<ざっくり言うと>
  • グレタ・トゥーンベリさんが「中国は途上国だからセーフ。ノーカン」と言ったというデマがネットで広がっている。
  • 実際は、グレタさんとは全く関係ない、グレタさんの活動を支持するアメリカ人のツイッタラーの発言が元ネタとなったデマ。
  • その元ネタの人も「途上国だからセーフ」「ノーカン」などと言っておらず、「途上国の温室効果ガス削減は先進国が道を示すべき」というものだった。
  • 「グレタは中国に文句を言わない」と言って誹謗している奴らもいるが、完全に的外れ。
  • 気候変動は全世界で取り組むべき課題であり、彼女は最初から特定の国ではなく全世界に向けて訴えている。
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「グレタが『中国は発展途上国だからノーカン』と言った」というデマが拡散中


前回も紹介した通り、どういうわけかネトウヨ界隈は概してグレタ・トゥーンベリさんが嫌いなようです。保守を名乗るなら地球環境を保守してもらいたいものですが、やはり彼らは保守などではなく、自分の身だけが可愛いだけなんですかね。


日本のネトウヨからのみならず、トランプ米大統領やブラジルのボルソナーロ大統領らからも嫌われているグレタさん。彼らに嫌われるというのはむしろ名誉なことだと思いますが、日本のネトウヨの間では、彼女にこんなうわさが流れているようです。

>>「中国は途上国だからセーフ」と言い放ったグレタ氏


このツイートをしているくつざわ亮治という奴は、豊島区のヘイトデマネトウヨ議員(元「N国党」)で、以前も一度デマサイト『もえるあじあ』を鵜呑みにしてデマを流しているのを紹介したことがあります。


(はっきり言いますが、『もえるあじあ』とか『保守速報』とか『あじあにゅーす2ちゃんねる』などを好んで読んでいる人がいたら、その時点で、その人間は一切話を聞くに値しない存在だと判断してよいと思います)


驚いて調べてみると、どうやらネトウヨ界隈では、グレタ・トゥーンベリさんが、温室効果ガスの排出規制に関して、「中国は途上国だからセーフ」と言ったということになってるらしいです。

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>>[驚愕]環境問題だけどグレタさん中国とインドにも言わないと
>>→
グレタ『中国は発展途上国なのでノーカンです』
>>グレタ<中国はまだまだ発展途上国よ!? >>グレタさんが、中国が発展途上国だからCO2排出はノーカンでいいと本気で思ってるとしたら、やっぱり学校に行って勉強すべきだと思う。 >>グレタさんはまた「中国は発展途上国だからセーフ!」って言うさ >>グレタが「中国は発展途上国だから」と言って中国を問題視しないのもおかしい

2019y12m19d_000245317
>>「中国は発展途上国だから」「私は正しいんだから議論不要」
>>みたいなこと言い出した時点で全く評価していない

参照

2019y12m19d_000739683
>>グレタに何で中国に言わないの?と質問したら
>>途上国はセーフ、という答えが返ってきたそうで


2019y12m20d_214026439
>>発展途上国だからセーフって排出するCO2の量でもの言えよガイジ

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>>発展途上国はセーフとか言ってる時点で環境のことなんて二の次じゃねぇか
>>嘘つき女

(↑デマヘイトサイト『もえるあじあ』(魚拓))


やっぱりデマヘイトサイト『もえるあじあ』が今回もデマ拡散に貢献してましたね。この「グレタは『中国は途上国だからセーフ』と言った」というデマが、前回紹介した「グレタは中国の手先」デマが広がっている一因にもなっているようです。


しかし、これはデマです。今回はこのことを取り上げます。



「中国は途上国」発言をしたのはグレタさんと全く関係ないアメリカ人ツイッタラー


一体どこからこんな話が出てきたのかと思いましたが、どうやらどれも元ネタはこのツイートのようです。
このイルカバン(@irukakaban) って人のこのツイートをチラ見しただけだと、あたかもグレタさんが「中国は発展途上国だからセーフ」と言ったかのように読めますが、明らかな誤解です。これ、グレタさんの言葉じゃありません。


