現在受験シーズンまっただ中です。センター試験も終わり、二次試験がある大学受験生はラストスパートをかけているころと思います。

さて、センター試験の「外国語」科目では、英語・ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語の5つを選択することが可能です。この韓国語の試験について、一部に「在日特権だ!」と騒ぐ人がいます。しかし、客観的なデータに基づけば、それが別段特権でも何でもない、ということはこのブログで既に数回にわたり取り上げています。詳しくは以下の記事をお読みください。

センター試験韓国語は在日特権か
・センター試験韓国語は在日特権か2


以上3つが、センター試験に韓国語試験が入っていることが「在日特権」とは呼べないという検証記事です。さらには「在日には最初から30点加算されている」なんて伝言ゲームで作られたデマも存在しているようなので、それも否定しておきました。



今回は最新の平均点を使って、簡潔に「センター試験在日特権説」の誤りを検証してみたいと思います。

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==英語以外の外国語が選択できる理由==

そもそも勘違いしている人がいますが、高校の教育課程の教科名は「英語」ではなく「外国語」です。英語以外の外国語でも高校で授業として開設し、単位を取得させることが可能なのです。(大げさな話、南ンデベレ語のような超マイナー言語でも可能)

英語以外の外国語の必要性ですが、例えば日本言語政策学会は「英語の常用されていない地域のことを理解するのに、英語だけでは十分でないことは、外国人が日本のことを理解するのに日本語を介さない場合を考えてみても明らかです」と、英語以外の外国語学習の必要性を主張しています。

文部科学省も平成20年の文部科学白書には「我が国の国際化に適切に対応するためには、近隣のアジア諸国の言語をはじめ、英語以外の多様な外国語教育についても推進する必要があります。このため、文部科学省では、高校教育の多様化・弾力化を図る趣旨から、英語以外の多様な外国語教育の振興を図っています」と書かれています。 

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平成20年文部科学白書
 
また、最新の学習指導要領には「
英語以外の外国語については(略)、一層積極的に開設され弾力的な指導ができる」ようにすると明記されています。

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(↑学習指導要領

実際に英語以外の外国語が実施されている高校は数多くあり、これらの事実に照らし合わせれば、センター試験の「外国語」の科目で英語以外の言語も選択できることは、むしろ当然の帰結であると言えます。

==韓国語が選択肢に入る理由==

英語以外の外国語も選択できるといっても、まさか南ンデベレ語やタミル語やウルドゥー語のような超マイナー言語まで選択できるようにしていては、さすがに試験制作だけでも無理が生じます。当然、高校生が多く学んでいる言語を取り入れるべきでしょう。

韓国朝鮮が嫌いで仕方がない人たちは、「韓国語はマイナー言語だから必要ない」とか、中には「韓国語は敵性言語だから必要ない」なんて言っているようです。敵性言語って、太平洋戦争中かと勘違いしてしまいそうですが、高等学校における英語以外の外国語の履修状況の最新データ(平成24年5月1日)は以下のようになっています。

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(↑文部科学省HPより)


開設学校数
履修者数
中国語
542校
22061人
韓国朝鮮語318校11441人
フランス語222校8959人
ドイツ語106校3348人
スペイン語100校2421人
ロシア語23校549人
赤字はセンター試験採用科目)

ごらんのとおり、高校における履修者数が多い言語である中・韓・仏・独が、そもままセンター試験に採用されていることがわかります。「スペイン語を入れろ」と言うのならば納得できますが、2番目に履修者数が多い韓国朝鮮語を外すのは理屈が通らないですね。

なお、「センター試験に導入されたから韓国語の履修者数が多いんだろ。原因と結果が逆だ」「センターから外せば韓国語の履修者などいなくなる」という意見も見受けられますが、それはこちらのデータから否定できます。

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参照

この表から分かる通り、平成5年の時点で既に韓国語の授業の開設校数はスペイン語を超えており、平成9年にはドイツ語を抜きます。一方、履修者数でも2001年(平成13年)にドイツ語を抜きます。つまり韓国語が導入される前から韓国語の開設校も履修者数も多くいて、その数は一貫して増え続けていました。よって、「センター試験から外せば韓国語の履修者なんかいなくなる」というのは、勝手な想像にすぎません。

