<ざっくり言うと>
  • 朝鮮人虐殺否定論はデマ
  • 「当時の新聞に朝鮮人暴動が載ってるから、朝鮮人暴動は事実」はデマ。内務省の『大正震災志』で否定されている。
  • 警察の記録でも、朝鮮人の暴動・放火・投毒の存在は否定されている。
  • 当時の記録では、起訴に至った事件だけで、233人の朝鮮人が虐殺されたことが確認できる。起訴に至らなかった事件を含めれば、被害ははるかに大きいと推測できる。
  • ヘイトデマは人の命まで奪うことがあるということを、我々は忘れてはならない。
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震災後の自警団による朝鮮人虐殺の現場とされる写真

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本日9月1日は関東大震災が起きた日です。関東大震災での朝鮮人に対するデマが流れ、それにより朝鮮人虐殺が起きたことは教科書にも載っているほど有名な事実ですが、近年インターネット上で、「朝鮮人が暴動を起こしたのは事実だ」とか「虐殺などなかった」という人が出てきています。これまで3回にわたり記事にしていますが、防災の日に改めて記事としてまとめます。





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「当時の新聞記事に書いてあるから事実」というデマ


関東大震災時の朝鮮人虐殺の原因は、朝鮮人が井戸に毒を流したとか、暴動を起こしたとかのデマが流れたことですが、「当時の新聞に書いてあるからデマじゃない」と言う人がいます。

しかし、当時の新聞は全く信頼できません。何故なら、当時の新聞にはこんな記事まで載る状況だったからです。

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参照
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参照

伊豆大島が沈没したり、名古屋まで全滅したりと、大誤報が流れました。これだけではなく、震災の3年後(1926年)に内務省が発行した『大正震災志』には、誤報記事が数多く紹介されていますので、その一部を引用します。
  • 品川は海嘯(津波)によって全滅(福岡日々新聞)
  • 宮城も尚焼けつつあり(大阪毎日新聞)
  • 九月一日午前六時富士山爆発(台湾日々新聞)
  • 小笠原伊豆諸島は(略)海中に没し全ての島はなかった(岩手新聞)
  • 皇居を一時京都に移すことに決定す(樺太夕刊)
  • 今回の大地震は秩父連山の爆破によるもの(土陽新聞)
  • 在京各宮殿下北海道へ避難。軍艦に召されて(樺太夕刊)
  • 東京駅も全焼(樺太夕刊)
なんと、津波で品川が全滅し、宮城までやられ、富士山が爆発し、伊豆諸島が全て沈み、皇居は一時京都に移していたのです。当時の報道の混乱ぶりが見て取れます。


テレビとネットと携帯電話に慣れた現代人には想像しづらいかもしれませんが、当時はまだラジオ放送さえ始まっていない時代で、テレビですぐ映像で状況がわかる現在とは全く異なります。ヘリコプターで空撮したり現地入りしたりすることもできないのです。『大正震災志』には以下のような記述があります。
交通通信がすべて途絶した当時であるから、東京横浜市民さえ、眼前の惨害より他の一切は全く知らなかった。まして他地方の人達はただただ張膽駭目するのみで、あせりにあせってもその被害状況をつまびらかにし得なかったのである。
このように、新聞報道が全く信頼できない状況だったのです。


そして、『大正震災志』には、当時の新聞が流した誤報として、朝鮮人の暴動も挙げられています。
  • 麻布連隊一個小隊は横浜方面より隊伍を組み進行してきた四百名の鮮人と衝突し激戦の結果全滅(伊予新聞)
  • 数百の不逞鮮人隊伍を組みて蜂起暴戻(伊勢新聞)
  • 鮮人二千御殿場襲撃(樺太夕刊)
例えばネトウヨさんが良く引用するこの新聞画像↓ですが(上で紹介したツイートでも、この記事を引用していますね)、『大正震災志』でデマとして挙げられている「麻布小隊が400人の朝鮮人と衝突して全滅」と一致しています。

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これは内務省がデマの例として『大正震災志』の中で挙げているほど、確実にデマなわけです。


こんなのを今頃貼り付けて「朝鮮人暴動は事実」などと言っているネトウヨさんたちの情弱ぶりがわかりますね。当時の新聞報道は、まるで信頼できないものだったのです。


それにしても、普段「マスゴミがー!」って言ってるような人たちが、震災の大混乱当時の新聞報道の都合のいい記事は鵜呑みにするのは何なんだ…。結局「朝鮮人がー!」とか言ってる連中は、判断基準が自分たちに都合がいいか悪いかなんですね。



