<ざっくり言うと>
  • 「朝鮮戦争は、李承晩が九州侵攻を企てて南部に兵力を集中した隙を北朝鮮につかれて始まった」というのはデマ
  • 李承晩が九州領有・侵攻をしようしていたということを示す根拠がない。
  • 第一、九州に攻め込もうものならアメリカと戦争することになり、荒唐無稽すぎる。
  • 韓国があっという間に北朝鮮に侵攻されたのは、単純に兵力の圧倒的な差によるもの。北朝鮮はソ連の支援を受け、200台以上の戦車で韓国に侵攻したが、対する韓国軍は戦車の一つさえ持っていなかった。
  • この主張をしている人は「左翼により隠蔽されているから多くの日本人はこの事実を知らない」と主張するが、多くの日本人が知らないのはそんな事実がないからにすぎない。
  • 日・米・韓・北朝鮮・ソ連を巻き込むような壮大な歴史隠蔽できるような強大な「左翼」などどこにも存在しない。
  • その「隠蔽された歴史」を、ネットの人たちはどうやって知ったのか。
  • 「『隠蔽された歴史』を私は知った!」なんて言う人は信じない方がいい。


 

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前回の記事に、こんなコメントがありました。

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>>このテの荒唐無稽な逸話の一つに、
>>「朝鮮戦争は韓国が対馬侵攻のため、
>>南部に兵力を集めたのがキッカケとなって始まった」
>>というのがありますが、
>>これもデマなのでしょうか。


私は今までこんなことを言っている人がいるとは知りませんでしたし、想像もしていませんでした。


本当にこんなこと言ってる人がいるのかと驚いて検索したら、いるんですね…。本当に驚愕です。(「李承晩 九州侵攻 朝鮮戦争」などで検索してみてください)


いくつか見つけたネット記事のうち、まずはこちらのブログを紹介しましょう。

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(↑参照記事

大雑把に言うと、

「国際法上、まったく根拠のない未勝手な『李承晩ライン』を引き、まず竹島を実行支配した。」

「最初の李承晩ラインは九州も含んでいた」

「九州侵略を企んだ李承晩が軍隊を南進させ、38度線の警備が手薄になったことろを北朝鮮に攻撃された」


というものです。


荒唐無稽にもほどがある…。


まず、李承晩ラインが引かれたのは1952年です。竹島占拠も1952年。朝鮮戦争勃発は1950年です。なので、時系列的に間違っています


つぎに、そのブログで「本当の李承晩ライン」として紹介されている、九州まで韓国領としている地図ですが、当のブログにも、「本物かどうかわからない」「ソースは未確定」と書かれています。常識的に考えて、デマでしかないでしょう。


第一、日本には米軍がいるのに、どうやって九州に侵攻するんでしょう? 韓国は米軍と戦争するつもりだったとでもいうのでしょうか? あまりにも荒唐無稽極まりない話です。


こちらのブログでは、こんな説明がなされています。

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>>1949年1月7日、李承晩大統領は「対馬領有」を宣言し、李承晩ラインを宣言した。


「本当は李承晩ラインは1952年じゃなくて1949年1月7日に引かれたんだ」ということにして、時系列の矛盾を解消にきていますが、もちろん情報ソースは全くの不明です。


第一、宣言したのなら、周りの国や人も知らないと意味がありません。1949年1月7日に 対馬領有を「宣言」し、李承晩ラインを「宣言」したとありますが、いったい誰に向かって宣言したんでしょう? 米国だけ? 日本の支配権が及んでいる対馬の領有を「宣言」するのであれば、日本に向かってしないとおかしいでしょう。持ち主に気づかれないようにこそこそ裏でやってても、それは「宣言」じゃありませんわ。


実際の李承晩ラインは「宣言」されたので、我々一般人も知っているわけですが、この1949年の李承晩ラインや対馬領有の「宣言」は、どうして知られていないんでしょうね。実に謎です。


さらに、驚きの記述が続きます。


>>赤いラインが「李承晩ライン」で、戦勝国として「対馬と九州」を韓国の領土にする権利あるとして対馬と九州の引き渡しを米国に要求。また戦勝国として朝鮮進駐軍として日本に駐留する権利もあると米国に要求した。(原文ママ)


出た! 朝鮮進駐軍!!