ことの発端は、今年9月、ユーロニュースというところがグレタさんが国連で演説した際のことを報道したら、ELC~ Le Chatというツイッタラーが、「彼女は中国とインドを怒りにいくべきだ」と反応したことでした。(現在このツイートは削除

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それに対し、グレタさんと何の関係もない別のただのツイッタラー、ミシガン州に住むらしいBill Meabrodという人が、「中国は発展途上国だが、私たち(※アメリカのこと)は世界最高の大学を備えた、世界で最も豊かな国だ。もし発展途上国が環境に配慮した発展ができないのなら、それは道を示せなかった私たちの責任だ」とリプしただけのことなんです。(現在はこのツイートは削除されている)

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つまり、「中国は発展途上国だ」と答えたのは、グレタさんと何の関係もない、ミシガン州に住むBill Meabrod氏であって、グレタさんは一言だって「中国は発展途上国だからセーフ」みたいなことは言っていないんです。


大体、Bill Meabrodというひとも、「セーフ」とか「ノーカン」みたいなことは全く言っていませんね。途上国が環境に配慮した発展をすることの必要性を認めたうえで、「世界一金持ちで世界一の大学があるアメリカが、途上国ににそのような発展の道を示す必要がある」という趣旨のことを言ってるわけです。セーフとかノーカンとかそんな話じゃないですね。話を捻じ曲げすぎ。


さらに言っておくと、このBill Meabrodって人のツイートを取り上げたイルカバン (@irukakaban)って人は、「グレタさん本人ではなくその支持者に対しての意見です」ってちゃんとツイートしてるんですよね。
ところが、よく読みもしないで脊髄反射するやつが「グレタが『中国は発展途上国だからセーフ』と言った!」と拡散し、『もえるあじあ』みたいなヘイトデマサイトが脳味噌を停止させてそれをそのまま転載してさらに拡散し、くつざわ亮治みたいなヘイトデマゴーグが、またそれを鵜呑みにして拡散するという、いつものネトウヨの連鎖が起きたわけなんですね。


ついでに言うと、気候変動枠組み条約では、中国は途上国(非附属書I国)に分類されていて、先進国(附属書II国)が途上国の支援の義務を負っているというのは事実ですからね。


さらに一人当たりの排出量だと、中国はアメリカの半分以下、インドはアメリカの10分の1です。「アメリカが率先して道を示すべき」という意見は当然のことと言えましょう。


(上で紹介した「グレタは中国とインドを怒りにいくべきだ」というツイートをした「ELC~ Le Chat」という人物は、ツイートを見ると、かなり熱心なトランプ支持者のようだ。おそらく気候変動への取り組み自体に否定的なのだろう)

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(↑四国電力HP



「グレタは中国に何も言わない」という批判は的外れすぎる


上で見たように、グレタさんが嫌いな人たちは、「グレタは中国に何も言ってない」みたいなことを言いっていて、石井孝明みたいなのは、「中国に行かないグレタ」とか妄言を吐いていますが、そもそもこの批判が的外れすぎです。

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(↑デマヘイトゴミサイト『もえるあじあ』)
>>ヤフコメや2chでめっちゃ評判悪いですよw
>>中国や発展途上国の大気汚染は絶対に批判しないことで有名
>>「発展途上国は仕方ない」byグレタ



前回も書きましたが、彼女がこれまでに行った場所って、世界経済フォーラムが開かれているダボスだったり、国連気候行動サミットが開かれているニューヨークだったり、COP25が開催されたスペインだったりしてるわけです。


言うまでもなく、環境問題は一か国だけでどうにかなる問題ではなく、すべての国が協力してルール作りをして取り組まないといけない問題でして、彼女は国際社会全体に対して訴えかけているのです。特定の国に対して「お前が悪い」みたいなことは言ってるわけじゃないんです。演説を読んでみよう


