<ざっくり言うと>
  • 「英国から勲章をもらったから偉い」「オバマがお辞儀したから偉い」「カナダ政府が日本の天皇を格付け最上位とした」など、ネット上に流布している「日本の皇室は世界で一番格が高い」という主張は、どれも根拠のないこじつけにすぎない。
  • 現代の世界において、一方の王室が他方の王室よりも地位が高い、なんてことはない。
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日本の愛国カルト界隈では、「日本の天皇陛下は世界で一番格が高い。世界一の権威」なんて話が横行しているようです。


歴史的には、上下関係があった王室も珍しい話じゃありませんが、現代において、日本の天皇と英国の女王とスウェーデンの王とタイの王とで、どっちの方が格が高いとか権威があるとか順列があるとは、にわかには信じがたい話です。


そもそも、「格が高い」「権威がある」って、一体何を指して言っているんでしょうね…。別に政治的権力があるわけでもないし、一方の王室が他方の王室に命令できるわけでもないのに、どうやってどっちの方が格が高いとか権威があるとか測るんでしょうか…。実に謎です。


さて、「日本の皇室は世界一ィイイイ!!」と言っているサイトはいくつかあったのですが、まとめてるところがあったので、そこに書かれている根拠を見ていきたいと思います。

・「ガーター勲章を受けているから偉い」説


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ガーター勲章というのは、英国の最高の勲章らしいです。「日本の場合は明治から今上天皇まで受勲している」「有色人種でガーター勲章を受勲した人間は、日本の天皇以外にいない」と説明されていますが、今上天皇以外にもルクセンブルクのジャン前大公、デンマークのマルグレーテ2世女王、スウェーデンのカール16世グスタフ国王、スペインのフアン・カルロス1世前国王、オランダのベアトリクス前女王、ノルウェーのハーラル5世国王、スペインのフェリペ6世も受勲しているので、「天皇家が世界一」という理由にはなりそうにありません。それに、明治天皇がガーター勲章を受章したのは1906年。日英同盟→日露戦争勝利の経緯によるものだったようです。別に皇室の権威とか、そんな話じゃなさそうです。


さらに言うと、これを受勲していることが世界一格が高いことの証明なら、これを与えている英国の方がさらに偉い気がしますが…。とりあえず、これはこじつけだと言っていいでしょう。

・「集合写真で最前列に座っているから偉い」説


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これはエリザベス女王の即位60年を祝う午餐会の写真らしいです。これで天皇陛下が最前列に座っているから偉い、と言いたいらしいのですが…

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最前列と言っても端っこですね。この順番がどうやって決まったのかわかりませんが、これも天皇家が世界一の権威だということの証明には全くなりそうにありません。むしろ、「これだけの王室の人たちを呼び寄せたエリザベス女王すげえ」ってなっちゃいそうです。

・「ダイアナ妃が敬意を表したから偉い」説

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この動作は「カーテシー」と呼ばれるヨーロッパの伝統的なお辞儀で、別に特別なもんじゃありません。ダイアナさん、他の場所でもしてます。なので、これも「天皇の権威は世界一」ということの証明には全くなりません。

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↑スペインのソフィア王妃にカーテシーを行うダイアナ妃

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↑スペインのファン・カルロス国王にカーテシーをするダイアナ妃

・「オバマ大統領がお辞儀をしたから偉い」説


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オバマ大統領が深々とお辞儀をしているから偉い説はかなり広く流布しているみたいですが、これも嘘です。なぜなら、サウジ国王や中国の主席にもお辞儀をしているからです。

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(↑サウジ国王にお辞儀するオバマ

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↑胡錦涛にお辞儀するオバマ

もしかしたら、「日本では挨拶でお辞儀をします」と聞いていてお辞儀をしたってことなのかもしれませんね。


また、米国ではオバマの天皇陛下への深々としたお辞儀は非難を受けたらしいです。もしも本当に日本の皇室の権威が世界的なものであるのなら、大統領が日本の天皇にお辞儀したからといって、非難は起きないでしょう。

