先日秋葉原で「安倍辞めろ!」「帰れ!」と叫んだ民衆に対し、安倍晋三が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言ったことを紹介しました(こちらの記事参照)。


あの抗議活動を「演説を妨害した」と言って批判するのはまだいいですが、一部の愛国カルトたちは、あれが「反日」活動に見えるようで、さらには「外国人」によるものだってことにしてしまうようです。「安倍辞めろ」ってヤジったら「反日」で「外国人」にされてしまうって、彼らの脳みそがどうなっているのか全く理解ができませんが、彼らの脳内ではそうなっているようです。

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「反日外国人」とか「国民かどうかも怪しい」とか、まあ、愛国カルト連中は相変わらずですね。自分が気にくわない人間は「反日外国人」にしてしまうのですから。もしも彼らが本当に「反日外国人」だったなら、都議選は自民党圧勝になってたはずじゃないんですかね?


さて、それはそうと、彼らは外国人には言論の自由がないと思っているらしいです。なんと
「外国人には『安倍辞めろ』って言う権利さえないの?」
と聞いたら、
「外国人にはありません」
と返信が来ましたから。


いやあ、驚きました。一体いつから日本では外国人にそんな発言権さえなくなったのでしょう。まるで北朝鮮か中国かのようですね。


もちろん、そんなことはなく、外国人が「安倍辞めろ」と叫んだって、何の問題もありません。彼らにはそのように発言する権利があります。今回は、そこを見ていきましょう。



・「参政権」の有無は発言の自由と関係ない

まず、このパルプンテ (@gVvRn4akKqJoI1D)という人物は、外国人には「参政権がないから」、「安倍辞めろ」と言う権利がない、と述べています。


もちろん、小中学生レベルの社会科が身についていれば、そんなことがデマであることは言うまでもないでしょう。参政権については、『ブリタニカ国際大百科事典』にこのように説明があります。

参政権

国民が政治に参与する権利選挙権が代表的である。公の意思の決定に参加する決定権的参政権と,公の機関に自己の要望を述べる請願権とがある。決定権的参政権には,直接的なものと,間接的なものがある。直接的なものには公職への就任あるいは国家意思決定のための投票 (→人民投票 ) への参加がある。他方,間接的なものには国家意思決定者の選任に参与するもの,選挙における投票と公務員に対するリコールの請求,リコールの決定投票への参加がある。これらの決定権的参政権は国籍を有する者にのみ与えられる国家公民権でもある。その点,請願権は,民意を国政に反映させる手段という意味で参政権とされるが,国家所属性とは無縁と考えられ,外国人にも認められる。民主政治の発達に伴い漸次拡充されてきた参政権は,国家からの自由 (自由権) と区別されるが,その機能において後者を確保するものである。

コトバンク

参政権には「決定的参政権」と「請願権」の2つがあり、外国人に禁止されているのは「決定的参政権」の方です。「決定的参政権」には、選挙権・被選挙権・国民投票の権利・公職への就任などの他、公務員に対するリコールの請求や、リコールの決定投票への参加があります。


街頭で「安倍辞めろ!」と叫ぶことは、これらのいずれにも当てはまらないことは言うまでもなく、「外国人には参政権がないから、『安倍辞めろ!』と言う権利はない」というのは、小中学校レベルの社会科が身についていれば言うわけがない妄言だと言えます。


なお、勘違いされる人がいないように言っておきますが、「公務員のリコール」とは、公務員を国民や地域住民の意思で罷免することであり、「安倍辞めろ!」と、総理大臣に辞任を求めることは「公務員に対するリコール」を請求したことにはなりません。



・一般人の行為は「内政干渉」ではない

外国人が政治的発言をすると、すぐに「内政干渉だ」と言う人がいます。このパルプンテ (@gVvRn4akKqJoI1D)という人物も多分に漏れず、外国人が「安倍辞めろ!」と言うことは「内政干渉」だと言っています。さらに、日本人が「習近平辞めろ」とか「トランプ辞めろ」とか言うのも、内政干渉だからやってはいけないらしいです。


もちろん、これも完全な大嘘です。嘘というより、「内政干渉」が何かを知らないのでしょう。辞書で「内政干渉」を引きさえすれば、こんな変なことは言わないで済みます。


他国の政治外交に介入して、その国の主権束縛・侵害すること。
(デジタル大辞泉)

ある国家他国の行動に強制的に介入して,ある事態維持または変更しようとする行為軍事力行使通商制限禁止,外交関係の断絶ゲリラへの援助など干渉形態はさまざまである。
(マイペディア)

ある国の国内管轄事項に対し,他国が権限を侵犯して強制的に介入すること。干渉の形態はさまざまだが,一般に,軍事力の行使や軍事力による威嚇,通商・金融の制限や禁止,外交関係の断絶,賄賂などによる政治的工作,ゲリラへの援助,政府転覆などは内政干渉になるとされる。他方,単純な説得や勧告は内政干渉とはならない。そもそも,いかなる独立国も自己の主権保持をめざす以上,他国の内政,外交に干渉すべきではないのであって,国家は他国の管轄事項に対して広く〈不干渉の義務〉を有するとされる。
(世界大百科事典)

他国が、ある国の内政問題に強制的に介入し、主権を侵害すること。
(大辞林)


『マイペディア』『世界大百科事典』『大辞林』は、いずれも「強制的に介入」することと書いてありますね。一般人がデモに参加するのは、内政問題に「強制的に介入」したとは言えませんので、内政干渉ではありません。