石井孝明とかその辺の連中は、もう根本から問題の理解ができていないんですね。きっと石井らの脳内では、グレタさんは各国に突撃して「お前の国が悪い!」とか言ってることにでもなってるんでしょうね。


無論、中国の排出量を抑えることは絶対的に必要なんですが、中国がどのような義務を負うか、日本がどのような義務を負うか、アメリカがどのような義務を負うか、インドがどのような義務を負うか、それは世界全体の枠の中で考えないといけないことです。中国がどのような義務を負うかも、全世界で考えなければならないことです。


全世界の問題について、全世界に訴えているのに、「どうして中国に行かない」「中国の回し者」とか言ってる奴の、なんと愚かでなんと的外れなことか。全世界に向けて言ってるのに、「中国や発展途上国の大気汚染は絶対に批判しないことで有名」とか妄想を垂れ流しているバカの、なんと愚かでなんと的外れなことか。


なぜかネトウヨさんは環境問題に否定的だったりグレタさんを中傷したりしていますが、環境問題は地球全体の問題で、ネトウヨさんたちも自分たちや自分たちの子供や孫に多大な影響があることなんだから、せめて頭の悪いデマを流したり的外れな誹謗中傷をしたりしてないで、黙っていてほしいものです。

追記:中国は意外と環境対策に積極的


これでも「中国を名指し批判しろ!」と言ってる人がいますが、中国は意外にも地球温暖化対策には比較的積極的な方です。
「中国は10年ほど前から、電力の生産と使用の両面におけるエネルギー効率を上げ、石炭への依存から太陽光を主とする再生可能エネルギーの利用へシフトすることで、炭素排出量削減に取り組んできた。習近平国家主席が就任した2013年以降、この取り組みはさらに加速している」
フォーブス
中国は石炭大国なのだが、同時にエコロジー大国でもある。例えば、世界の電気自動車(EV)の半分は中国の道路を走っている。電気バスに限ると、この割合は99パーセントに達する。
Wired
中国生態環境省は17日、今月23日からニューヨークで開かれる国連気候変動サミットに先立って方針説明文書を発表し、気候変動の根本原因に対する「自然を活用した」解決を支援するよう、各国に求めていくと表明した。
会議では世界最大の温室効果ガス排出国である中国への注目が集まる見通しで、地球温暖化対策で一段と野心的な取り組みを環境団体は期待している。
ただ文書では二酸化炭素排出削減に向けた新たな政策表明には踏み込まず、「多国籍間の気候プロセス」を支援し、パリ協定におけるコミットメントを完全に順守すると述べるにとどめた。
中国はこれまで、排出削減対象を重工業部門に限定しながら高い経済成長率を維持してきたが、成果が出にくくなっている。これを受け、現在は森林再生や草原・湿地の拡大など自然の機能を活用した解決策を「積極的に推進」する計画を打ち出している
ロイター
意外にも、中国は再生可能エネルギーの利用に積極的で、全発電量の25%が再生可能エネルギーで、世界の再生可能エネルギー新規導入容量の半分が中国です(Integral参照)。2010年と2017年を比較すると、火力エネルギーの割合は80.4%→69.7%に減少し、自然エネルギーの割合は17.8%→26.5%に増えています(自然エネルギー財団参照)。

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同年の日本の火力依存度は81.7%、再生可能エネルギーは15.6%でした。(isep参照
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アメリカは地球温暖化自体をフェイクニュースと呼び、パリ協定から離脱してしまいました。


彼女が一か国一か国「お前の国が!」って名指ししてるのならともかく、そうでないのに、この現状で彼女が中国だけ名指し批判したら、むしろおかしいよね。


ついでに言うと、くつざわ亮治は「日本だけ『化石賞』と叩く国連環境会議」とかデマ妄想たれてますが、化石賞は日本のほかに、オーストラリア、ブラジル、アメリカ、ロシア、カナダ、EU、ボスニア、スロベニアなども受賞していますし、この賞を与えているのは国連とは関係ないNGOです(Climate Action Network参照)。くつざわは被害妄想する前に少し位勉強しろ!



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