ちなみに、余談になりますが、韓国の高校には第二外国語の授業があり、2010年のデータでは履修者数は
日本語37.5万人(62.8%)
中国語16.9万人(28.4%)
フランス語2.5万人(4.2%)
となっていて、日本語が圧倒的な人気です(国際交流基金HP)。韓国のセンター試験に当たる「大学就学能力試験」では、第二外国語として日本語を含む7か国語が選択可能です。

==韓国語は日本に不必要か==

履修生が多かろうが少なかろうが、「日本に韓国語など必要ない」と主張する人はいます。
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あまりに多いので一々紹介しませんが、「何の役にも立たない」とか「社会で役立たない」とか言っている人がとても多いです。

しかし、実際には、大学には韓国朝鮮文化研究室が数多くありますし、日韓関係史を紐解くうえでも韓国語は必須です。韓国や北朝鮮との外交問題にも韓国語は必要になりますし、嫌韓の方々が色々韓国批判していられるのも、韓国語がわかる人が韓国語の情報を日本語に翻訳して我々に伝えてくれているからです。

また、日本に来る外国人の4分の1は韓国人であり、韓国は日本にとって輸出3位、輸入6位の貿易相手国です。韓国語の需要はいくらでもあります。韓国語が「何の役にも立たない」とか「社会で役立たない」などと言うのは個人の勝手な思い込みにすぎません。

==韓国語の平均点は不当に高いのか==

さて、恐らくセンター試験の韓国語が在日特権だと言っている人たちが最も問題視しているのは平均点の高さでしょう。ネット上では「韓国語の平均点は英語の平均点より30点も高い」「ふざけた逆差別だ」なんて言って、こんなグラフが出回っています。

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(↑この図を使って「逆差別だ」と騒ぐ典型例
このperfumekawaeeという人はこういう事ばっかり言ってる愛国カルトさんです

そもそも、英語よりも平均点が高いのは当たり前です。英語は30点も取れないような人でも受験しますが、他の言語は英語よりも点を取れる自信があるから受験するわけです。英語以外の外国語の授業を設けている高校では、多くの場合英語の授業も行われています。つまり、そういう学校の生徒は、英語ともう一つの外国語のうち得意な方で受験することが可能なわけです。当然平均点は高くなります。

つまり、英語と比べるのは全くのナンセンス。韓国語の平均点が不当に高いかどうかを確かめたいなら、残りの中国語・ドイツ語・フランス語と比べなければ意味がありません

このグラフを見ると韓国語の平均点は確かに高く見えます。しかし、よく見てください。これ平成21年で止まっていますね。ネット上では平成27年1月の今になってもこれを使って宣伝している人が大勢いるのですが、なぜこれをいまだに使い続けるのでしょう? 恐らく彼らにとって都合が悪いからだと思います。

実際の平均点の推移を、最新の平成26年まで見てみましょう。センター試験の公式HPではこのようになっています(参照)。

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まとめてグラフ化するとこんな感じになります。
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太字はその年の最高点)
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さらに、ネットの人たちが隠している平成22年以降だけをグラフ化してみましょう。
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ごらんのとおり、平成22年以降、韓国語が1番だったのは平成23年の1回だけ。最新データである平成25年と平成26年では、2年連続で中・独・仏よりも平均点が低いのです。これで「韓国語の平均点が高い!」と騒ぐのはあまりにもナンセンスでしょう。

恐らくネットで出回っているデータが平成21年以降更新されていないのは、一つには自分で調べるのが面倒くさいから。人が作ったデータをそのまま流用してネットで流しているわけです。自分では何も調べない思考停止をした人たちなのでしょう。

もう一つの理由は、平成22年以降のデータは「韓国語の平均点が高すぎる」と言うために都合が悪いからでしょう。意図的なデータ隠しをしているわけですね。如何にも卑怯者のやることだと言うことができます。

