<ざっくり言うと>
  • 「サッカーで韓国のファウル数は尋常じゃなく多い」というイメージが「嫌韓厨」の間で広まっているが、統計を見ると事実ではない。
  • アジアカップ過去3大会のファウル数は日本の方が多いぐらいであり、ワールドカップ過去3大会の韓国のファウルはオーストラリアよりも少なく、平均よりも少し多い程度。
  • 軽々しく他国の「国民性」をしたり顔で貶める者こそ、日本の「国民性」を貶めている。
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目次

サッカーを根拠に韓国の「国民性」を語る嫌韓コメント来る


少し前に書いた記事
に、こんなコメントが届きました。

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>>日本人と韓国人の国民性の違いなんてスポーツみりゃ一目瞭然だろ。
>>サッカーなんてひどすぎる
>>反則、暴力は当たり前、判定にいちゃもんつける、審判を買収。
>>もし日本がやったら日本人からクレームの嵐が来て一回で終わることをあの国は毎回のようにやってるんだぜ?
>>あの体たらく見ても差別だとか騒ぐ奴はホントにバカだと思う。

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>>サッカーでの反則なんてどこの国でもあるとかいいたんだろうけど、
>>韓国はファール数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多いの。


このぽぺぺんという人物は、これ以前にも絵に描いたような嫌韓発言を繰り返していた人物なのですが、「韓国の国民性は悪辣である」「実際に韓国の国民性が悪辣だから非難しているのであって、それを差別だとか言う奴はバカだ」と言いたいわけです。本当のことを言ってるだけなのだから、差別ではない、と。その根拠の一つとして、サッカーを出してきたわけです。


しかし、私に言わせれば、差別主義者の典型です。自分の醜い差別意識を正当化するためにスポーツまで利用して理由を後付けしているにすぎません。


ツッコミどころはたくさんあります。「審判を買収した」ってのは、おそらく2002年ワールドカップでの韓国-イタリア戦を裁いたバイロン・モレノのことなんでしょうが、FIFAはイタリアサッカー協会の要請を受けて調査した結果、「規律違反はなかった」と結論付けています(参照)。また、「判定にいちゃもんつける」と韓国の国民性を非難しながら、「韓国は審判を買収したんだ」と言って判定にいちゃもんをつけているんですから、このブーメランぶりは酷いですね。


今回は
「(韓国は)反則、暴力は当たり前」
「韓国はファール数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」
というのが事実かどうか見てみましょう。『マンガ嫌韓流』でも、2002年W杯における韓国のファウルがひどいというような話が冒頭で述べられており、「嫌韓厨」と呼ばれる人間を作った要因の一つとされています。


この嫌韓厨の間で広まってしまった、「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」というイメージは事実なのでしょうか? 直近のアジアカップとワールドカップで調べてみました。



アジアカップでのファウル数

アジアカップ2019のファウル最多は日本

まず、直近のアジアカップ2019を見てみましょう。この大会でファウル数が一番多かった国はどこか。何を隠そう、日本なのです。(ただし、日本はイエローカードやレッドカードが少なく、フェアプレー賞も受賞)

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日本の数値が最も目立ったのはファウル数。113回は2位イランの89回を大幅に超えてのトップだ。1試合あたりになおすと16.1回。これも2位キルギスの15.5回、3位中国の15.2回を上回る数となっている。イエローカードは1試合2枚を下回り、大会のフェアプレー賞を受賞した日本だったが、ファウル数は大会随一の記録だったようだ。
(ゲキサカ、2019年2月7日
日本はサウジアラビア戦では1試合で27回もファウルをしており、これはサウジアラビアの13回の倍以上でした。


また、こちらはベスト16終了時点での数字ですが、韓国のファウル数は16チーム中10位にも入っていません。

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参照

これだけでも「韓国はファール数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」というのは嘘であることがわかりますね。