朝鮮進駐軍とは、在特会などが存在を主張する、戦後に在日朝鮮人によって組織されたとされる犯罪集団のことです。しかし、その在特会は、「朝鮮進駐軍」なるものの存在を裏付ける情報ソースを何も提示していませんし、ネットで朝鮮進駐軍の写真として流布しているものも、実際には警察庁予備隊の写真であることが分かっており、朝鮮進駐軍なんてものはネット上の架空の存在と考えるのが妥当です。


とまあ、ネットで一般的に言われている「朝鮮進駐軍」とは、在日朝鮮人によって組織された集団ということになっているんですが、韓国が「戦勝国として朝鮮進駐軍として日本に駐留する権利もあると米国に要求した」というのは初耳です。なんで韓国朝鮮進駐軍を名乗るねん!! なんかもうわけわかりません。


「戦勝国として~」というのは、サンフランシスコ講和会議で、韓国が戦勝国として出席することを米国に要求したという事実を踏まえてのことなんでしょうが、韓国が戦勝国として講和会議に出席することを要求したことは、世間一般に知られていることで、別に隠されていません。なのに、どうして韓国が「戦勝国として日本に進駐する権利を要求した」ということは隠蔽されたのでしょう? これまた意味が解りません。


今回のデマは、「李承晩ライン」「竹島占拠」「対馬領有主張」「朝鮮進駐軍」「サンフランシスコ講和会議での出席要求」など、味噌もくそももごちゃごちゃにコラージュして出来上がったいびつな作品、という感じですね。


もしも、本当に李承晩が九州領有を米軍に要求していたり、九州まで含んだ李承晩ラインを設定していた李、朝鮮進駐軍としての駐留を要求していたりしたのなら、こんなネットのブログだけでなく、ちゃんとした公文書や歴史関連の書物にその事実が書かれているはずです。


こちらのブログでは、これらの事実は「左翼により隠蔽された」ために日本人の多くが事実を知らないのだ、ということになっていますが、一体「左翼」はどうやってそれらを隠蔽したんでしょう…。日本の「左翼」は米国の公文書を隠したり、日本中の歴史学の研究者に圧力をかけたりすることができるんでしょうか…? そして、こういったブログを書いている人たちは、一体どうやってその隠蔽された事実を知ったのでしょう…??


朝鮮戦争開戦後、韓国があっという間に北朝鮮に制圧されたのは、韓国軍が九州侵略のために南部に集中していたから、なんて荒唐無稽な理由ではなく、単純に北朝鮮軍の方が圧倒的に強かっただけです。


北朝鮮は、開戦の前年からソ連のスターリンに開戦のための支援を求めていました。そして、ソ連の支援を受けた北朝鮮は、200台を超えるソ連制戦車で一気に38度線を越えて進軍したのです。一方、当時の韓国軍は戦車の1台さえ持っていませんでした。たったの3日でソウルが陥落したのは、別に38度線の警備が手薄になっていたなんて理由じゃなく、単純に戦力的に勝負にならなかっただけです。


この手の人たちは、しばしば「左翼により隠蔽された歴史」みたいなことを言いますが、そんな「左翼」とやらが歴史を隠蔽できるような力を持っているわけがないでしょう…。どうやったら隠すことができるんでしょう? しかも、その隠蔽された歴史とやらを、どうやってネットの人たちが知ったのやら…。


歴史事実の隠蔽ができるのなんて、当事者か、政府中枢の人間などかなりの権力者だけじゃないかと思うんですが、もしも「李承晩が九州領有も主張して李承晩ラインを引いた」「九州侵攻を企てていた」「その隙を北朝鮮がねらった」なんてことを隠蔽しようとしたら、一体どれだけ多くの人が協力して隠せばいいんでしょう? 何のために隠すんでしょう? 愛国カルトさんたちは、どうやってその隠された歴史をしったのでしょう? 全く想像もつきません。


とりあえず、こういう「隠蔽された歴史」みたいなことを言う人については、耳を貸さない方がいいです。「アメリカは宇宙人と既に接触しているがそれを隠している!」みたいなのと同じレベルだと考えるべきでしょうね。


以前も書きましたが、「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と考えるのはやめましょう。大抵の場合、騙されているのは自分の方です。


==追記==

コメント欄でのツッコミで気が付きましたが、この説だと、北朝鮮は日本を救った英雄になってしまいますね…。韓国を貶めたいがために北朝鮮を持ち上げてしまうというのは、愛国カルト世界では時々起こることです。(→例


もしも本当に北朝鮮が韓国軍が手薄になった隙をつこうとしたのであれば、韓国軍が南部に集結して日本に攻め込もうとしているタイミングではなく、韓国軍が実際に日本に攻め込んで半島がさらに手薄になったタイミングを狙いますよね。


韓国が日本に侵攻する前に北朝鮮が韓国に戦争を仕掛けたのなら、北朝鮮は日本を守ろうとしたということになってしまいそうです。韓国を制圧するためには、韓国軍が日本に攻め込んだ後の方が都合がよいはずです。


その点を考えても、韓国が日本に攻め込もうとして南に集結した隙を北朝鮮に狙われた、というのは嘘だとわかります。

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