==母国語で外国語試験を受けられるのはずるいか==

最後に、「韓国語でセンター試験を受けられるのは日本人差別だ」と言っている人たちは、在日韓国人は「外国語」の試験を「母国語」で受けている、というものです。日本人が外国語の勉強で苦労しているのに、韓国人は苦労しないでいる、ずるい、というものですね。

まず、試験でいう「外国語」とは、受験生にとっての「外国語」ではなく、日本にとっての「外国語」という意味です。よって、「外国語」を「母国語」で受けられるからずるい、という理屈は成り立ちません。もしもこの理屈が成り立つのであれば、在日韓国人は「国語」を韓国語で受けられることになってしまいます。そんなことありえないですよね。

次に、母国語だからずるい、というのであれば、英語圏からの帰国子女も「英語は母国語だからずるい」ということになってしまいますね。「英語は帰国子女特権だ!」と騒がないといけないはずです。

さらに、私は高校でアメリカ留学をしていますが「留学組は英語を話せて当たり前なんだからずるい!」となるでしょうか? 学校だけでなく、小さいころから英会話塾に通っている子供もいますが、「英会話塾に通ってた子はずるい!」となるでしょうか? なりませんよね。

要するに、求められていることは、日本語ともう一つ「外国語」がわかることであり、それをどうやって習得したかなど関係ないわけです。そうでなければ、そもそも「外国語」の試験自体が成り立ちません。

==国語と比べる誤解==

あまり多くはないですが、中には在日韓国人が韓国語で「国語」を受けられると勘違いしているんじゃないかと思える人もいます。
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参照

>>日本語の現国問題は難関なのに韓国語の内容は小学生レベル
>>なぜ国語だけが簡単な母国語でいいのか訳わかりません

……。なんでこんな誤解できるのか訳わかりません。英語だって、センター試験レベルなんてアメリカ人にとっては小学生レベルだと思うのですが…。

この人は、他にも「日本の大学を韓国人が受けられるのはおかしい」と言わんばかりのことまで言っています。
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>>いったい誰のための国立大学入試
>>原則的に日本国民のため


ここには三重の間違いが存在しています。

まず、この人は「センター試験の韓国語は韓国人のために行われている」という前提の話をしていますが、最初に紹介した通り、韓国語は日本の318の高校で開設され、1万人以上の履修者がいます。日本の高校生に履修者が多いのですから試験科目に入っていてもおかしいことはなく、外国語の試験が外国人優遇で行われているという発想がそもそも間違っています。

次に、「国立大学入試」について話していますが、センター試験は私大も使っている学校が多く、早稲田大学のようにセンター試験の成績だけで入学できる私立大学も存在します。

そして、国立大学入試が「原則的に日本国民のため」であるからなんだと言うのでしょう? 外国人優遇のために外国語試験が行われているのではないことは既に説明しましたし、もし「日本国民のための大学に外国人が入れるのはおかしい」とでも言いたいのであれば、大学だけでなく、在日外国人が公立小学校、公立中学校、公立高校に通うことも否定することになりますね。また、留学生も否定することになりますね。もちろん、日本人が海外の国公立学校に通うことも否定されることになりますね。

>>国立大学は日本国民の税金で入試も行われています

ここでも二重の間違いがあります。

まず、国立大学の運営費で税金が使われているのは全体の4割ほどです(参照)。国立大の入試に税金が使われているのは事実ですが、入試が税金で「行われている」というのは語弊があります。

次に、「『日本国民』の税金」と言っていますが、この人は在日外国人も日本で税金を払っていることを知らないのでしょうか? 税金の話をするならば、将来も日本に住んで日本で税金を払うであろう在日外国人を拒否する理由はないですし、逆に日本で税金を払わないであろう留学生を拒否することになりますね。

このように、全くの誤解で、屁理屈にもならないデタラメで批判する人もいるので、自分でしっかり事実を調べ、論理的に考えることが大切ですね。

余談ですが、「英語は20点も取れない人も受けるけれど、他の外国語は英語よりも点数が取れる自信がある人が受けるから平均点が高いのは当たり前」という指摘に対し、この人はこんなことまで言っています。
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>>データがどうかなんて知りません

