<ざっくり言うと>
  • 「民主党が中止した八ッ場ダム計画を安倍政権が復活させた」と勘違いしている人が大勢いるが、デマ。
  • 民主党政権時に一度八ッ場ダム中止が表明されるが、国交省の検証報告書などを経て、最終的に野田内閣の時に事業再開が決定されている。
  • 当時、天下りや税金の無駄遣いといったいわゆる「既得権益」が問題視されており、事業仕分けは国民の9割近くが評価していた政策であった。無駄削減を求めていたのは国民であり、民主党が国民を無視して予算削減を行おうとしていたかのような認識は間違いである。
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今日は既に、水害になるたびに出てくる「民主党がスーパー堤防を中止したせいで水害が広がった」というデマを取り上げました。。スーパー堤防の完成は400年後ですよ、みなさん。家康の治水計画が今も続いているっていうのと同じことなわけですが、現実的だと思いますか?



1日に記事を2回も更新するのもどうかと思ったんですが、これはタイムリーな問題なので、今書いておかないといけないと思うので、書いておきます。


今回の台風被害で、「八ッ場ダムのおかげで利根川水系が助かった」「八ッ場ダムがなければ利根川水系は全滅」という話が出ているようです。


そもそも本当に八ッ場ダムがなければ利根川水系が大惨事になっていたのかどうかは専門家じゃないのでわかりませんが、これに関連して、民主党政権批判が起きているようです。

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>>「民主党政権つぶれてくれてありがとう!」
デマサイトアノニマスポスト
>>今が民主党政権下だったら八ッ場ダムは無かっただろう
>>民主党議員の醜悪さ
>>旧民主党の連中!みてるかこれを。
>>ほんとお前ら日本の癌だよ。

>>民主党が潰した八ッ場ダムが間に合って首都圏が救われましたね
>>あー、安倍政権でよかった~

>>民主党が中止した八ッ場ダムを安倍政権が復活
>>民主党が差し止めてなかったら既に試験堪水は終わってた。
>>今回の台風前に何とか間に合ったのは、
>>安倍内閣がちゃんと予算をつけたおかげ


全然違いますからね。


八ッ場ダムの建設計画は1949年からはじまり、地元や地元以外からも反対運動が巻き起こり、総事業費は倍増し、計画は半世紀たっても進展せず、さらには利権に絡んだ天下り問題まで発覚します。そのため、民主党政権は「八ッ場ダム中止」をマニフェストに掲げて政権を奪取します。そのため、一度民主党政権は八ッ場ダム中止を正式に表明します。


しかし、最終的に、国交省の検討報告書で「現行案(八ッ場ダム建設)が最も有利」とされ、民主党は野田内閣の時に八ッ場ダム中止を撤回し、建設再開を表明します。


民主党政権時代に確かに一度中止が表明されましたが、再開を決めたのも民主党政権時代であり、「民主党が潰した計画を安倍政権が復活させた」というのは完全な間違いです。


また、「民主党のせいで工事が大幅に遅れた」と言っている人もいますが、そもそも八ッ場ダムは最初の計画が1949年スタートで、そこから半世紀以上もなかなか進展しなかったのです。民主党が計画中止を表明したのが2009年。再開を決めたのが2011年です。50年以上ほとんど立ち往生していたことを棚の上げ、民主党の2年間のせいで「大幅に遅れた」なんて言うのはおかしいですね。

ずっと自民党政権のままだったら事業の必要性の検証さえ行われないままだったでしょうし、最終的に再開を決めたのですから、今回の台風で八ッ場ダムに絡めて「民主党政権がー!」って言うのは明らかにおかしいですね。


当時、さんざん天下り問題とか予算使い切りとか様々な無駄が指摘され、「既得権益」と呼ばれるものに国民はうんざりしていました。その「既得権益」を打破するために、国民の圧倒的多数の支持 (当時の世論調査で9割弱が支持)していたのが事業仕分けだったわけです。結局、せっかく無駄を削ぎ落しても、名前だけ変えてまた復活してくるなど、60年続いた「既得権益」のデカさにうまくいきませんでしたが、当時求められていた政策だったことは確かです。


無駄削減を求める当時の圧倒的世論を忘れ、あたかも民主党が国民を無視して事業削減をしていたかのように言うばかりでなく、民主党が中止した八ッ場ダムを安倍政権が復活させたかのような勘違いまでした民主党批判。やはりこういうのを見ると、民主党政権批判の大半は後から作られた神話に思えてなりません。


少なくとも、いい加減「民主党が事業仕分けでスーパー堤防を中止させたせいで水害が起きた」とか「民主党が中止させた八ッ場ダム計画を安倍政権が復活させた」とか、そんなデマまで用いるのはやめましょう。そして、当時、無駄遣いを止めることを、国民の実に9割近くが求めていた事実を無視してはいけません。

追記:「八ッ場ダムがなくても問題は生じなかった」という意見も


今回の記事の冒頭に、八ッ場ダムが水をためたのは事実でも、「そもそも本当に八ッ場ダムがなければ利根川水系が大惨事になっていたのかどうかは専門家じゃないのでわかりませんが」と書きましたが、「八ッ場ダムがなかろうと利根川水系に問題は生じなかった」という計算をしている人がいました。



この計算が正しいのかどうかは、私にはわからないので、詳しい方のコメントをいただきたいですが、ちゃんとした計算結果もないうちから、ダムの写真だけ見て「ほら、水を溜めている! 八ッ場ダムがなかったら利根川水系は全滅だったんだ!」とか言うのは、短絡的すぎるかと思います。


八ッ場ダムが利根川の氾濫防止にどの程度の役割を果たしたのかは、今後専門家が算定してくれることでしょう。どんなことでも、SNS情報だけ見て「そうだったのか!」と決めるのは控えたほうが良いいでしょう。

追記2:専門家からも疑問の声

もちろんまだちゃんとした検証はなされていませんが、こんな声もありました。

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 記録的な大雨をもたらした台風19号で、試験貯水中に満水となった八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の治水効果をめぐり、称賛と批判が渦巻いている。こうした状況について、治水の専門家の今本博健・京都大名誉教授(河川工学)に話を聞いた。

 台風19号に関する八ツ場ダムの治水効果は今後、データをそろえ冷静に検証する必要がある。私たちは洪水と共存しながら人命を守っていかなければならない。私はダム推進派でも反対派でもないが、効果を過大評価せずに見つめていかなくてはならないと思う。

 今回は試験貯水中で、たまたまダムの容量に通常以上の余裕があった。ダムが運用中なら下流の利水のために容量の余裕は少なく、7500万立方メートルの水が来れば緊急放流となっていただろう。

 国土交通省の予想を超え、今回も緊急放流がたくさんの場所(5県6カ所)で実施された。堤防強化など治水ではあらゆる対策が考えられ、ダムも一つの選択肢だが、計画以上の水が来ると下流に流すしかない欠点があり、造るのに金もかかる。さらに、本当に洪水を抑えようとするならもっと多くのダムが必要になる。

 八ツ場ダムに利根川水系の流量を調節する効果がないことはない。ただ、広大な利根川水系で上流の八ツ場ダムが、遠く離れた下流域の水位を下げるのにどれだけ効果があったのかは疑問視される。

 治水対策はこうした様々な条件や手段を検証し、費用、時間、効果で優先順位を決め、住民の命を守るにはどうすればいいかを考えるべきだ。(聞き手・丹野宗丈)

朝日新聞10月17日
素人が写真だけ見て「八ッ場ダムのおかげで助かった!」などと言わずに、専門家の検証を待つ必要があるでしょう。

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