「カナダ政府がつけた序列で天皇が一番偉いとなっている」説

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なんでも、カナダ政府が外交上の社交序列とやらを発表したというのです。政府がそんなものを発表するなんて、にわかには信じがたい話ですね。でも、信じちゃってる人も多いようで、『特亜論破.com』という愛国デマサイトでも、これを引用して「世界一の権威」なんて言っています。

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英連邦であるカナダが、日本の皇室を英国王室より尊重するなんて、少々信じがたい話です。元のサイトを探しましたが、現在、オリジナルのサイトは消えてしまっています。しかし、運よくアーカイブを見つけることができました。このページです。

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たしかに、Emperor, King, Queen の順で並んでいます。先ほどのサイトの説明だと「上に行くほど序列が高い」と書いてありましたが、本当にそうなのでしょうか?


結論から言うと、当たり前ですがデマです。


これはカナダの文化遺産省というところの記事なんですが、タイトルが Styles of Address になっていますね。address は「住所」の意味以外に、「呼称」という意味があります。つまり、これは格のランキングなんかじゃなく、どうやって呼ぶかという呼称の説明に過ぎないのです。内容も、挨拶の時に何と言って呼びかけるか、なんてことが書いてあります。


もしも格付けだったら、King のところには世界各国の王が並んでいるはずですが、スペイン国王しか書いてありません。ただ単に例として挙げられているだけでしょう。


で、なんで Emperor が一番上に来ているかというと、おそらくこれは単にアルファベット順です。


Emperor → King → Queen で、アルファベット順に並んでいるだけでしょう。


王子、王女についてもアルファベット順になっています。


Royal Highness → Serine Highness


そして、大統領、首相と続きますが、同様にアルファベット順になっています。


A President of a Republic → The President of the United States → A Prime Minister


格付けだとすると、他の共和国の大統領はアメリカ大統領よりも上ということになってしまいますし、別にそんなことはないでしょうから、やはりこの並びを格付け順と解釈するのは間違いでしょう。ホームページのどこにも、これが「外交上の社交序列」だなんて書いてありません。


なんのことはない、これは外交上の社交序列でも、王室の格付けでもなんでもなく、ただ単に各国の国家主席等をどう呼ぶかという呼称を、アルファベット順に説明しているだけに過ぎなかったわけです。


一体どうして日本の愛国カルトさんたちの間では、「外交上の社交序列」なんてことになってしまったんでしょうね? どこにもそんな文言書いてないのに。

「EmperorはKingよりも偉い」説


確かに東アジアにおいては中国の皇帝は朝鮮やベトナムなどの王を従える立場であり、間違いなく皇帝は王よりも圧倒的に高い地位に存在していました。欧州においても、Emperor は一般的に King よりも権威ある称号とされてきました。


しかし、それは一つの秩序の中にあるから権威の格付けが発生するわけです。もしも Emperor の権威がその秩序の外にまで通じるのであれば、イギリスの King が、Emperor が統治するムガル帝国や清国を侵略なんかしなかったでしょうし、エチオピアは長いこと皇帝がいましたが、エチオピア皇帝のほうが英国など他国の王より権威があるなんてこともなかったでしょう。


「天皇」という称号は日本独自のものであり、それが Emperor と訳されたからと言って、他国の King よりも偉いと認められたというわけではないのです。

結論:「日本の皇室が世界で一番格が高い」はデマ


というわけで、「日本の皇室が世界で一番格が高い」という主張のもととなっていることは、どれも根拠が全くない話ばかりです。まあ、もともと検証するまでもなくデマに決まっているんですが。


第一、愛国カルトさんたちの言う「権威がある」「格が高い」「地位が高い」って、具体的に何を指しているんでしょうね。別に日本の皇室が他国の王室に命令できるわけでも何でもないのに…。


皇室を敬うなら普通に敬ってればいいわけで、何も「他国よりも偉いんだぞ」なんて威張らなくていいはずなんですが、どうして愛国カルトさんたちは、こうも「日本のほうが偉い」と言いたがるのか…。


皇室の方々も、多分こんなデマで称えられてもうれしくないと思いますので、「他国と比べて偉い」なんて変な敬い方はやめましょう。日本人にとっては皇室が、英国人にとっては英国王室が、タイ人にとってはタイ王室が、それぞれ権威があるに決まっており、国際的にはどっちの格が上、なんてことはありません。

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