アジアカップ2015の1試合平均ファウル数は日本が上。イエローカードはオーストラリアやイラクが上。

次に、アジアカップ2015を見てみましょう。こちらのサイトによれば、韓国のファウル数は80で全体の4位。韓国は決勝までの合計6試合を戦っているので、一試合平均は13.3本。オーストラリアは6試合で103本なので、1試合平均17.2本。日本は4試合で72本で1試合平均18.0本。日本の方が1試合平均のファウル数が多いですね。ちなみに、ウズベキスタンは4試合で84本なので1試合平均21.0本。イラクは6試合で102本なので1試合平均17.0本。UAEは6試合で74本なので、1試合平均12.3本でした。

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アジアカップ2015:1試合当たりのファウル数
ウズベキスタン…21.0
日本…18.0
オーストラリア…17.2
イラク…17.0
韓国…13.3
UAE…12.3
またもや「韓国はファール数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」というのは嘘ということがわかりましたね。


また、こっちのページでイエローカードについても調べてみましたが、韓国は6試合で10枚。オーストラリアは6試合で13枚、イラクは6試合で14枚でした(日本は4試合で4枚)。イエローカードの数でみても、「韓国はファール数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」というのが嘘であることがわかりますね。

アジアカップ2011ではフェアプレー賞を受賞


日本が優勝したアジアカップ2011については、ファウル数が掲載されているサイトを見つけられなかったのですが、この大会で韓国はフェアプレー賞を受賞しています。


以上、アジアカップ過去3大会において、「韓国のファウルが他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」というのは嘘であることがわかりました。


次に、ワールドカップについて調べてみましょう。



ワールドカップでファウル数

ワールドカップ2018予選グループではファウル数1位、イエローカード2位

2018年のワールドカップでは、韓国のファウル数は確かに多かったです。予選グループ終了時点で、ファウル数では1位、イエローカードの枚数では2位でした。(韓国は予選グループで敗退)



↓ファウル数(少ない順)
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↓イエローカード(少ない順)
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しかし、ファウル数では2位のモロッコとわずか1差。カード数ではパナマが上回っています。また、レッドカードももらっていません。「韓国のファウルは他国に比べて尋常じゃないくらい多い」とは言えませんね。

ワールドカップ2014予選グループではファウル数28位、イエローカード2位


次に、2014年大会ですが、予選グループでのファウル数は32チーム中28位でした。下から5番目で、日本よりも少ないです。ちなみに最もファウル数が多かったのはオーストラリアでした。



↓ファウル数(少ない順)
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イエローカード数は2位ですが、レッドカードは1枚も受けていません。(ポルトガル、カメルーンなど7か国がレッドカード1枚ずつ)

↓イエローカード(少ない順)
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やっぱり「韓国のファウルは他国に比べて尋常じゃないくらい多い」とは言えませんね。

ワールドカップ2010予選グループではファウル数16位、イエローカード30位


2010年大会を見てみましょう。ファウル数は45本で、32チーム中16位タイでした。(下から数えて15位タイ)



↓ファウル数(少ない順)
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イエローカードの枚数は僅か3枚で、日本と同じで32チーム中30位タイ(下から3位タイ)でした。また、レッドカードは1枚も受けておりません。(ナイジェリアとオーストラリアは、3試合でレッドカード2枚も受けていた)

↓イエローカード(少ない順)
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以上のように、過去3回のワールドカップの予選グループで、韓国がファウル数1位だったのは2018年の1回だけ。イエローカードで1位だったことはなく、2010年大会では、ファウル数・カード数ともに中央値より少なく、また、3大会通じてレッドカードはゼロでした。やっぱり「韓国のファウルは他国に比べて尋常じゃないくらい多い」とは言えませんね。 

W杯での韓国のファウルはオーストラリアより少なく、レッドはゼロ


アジア代表の日本・韓国・オーストラリアの過去3大会予選グループでのファウル数・カード枚数の平均がこちらです。

日本
201020142018平均一試合の平均
ファウル41402836.312.1
イエロー3443.71.2
レッド00000
         
韓国
201020142018平均一試合の平均
ファウル45366348.0
16.0
イエロー36106.3
2.1
レッド0000
0
       
オーストラリア
201020142018平均一試合の平均
ファウル62503749.716.6
イエロー7676.72.2
レッド2000.70.2

1チーム平均
201020142018平均一試合の平均
ファウル40.442.746.343.114.4
イエロー5.13.95.54.81.6
レッド00.20.20.20