また、『マイペディア』には「国家が」とも書いてありますので、この点からも、一般人のデモ参加が「内政干渉」でないことは明白ですね。


『デジタル大辞泉』には「国家が」とか「強制的に」という説明がありませんが、他国の政治・外交に「介入」にして、その国の主権を「束縛」・「侵害」すること、とあります。一般人が首相に向かって「安倍辞めろ!」と叫んでも、主権の「束縛・侵害」に当たるわけがありませんね。


外国人であっても、一般人が「安倍辞めろ!」と叫ぶだけの行為が「内政干渉」でないことは、辞書を引くことさえできれば、誰でもすぐにわかることです。


もちろん、日本人がアメリカに行って「トランプ辞めろ!」と叫んでも、何の問題もありません。そんなことで「内政干渉だ!」なんて言うバカはいないでしょう。


もしもこんなことが内政干渉に当たるのなら、米国で日本人が銃規制を求める歎願運動なんてしたら、ウルトラスーパー内政干渉になってしまいますね。実際には、1992年に米国で射殺された日本人留学生の両親が、米国で銃規制の歎願運動を起こしており、200万人の署名を集め、クリントン大統領とも面会しています(時事通信参照)。もしもこれが内政干渉ならば、大統領が会ってくれるわけありませんね。



・「外国人のデモ参加は違法」というデマ


こういう話題だと、桜井誠という差別主義者が当然のようにデマを吐きます。彼は、「外国人の政治活動は禁止」であり、「朝鮮人が沖縄問題で記者会見」すると、「違法の疑いが極めて強い」と言っています。もちろん桜井の無知ゆえのデマです。

作家・経済評論家を名乗っている渡邊哲也氏も、「外国人は政治的デモや集会への参加」もできないと言い、さらにそのような行為が「内政干渉」だと言います。「内政干渉」に当たらないことは上でやったばかりなので、渡辺氏は辞書を引くという行為を学校で教わらなかったのでしょう。


彼らの主張は「マクリーン判決」というのがもとになっているのですが、彼らはこれを読み間違えているわけです。


外国人のマクリーン氏は、1969年、「べ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)のデモに参加しました。また、入国管理事務所に届け出ることなく勤務先を移し、この2つを理由に、在留期間更新申請が却下されました。


マクリーン氏はこれを不服とし提訴。最終的な判決は以下のようなものでした。


争点
    1. 外国人に在留する権利はあるか。
    2. 外国人に政治活動の自由はあるか。
判決
    1. 外国人の基本的人権は在留制度の枠内で保障されるにすぎないので、在留期間中の合憲・合法の行為を理由として、法務大臣は在留更新不許可処分を行うことができる。
    2. 外国人の政治活動の自由はわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き保障される

簡単にまとめますと、

「法務大臣は広い裁量を有していて、在留中の政治活動を理由に在留許可更新を拒否しても違反ではない」

という判決です。


ここで勘違いしてはいけないのは、これは
「外国人の政治活動を理由に外国人の在留許可更新を取り消すことは違法ではない」
という判決であり、
「外国人の政治活動は違法」
という判決ではない、という点です。



以前、外国人の生活保護について、
「外国人に生活保護を与えなくても違憲ではない」
という判決を
「外国人に生活保護を与えるのは違憲」
と読み間違えた知能の足りない人たちがネットには大勢わきましたが、それと同じ構図ですね(外国人生活保護については、詳しくはこちら)。


↓「外国人の生活保護は違憲」とデマを吐く元自民党北海道議の小野寺まさる



これについては、政治発言も多い外国人タレントであるケント・ギルバート氏もこのように述べています。

 アパホテルが「南京大虐殺」などを否定する書籍を客室に置くことへの抗議デモが、東京・新宿で5日行われ、中華人民共和国(PRC)国籍の在日中国人らが参加した。
 ネット上では「デモなど、外国人の政治活動は違法」「逮捕して国外退去にすべきだ」などと書く人を見かける。
 もし、米国人である私が、今回のデモ隊の祖国であるPRCで「中国共産党の一党独裁体制を打倒しよう!」とデモをしたら国外退去になるか、刑務所行きだろう。PRCでは外国人に限らず、言論の自由や政治活動の自由が一切ないからだ。
 しかし、民主主義国家である日本で、私が「日本国憲法9条2項を削除しよう!」とデモをしても、国外退去や刑務所行きになる心配はない。「外国人だから」という理由で、言論の自由の一部であるデモなどの政治活動の自由を一切認めないなら、その国は民主主義国家とは呼べない。

(略)

 それがなぜかネット上では「外国人の政治活動は違法」というデマにすり替わる。各個人に高度なメディアリテラシー(=メディアの情報を見極める能力)が要求される時代である

zakzak


私はケント・ギルバート氏の政治主張とは真っ向対立する人間ですが、この点に関しては、かれの指摘は正しいです。もしも街頭で「安倍辞めろ!」と叫ぶことさえ違法であるならば、ケント・ギルバートやフィフィやデーブ・スペクターなどはとっくに逮捕なり強制送還なりになってしまっていることでしょう。


秋葉原で「安倍辞めろ!」と叫んでいた人たちに対して、「選挙妨害だ」と言うのなら、賛成はしませんが理解はできます。しかし、彼らが「反日外国人だ」と言うのはただの妄想でしかありませんし、中に外国人がいたとしても、外国人には「安倍辞めろ!」という権利さえないというのは、どこの独裁国家かと思わされます。


このようなデマに騙されることなく、外国人の政治活動についても、事実に即して考えたいものです。


まとめ
・外国人の政治デモ参加は禁止されていない。
(ただし、それを理由に在留許可が降りなくても違法ではない)

・一般外国人がデモしようが署名運動しようが、内政干渉ではない。


この程度のことは、辞書を引く程度の知性と行動力があればわかることですので、騙されないようにしたいものです。


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