警察も「朝鮮人暴動はない」と認定している


当時の新聞記事の信憑性がないことは上記の通りですが、警察の記録などはどうなのでしょうか。


内閣府のHPには中央防災会議による「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」というものが掲載されています。その報告書に、当時の朝鮮人殺害についての記述があり、このように書かれています。
 民間人による殺傷行動についての官庁資料で最も網羅的なものは、震災直後に内務大臣を務めた後藤新平の文書中に残る「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」(略) である。これは司法省が作成したもので、(略)司法省としての見解をまとめたものと思われる。

 この資料によれば、朝鮮人による殺傷事件は殺人2件、傷害3件が記録されているが、すべて被疑者不詳であり、殺人に関しては被害者も不詳である。このため、起訴には至らなかったと考えられる。流言にあった蜂起、放火、投毒等については、「一定の計画の下に脈絡ある非行を為したる事跡を認め難し」と否定している。検察事務統一のため、9月11日に臨時震災救護 事務局警備部で開催された司法省刑事局長主宰の司法委員会会同で、朝鮮人の「不逞行為に就ても厳正なる捜査検察を行ふこと」が決議され、翌日各主務長官の承認を得て実施されている (「関東戒厳司令部詳報」)。この方針に従って調査したものの、上述の程度にしか確認できなかったということである。
当時の司法省資料でも、朝鮮人による殺人事件は起訴に至らなかった2件しかなく、蜂起・放火・投毒は否定されています。


新聞報道が信憑性がないというだけでなく、警察の公的な記録でも、朝鮮人による暴動等があったことは否定されているのです。


以上、「朝鮮人による暴動があった」というのは完全にデマだと言うことができます。



「虐殺はなかった」というデマ


「朝鮮人の暴動があったんだ」デマの他に、虐殺そのものを否定するデマもあります。デマしか言わない井上太郎は、こんなことを言っています。
>>関東大震災当時、朝鮮人に対して日本では何も起きていません。
>>虐殺どころか襲撃もありません。



もちろんデマです。朝鮮人の暴動の記録が存在しない一方、朝鮮人に対する虐殺は確かに記録されています。


先ほどの中央防災会議による「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」第四章第二節には「殺傷事件の発生」という項目があり、当時朝鮮人に対する虐殺や襲撃があったことがはっきりと書かれています。
震災直後の殺傷事件で中心をなしたのは朝鮮人への迫害であった。

(略)

(司法省作成の調査書)に挙げられた朝鮮人殺傷事件は、「犯罪行為に因り殺傷せられたるものにして明確に 認め得べきもの」として起訴された事件だけであり、朝鮮人が受けた迫害としては一部分にと どまる。9月2日から6日までに発生した53件の事件で、合わせて朝鮮人233名を殺害し、42 名に創傷を負わせたことにより、11月15日現在、367名が起訴されていた。朝鮮人をめぐる流言 の中で、2日夜から被災地の焼け残り地域や周辺部にほぼくまなく町内、部落ごとの自警団が 組織され、通行人を尋問し、朝鮮人や怪しいと考えた者に暴行を加えた。

(略)

事件の発生件数は(9月)3日が最多であるが、4日から5日にかけて千葉県内で官憲に引き渡そうと朝鮮人を護送中のところを殺害した3件(死者54名、中山村若宮地先2件、船橋町九日市) と、4日から6日にかけての埼玉県と群馬県で警察官による護送中、あるいは警察署内に保護されている朝鮮人を襲撃して殺害した5件(死者約81名、本庄警察署、熊谷町、神保原町、寄 居警察署、藤岡警察署)でこの史料で判明する朝鮮人死者の半数以上を生じている。一度流言 が広がり、それを信じた人々が行動を起こすと、現場の警察官の説得でそれを止めることは困 難な例が多数あったことがわかる。

(略)