オーストラリアよりも、ファウル数、イエローカード数、レッドカード数、全てにおいて少ないですね。全体と比べても、1試合ごとのファウル数は平均より1.6回、イエローカードは0.5枚多いだけでした。「平均より多い」程度の範囲に収まっていると言えますね。


やっぱり「韓国のファウルは他国に比べて尋常じゃないくらい多い」というのは間違いですね。



「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」は典型的確証バイアス


アジアカップでは韓国のファウル数は決して多くなく、むしろ日本の方が多いぐらいです。ワールドカップのファウル数も他国と比べて特別多くはなく、3大会でレッドカードはゼロでした。以上のことから、「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」「反則、暴力は当たり前」というのは事実でないと言うことができます。


「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃない」というのは、典型的な確証バイアスだったといえるでしょう。確証バイアスについては以前も記事にしたことがありますが、自分の信念に沿う情報を過大評価し、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことです。



「黒猫は不吉だ」と思っていると、「黒猫を見て、運が悪かった日」ばかりが記憶に残り、「黒猫を見たけど運が悪くなかった日」「黒猫を見なかったけど運が悪かった日」の情報がすっぽり抜け落ちるわけです。それで、「黒猫は不吉だ」という信念が強化されていく。実際に調べてみたら、黒猫と運の良し悪しに相関関係などないだろうに。


この確証バイアスは、差別と非常に結びつきやすいです。例えば、「イスラム教徒は凶悪犯罪が多い」なんて思っていると、ニュースを見ても、キリスト教徒の凶悪犯罪は印象に残らないのに、イスラム教徒の凶悪犯罪のニュースを見ると、「やっぱりイスラム教徒は凶悪犯罪が多い。イスラム教徒は危ない」というイメージが強化され、偏見・差別に結び付いていくわけです。


今回の場合、最初に紹介したぽぺぺんという人物は「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」という自分のイメージに合致する情報ばかり集め、それが事実かどうかの検証さえしなかったというわけです。実際に検証してみれば、「韓国はファウル数が他国に比べて尋常じゃないぐらい多い」なんてのが事実でないことはわかるわけです。


こんなので「韓国の国民性はー」とか言い出すやつの人間性こそ疑問符が付きます。検証もせず、自分の頭の中のイメージで語る。それは偏見に他なりません。偏見で他人を非難する。まさに差別そのものだと言えましょう。



日本人の民度が高いと思いたいのなら、他国民を貶めるな


今回紹介したぽぺぺんなる人物は、韓国の「国民性」が劣悪であることを示そうと、韓国のサッカーがひどいというのを根拠にしたのですが、統計的にも間違っているのは今見た通りですし、そもそもそんなもので国民性を判断できると思ってる時点で完全に間違っています。


このぽぺぺんという人物は、韓国が「審判を買収した」と言って韓国の国民性を非難していましたが(FIFAの調査では買収の事実は認められなかった)、日本だって、国技なんて言ってる相撲で大規模な八百長をやらかしています。ぽぺぺんの理屈を採用すれば、大相撲の八百長を理由に、日本人の国民性を非難しないといけないはずですけどね。



また、東京五輪では、招致の際の買収疑惑が持ち上がっています。日本だって、まるで清廉潔白かのような顔をしていられる立場にはないんですよ。



理屈と膏薬はどこにでもつきます。サッカーを理由に5000万の韓国民の「国民性」を貶めることが許されるのであれば、大相撲八百長問題を理由に日本人の「国民性」を貶め、「日本人は卑怯だ」の「日本人は恥知らずだ」だの言えてしまいます。まして、今回の場合、「韓国のファウルは尋常じゃなく多い」というのは統計的に間違いだし、「審判買収」というのは少なくともFIFAの調査では否定されているのですから、全く話になりません。


