! 日本弱え!」って言わんとしているんじゃないかと思えますね。彼らの脳内では、政治もマスコミも芸能界も在日韓国人が仕切っているらしいですからね。わずか50万人で1億人の日本人を支配する在日韓国人…。どれだけ優秀ってことにしたいねん(笑)。


ま、このように、ネット上で「朝鮮式だ」だの「在日だ」だの言ってる情報のほとんどは間違いだと思ったほうがいいです。そんなのにのせられてデマを拡散したり企業や個人に嫌がらせすると、弁護士懲戒請求の時みたいにえらいしっぺ返しを食らうかもしれませんので、基本的にネットのこの手の情報は信じないようにしましょう。

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