<ざっくり言うと>
  • アインシュタインが「あらゆる国の歴史を超越した最も尊い日本が世界の盟主になるべき」と発言したというのはデマ。
  • 「偉人の〇〇氏が××という発言をした」という手のもので、初出がわからないものについては、鵜呑みにしないようにしよう。
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先日、このブログにこんな書き込みが来ました。

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「あらゆる国の歴史を超越した、世界で最も古くかつ尊い家柄」とか「アジアの高峰日本」とか「我々は神に感謝する。神が我々人類に日本という国を作っておいてくれたことを」とか書いてあるので、最初、オウムみたいなヤバイ宗教か何かかと思いました。(「あらゆる国の歴史を超越」ってどういう意味だ?) しかし、これ、「アインシュタインの言葉」として広まってるものだったんですね。


アインシュタインは来日した際に大変な歓迎を受けたために、親日家になったと言われていますが、それでもアインシュタインという人物のことを少しでも知っていれば、彼がこんなことを言うタイプの人ではないことは直感的にわかります。彼は世界連邦政府という構想を持っていた人間であり、一つの国を他の国よりも上位において「世界の盟主に!」などと言うタイプの人間では全くありません。アインシュタイン研究者の板垣良一・東海大教授も、「アインシュタインの言葉ではないと断言できる」と述べています


というか、「あらゆる国の歴史を超越した、世界で最も古くかつ尊い家柄」なんて、そんなことを言う外国人が本当にいるかどうか、怪しいと思ってくれよ…。自分の国を差し置いて、「日本が最も尊い」「あらゆる国の歴史を超越している」って言うって、どんな卑屈な人間だよ…。


で、調べてみたら、あっさりネタがわかり、予想通りデマでした。詳しいことがWikipediaにまで掲載されているので、これを「アインシュタインの言葉だ!」とか言ってる人は、アインシュタインのことも知らないうえに、ネットで検索するようなことさえしないのでしょう。


東京大学の中澤英雄教授がこの問題を詳しく研究しており、その内容はこちらの魚拓で確認することができます。


まず、この言葉がアインシュタインのものでないことは確実です。中沢教授によれば、アインシュタインの発言の中に類似するものは一つも存在せず、この発言の初出と思われるものは、田中智学という人物が1928年に著した『日本とは如何なる国ぞ』という本の中で、シュタイン博士の発言として紹介されているものだということです。戦後に「シュタイン」の言葉が「アインシュタイン」の言葉として間違って引用され広まったらしいです。この田中智学という人物は日蓮宗の宗教家であり、「八紘一宇」という言葉の創始者として知られています。


じゃあ、本当にシュタインがこのような発言をしたのかというと、それも根拠がありません。中沢教授がシュタインの講義録などを調べても該当する発言は発見できず、これがシュタインの言葉だとする根拠は、「田中智学が自書の中でそう言っている」以上のものはないのです。


中沢教授によれば、どうやら、「日本が世界の盟主になる」などという発想はシュタインのものではなく、田中智学自身のものであったというのが真相のようです。田中智学は「八紘一宇」という言葉の創始者であり、「日本が世界の盟主となる」という発想は、まさに田中智学の思想と一致するわけです。この「アインシュタインの言葉」を読んだ時、「なんだこの宗教じみたものは」と思いましたが、田中は宗教家だったので、道理だったわけですね。


結局、この「アインシュタインの言葉」とされるものは、アインシュタインのものではなく、それどころか外国人のものでさえなく、日本人の田中智学が、自分の発言に箔をつけるために「シュタインの言葉」ということにした可能性が高いのです。最近「外国から見たNIPPON!」みたいな、外国人に「日本SUGEEE!」って言ってもらってホルホルするというテレビ番組が乱立していますが、昔から日本は「外国(主に欧米)が日本を絶賛!」みたいなネタが好きだったんでしょうね。


基本的に、伝言ゲームで伝わってきた「海外の偉人の〇〇氏がこんな発言をしていた!」なんてものは鵜呑みにしないほうがいいです。死んだ人の発言を捏造するなど非常に簡単ですからね。


我々は中沢教授のように自分で詳細を調べることはできないので、とりあえず私は、真偽を確かめる方法の一つとして、外国人の発言については、英語を調べるということをしています。


さすがにドイツ語だとかヒンディー語だとかインドネシア語だとかの原文を探すことはできませんが、もしもその発言が本物であるなら、英語に訳されている可能性が高い。もしも英語でも同じ情報が出てくれば、少なくとも「日本でのみ知られている、日本で捏造された言葉」ではない可能性が高くなります。一方、英語で一切類似情報が出てこなければ、「怪しいな」と思えるわけです。


例えば今回であれば、「Einstein Japan world history Emperor war Asia civilization」あたりの単語で検索します。それで類似情報が一切見つからない場合、日本でのみ知られている、日本で捏造された言葉である可能性が出てきますので、鵜呑みにすることは避けた方がいいです。


いずれにしろ、初出が確認できない「この偉人がこんなことを言っていた!」という情報を鵜呑みにすることは避けましょう。

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