朝鮮人被殺害者数の全体について、朝鮮総督府の記録によれば、10月22日現在、内務省は「朝鮮人被殺人員」を約248名と把握していた。しかし、朝鮮総督府東京出張員はこれを前提に「内査したる見込数」として、東京約300、神奈川約180、埼玉166、栃木約30、群馬約40、千葉89、 茨城5、長野3の合計約813名を挙げている(大正12年12月朝鮮総督府警務局,「関東地方震災 ノ朝鮮ニ及ホシタル影響」,斉藤実文書,『関東大震災朝鮮人虐殺問題関係史料Ⅳ』影印)。内務 省の把握が部分的であることは、当時の植民地官僚の目にも明らかだったのである。
ご覧の通り、起訴に至った事件だけでも、233人の朝鮮人が殺されたことは記録から明白であり、そのうえ、なんと警察署を襲撃してまで朝鮮人を殺害しているのです。


殺害された人数については、起訴に至った事件だけで233名、震災から約1か月半後に内務省が把握したいた数が248名、朝鮮総督府が出した見込み数が813名、「在日本関東地方罹災朝鮮同胞慰問班」の調査だと6600名と、その数ははっきりしません。しかし、震災時に虐殺があったかなかったかという点で言えば、「あった」と断言できるのです。それも、なんと警察署を襲撃してまで朝鮮人を殺害するという驚くべき形での虐殺が。


また、朝鮮人と間違われて、日本人58名や、中国人3名も殺害されています。

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しかも、これらの数字は全て、犯人が捕まって起訴された事件についてのみの数字ですので、実際の被害はもっとずっと大きかったものと考えられます。


なぜ、井上太郎のように、関東大震災時、朝鮮人虐殺などなかったと言える人間がいるのか全く理解ができませんが、被害の人数には諸説あれど、最低でも233名の朝鮮人の虐殺があったことは確実だといえます。



今も繰り返されるヘイトデマ:ヘイトデマは命を奪う


今でも災害があるたびに「朝鮮人がー」とデマを流す奴がいます。




今回のコロナでも、「中国人のコロナ患者が関空から逃げてUSJに向かった」だの「感染者の6割が外国人」だの、外国人に向けたヘイトデマが流れました。





どうやら、災害などで不安になったとき、異質な存在を攻撃することで纏まりを得ようとする人が少なからずいるようです。


関東大震災の朝鮮人虐殺でもわかる通り、ヘイトデマは人の命を奪うことさえあります。このブログでは、これまで数多くのヘイトデマを取り上げてきましたが、それらのデマを拡散する人たちの多くは、深く考えず、事実かどうかを一切確認することなく、ただ自分に都合がいい情報、自分が気持ちよくなれる情報を短絡的に拡散していました。それは、人の命を奪うことさえあるのだと言うことを、我々は忘れてはなりません。


およそ100年前の関東大震災におけるデマによる朝鮮人虐殺の教訓を忘れず、我々はデマやヘイトを許してはならないのです。



追記:「全員追悼すればいいだけだろ」という欺瞞


朝鮮人虐殺については、このように言う人がいます。

もちろん、朝鮮人虐殺は「真偽不明の副次的な事件」などではなく、明白な事実ですし、震災被害者と、虐殺被害者は、別問題です。


虐殺被害者は、自然災害で死んだのではなく、人によって殺されたのです。人為的な殺人事件の被害者である虐殺被害者を、自然災害による被害者である震災被害者と一緒に追悼してそれで済ませるということは、虐殺被害者を追悼しないのと同じことです。殺人と災害死を同一視してはいけません。


「#私は追悼します」のハッシュタグは、小池百合子が朝鮮人虐殺の被害者への追悼をしないことへの抗議です。これは虐殺被害者についての言及であり、自然災害の被害者に対する言及ではありません。にもかかわらず、「日本人の被災者には全く言及なし」「反差別を主張する界隈が真の差別主義者」と言うのは、的外れもいいところです。


次に、虐殺被害者を取り上げることは、他の被災者を軽視することに全くなりません。このハーヴィーという人は、米国でのBlack Lives Matterに対してAll Lives Matterと反論している人たちと同じ考え方でしょう。「黒人の命は大事」と言う人に対し、「全員の命が大事だろ。黒人だけ特別に言うな」という反論です。一見正しく聞こえますが、的外れもいいところです。


例えば、「熱帯雨林を守ろう」と言ったとき、熱帯雨林以外を守らなくていいと言ったことになりますか?


熱帯雨林が危機的な状況にあるから「熱帯雨林を守ろう」と言っているのであって、他の森を守らなくていいと言っているわけではありません。


黒人の命が軽視されているから「黒人の命は大事だ」と言っているのであり、黒人以外の命を軽視していることにはなりえません。


このような欺瞞に騙されてはなりません。

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