ぽぺぺんという人物は「(韓国の)あの体たらく見ても差別だとか騒ぐ奴はホントにバカだと思う」と言っています。「自分の言っていることはちゃんと理屈があることなのだから差別ではない」と言っているわけですが、自分に都合のいい情報だけ見て一つの国の国民全体の「国民性」なんてものを語ろうとするだけで愚かすぎると言わざるを得ないし、まして統計的にも間違っているのだから、偏見と差別そのものと言うほかはありません。それを差別だと認識さえしていないのがさらに質が悪い。


軽々しく一つの国の「国民性」だの「民度」だのを賢しらに語る。語るだけでなく、それを劣悪なものと貶める。そのような人間こそ、日本人の「国民性」を貶めています。


もしも「日本人の国民性は優れている」「日本人は民度が高い」などと思いたいのであれば、他国民を愚弄するような愚劣なことはすべきではありませんね。他国民を貶めながら「我々は民度が高い」とか、自己矛盾も甚だしい。

追記:「韓国は嫌われてるから中堅強豪と練習試合を組めない」というデマ


長くなりすぎたんで、新記事にしました。



追記2:ご本人光臨


今回の記事のきっかけである、ぽぺぺん氏がご来訪されました。予想を全く裏切らない見事なコメントです。

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>>日本は不正起きたら基本的に厳しい姿勢に望むのが韓国との大きな違い。韓国人ってそもそも暴力とか不正、インチキを悪いことって考えてない人が多いから国ぐるみであんなことするんだよな。


この時点で贔屓の引き倒し&偏見丸出しで、この人の人間性がよくわかりますね。


「日本は不正が起きたら基本的に厳しい姿勢で臨む」って、公文書改竄の実態解明もせず、誰一人起訴されることなく、誰がどうやって命令したのかもわからないまま曖昧にした日本が、「不正が起きたら厳しい姿勢で臨む」とかちゃんちゃらおかしい。まだ、朴槿恵を弾劾した韓国の方が、不正に対して厳しいんじゃないかと思えます。それに、「国ぐるみであんなことする」のあんなことって何やねん。


しかし、それ以上に驚かされるのがこの発言。


>>数どうのこうの言ってこういう本質を見抜けないからこの管理人及びこの人に同調する奴はバカだってずっと言ってるんだけどね(笑)


「韓国はファウル数が尋常じゃなく多い」って言って、数どうのこうの言い出したのはお前だろうが!!


本当にネトウヨって頭が悪くてご都合主義で卑怯者ですね…。韓国が「反則・暴力は当たり前」だという主張の根拠として「韓国はファウルの数が尋常じゃなく多い」と自分で言ったくせに、それを否定されても間違いを認めることなく、「数じゃない」と言い出すとか、何たる卑怯者なのか…。


そういえば、菅義偉も、安保法案の時に「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいます」と言って、具体的に誰かと問われたら3人しか上げることができず、「たくさんいると言ったのですからたくさん挙げてください」と追及されたら「数じゃないと思いますよ」と言っていましたね。自分で数の多さを根拠に挙げておきながら、その嘘が暴かれると「数じゃない」と言い出す。うーん、なんたる卑怯者。

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(↑自分で「たくさんいる」というのを正当性の根拠にしたくせに、ウソがばれたら「数ではないと思いますよ」と言い出す、絵に描いたような卑怯者)


「ファウルの数が尋常じゃなく多い」というのが崩れたのに、「韓国人は暴力や不正やインチキを悪いことって考えていない」という結論だけは維持して、それを韓国人の「本質」だと言ってしまう。そもそも一つの国の国民に「本質」なんてものがあると思う時点でどうかしてますけど、その「本質」を自分は見抜いたと考えてるのも、これまた傲慢なこと限りなし。


数千万もいる国民に「本質」なんてものは存在しないでしょうが、この人物の「本質」は明らかですね。ご都合主義の卑怯者です。


こういう人間にだけは、なにが何でもなってはいけませんね。こういうご都合主義で卑怯な最低の人間にだけはならないよう気をつけましょう。


ラフプレーや八百長をするやつはスポーツをやる資格がありませんが、スポーツを利用して他国民全体の国民性を貶めようとするやつは、スポーツを見る資格もありません。

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