データなしに一体何を論じるつもりなのでしょう…。

>>過去の経験上、センター試験の英語は全く勉強しない20点も取れない人が受験するなんてありえません。

ありえませんって、あんた。毎年センター試験の英語の最低点は0点でんがな!(公式HP参照) (というか、大抵の教科の最低点が0点だったりする) 

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↑平成26年度のデータ。ほとんどの教科で最低点は0点。
(※マーク式で0点となると、意図的に取っているんじゃないかと疑ってしまうが…)


「普通は高校の担任が受けさせません」なんて、意味不明なこと言う人初めて見ました。担任が試験を受けさせないなんて、生徒の試験を受ける権利を侵害する行為があったら大問題ですよ。仮にそういう教師がいたとしても、成績が悪い生徒が試験を受けない証明になどなり得ません。自分の非常に狭い「過去の経験」なんかでよくもまあ、こんな勝手なことを言えるものです。

データを見ないで、個人の勝手な思い込みや伝聞だけで話をすると、こんなわけのわからないことを言ってしまうのですね。やはり客観的なデータが何よりも大事です。

==なぜ「日本人差別」と騒ぐのか==

以上のように、センター試験に韓国語が入っていることを「在日特権」と呼ぶのは明らかに無理があります。

ところがネットではセンター試験に韓国語が入っていることを「在日特権」だとか「日本人差別」だとか呼ぶ声が絶えません。直近2年間の数字を見れば、フランス語やドイツ語を特権だと叫んでもおかしくないはずなのに。

ドイツ語やフランス語を無視して「在日特権だ」と騒ぐのは、「在日を叩きたい」という差別的な意識からでしょうが、それを「日本人差別」と呼ぶのはなぜなのでしょうか。

これは、「自分(日本人)は差別されている存在であってほしい」という願望があるからだと言えるでしょう

自分が今の境遇に満足していない場合、その理由を「自分は差別されているからだ」ということにして、「差別さえなければもっといい生活をしているはずなのに」と思うことができます。そういうことにすれば自尊心が保ちやすいですね。

逆に自分の境遇に満足していれば、「オレは差別されているのに、優遇されている在日よりもすごい」と思うことができます。やはり自尊心を保つことができますね。

名づけるなら、「差別されたい病」とでも言いましょうか。「オレが苦しんでいるのは在日のせいだ」ということにしたいわけですね。自分が差別されていることにすれば、自分の不遇も差別のせいにできて、同時に嫌いな対象を叩くことも出来て一挙両得です。

心理学で言うところの「セルフ・ハンディキャッピング」に近いと言えます。「セルフ・ハンディキャッピング」とは、テストの朝に「オレ、全然勉強してないよー」ってやつです。あえて勉強しないことで、悪い成績だった場合には「もし勉強していればいい成績とれたもんね」と言って自尊心が傷つかずに済み、いい成績だった場合は「勉強してないのにいい成績とれちゃったぜ。オレ天才」と言って自尊心を高めることができます。ここに人種差別的な意識が加わると「差別されたい病」になるのです。

実際に差別されているのと、ただの「差別されたい病」なのかの判断はとても難しいですが、論理的に見て行けば、少なくともセンター試験が「日本人差別」だと言っているのは、努力していない人がゆがんだ自己愛を満足させたいがゆえに言っているだけです。

この「差別されたい病」患者にならないためには、しっかりと自分でデータを確かめ、客観的に物事を判断することが大切ですね。

==愛国カルトに騙されないための今日の心得==
・客観的な統計データを確認しよう。

・出来る限り最新情報を確認しよう。
 (データが途中どまりのものは卑怯な印象操作かもしれない)

・比較対象を間違えないようにしよう。
 (英語と韓国語の平均点を比べるだけでもおかしいのに(本来韓国語と比べるべきは、中国語、フランス語、ドイツ語の3つ)、国語と韓国語を比べるような勘違いをする人を信頼してはいけない)

・「差別されたい病」「セルフ・ハンディキャッピング」の存在を自覚して、自分がそれにかかっていないか気をつけよう。

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