<ざっくり言うと>
  • 学術会議に関するデマを集めてみました。
  • (10月23日18:55、「『北大の研究を軍事研究と決めつけて非難する声明を出した』はデマ」「自民党・長尾たかしによる責任転嫁」を追加)
  • (10月23日22:00、長谷川幸洋の「学術協会に逆らうと異端扱いされ科研費の恩恵にあずかれなくなる」というデマを追加)
  • (10月25日12:00、「飯塚幸三が委員長をだったという印象操作」を追加
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学術会議へのデマが止まりません。そもそも今回の問題は菅政権による任命拒否という問題であり、それは学術会議の在り方などとは別問題であって、そっちの問題を取り扱うのは論点ずらしに乗っかることになってしまうかもしれませんが、あまりにもデマが多すぎるので、忘れないように記録を残しておきたいと思います。


現在私が把握しているデマをまとめてみました。加えてほしいデマや、「この人も『発信者』に入れてくれ」という要望は、kuwabara_kazu@yahoo.co.jpまでお願いします。あと、ここに書いてあるものは、ファクトチェックをして私(桑原)がデマだと把握できているものであり、「ここに書いていない噂は事実」というわけではありませんので、誤解しないようにお願いします。ネットの匿名ユーザーが流している小さなデマも含めると、この比ではありません。

目次
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1.「学術会議は中国の『千人計画』に積極的に協力している」はデマ


デマ発信者:甘利明高橋洋一八幡和郎門田隆将アノニマスポストなど

このデマについては、以下の記事を参照してください。甘利は中国の「千人計画」に学術会議が「積極的に協力」としていたブログ記事を、「間接的に協力しているように映る」とこっそり書き換えていました




また、嘉悦大学教授の高橋洋一もこのデマをツイッターやブログで拡散しましたが、現在まで訂正や反省の言葉はありません。この高橋洋一は、菅義偉によって内閣官房参与に任命されました。

↓高橋洋一がどんな人物かは、こちらの記事をどうぞ。


そもそも「千人計画に参加」=「軍事研究に協力」ではありません。


 

毎日新聞の記事にもありますが、普通に考えて、外国人を自国の軍事研究に関わらせやしませんよね。それこそ自ら軍事情報を他国にバラすことになってしまいます。

2.「学術会議の覚書により、各大学が中国科学技術協会と共同ユニットを開催している」はデマ


デマ発信者:アノニマスポストなど

有名デマサイトである「アノニマスポスト」が記事にしてばらまきました。実際には覚書に基づいた活動実績はなく、内閣府も活動実績がないこと認めています(参照)。




それに、活動実績があったとしても、中国に軍事協力していることにはならないでしょう。BuzzFeed Newsのファクトチェックを引用しますと、
 当時学術会議の会長だった大西隆・東京大名誉教授はBuzzFeed Newsの取材に対し、覚書の要請は中国側からあったことを明らかにし、「拒むほど強い理由もない」ことに加え、「善隣友好」の意味合いを持って結んだものの、結果として実効性を伴わないものになった、としている。
 批判があがっていることについては、「日中友好条約があり、国同士も友好関係にある。そのなかで、様々な団体が先方と友好関係を結ぶのは、なんらおかしくないのではないでしょうか。財界や、たとえば自民党も中国側と交流しているように、学術会議も国の機関として覚書を結びました」と振り返る。
 また、「内容も出版物の交換や会議、セミナーなどによる交流などで、これに関連して、日本の情報が流出するということもないでしょう。中国のために軍事的研究をしようというのなら問題だが、そもそも学術会議は研究機関ではありませんし、そういうことを奨励したこともありません」とも語った。
とのことです。



3.「学術会議に入ると学士院に入れて生涯年金が250万円もらえる」はデマ


デマ発言者:長島昭久(自民党)、平井文夫(フジテレビ)、門田隆将加藤清隆上山信一など

自民党の長島昭久がツイートし、それを鵜呑みにしたのか、このブログでも取り上げたことがあるフジテレビ上席解説委員・平井文夫が『バイキングMore』の番組内で拡散したデマです。





平井文夫は、10月25日現在、未だにこれについて一切謝罪していません。


自民党の長尾たかしは、この平井文夫のデマを大絶賛。このブログでもこれまで繰り返し長尾のデマを紹介してきましたが、彼がいかに事実を重視しない人間であるか、またも証明されました。

長尾たかしと平井文夫は立命館の面汚しになってしまってしまっています。

4.「英米のアカデミーには税金が投入されていない」はデマ


デマ発信者:橋下徹など

「税金が使われているなら国に従うのが当然」という発想はソ連や中国のような国のものだと思いますが、今回の問題では、そのような発想の人が自民党からも支持者からも多数見受けられました。


そんな中、橋下徹は「英米のアカデミーには税金が使われていない」と発言しましたが、もちろんデマです。





米国の「全米科学アカデミー」には200億円近い税金が投入されているし、英国の「英国王立協会」にも60億円以上の税金が投入されています。ドイツの科学アカデミーも9000万ユーロ(約110億円)の公費が投入されており、日本の10億円に比べると圧倒的です。

5.「海外のアカデミーはみんな民間」はデマ


発信者:平井文夫など


平井文夫は前述の『バイキングmore』の番組内で、なぜか「欧米は全部民間。日本だけが税金でやっている」などと言い、ツイッターでも「早く民間組織にしてほしい」などと言ってましたが、もちろんデマです。


世界には数多くの国立アカデミーが存在します。



こちらの記事によれば、国立のアカデミーがあるのは世界100か国を超えるといいます。平井文夫は、どうやら「科学アカデミー」「国立」でググることさえしなかったようです。

6.「任命拒否された6人は実績がほとんどない」はデマ


デマ発信者:理系猿、上念司など

最初にこのデマを発信したのは「理系猿」というツイッターの匿名アカウントのようです。匿名アカウントではありますが、使っているアイコンなどから、猿倉信彦という大阪大学の教授だと言われています(参照)。この発言がデマだと指摘された後、アカウントはなくなりました


そして、それをさらに広めたのが、このブログで20回以上取り上げてきた上念司です。


ネットデマ番組『虎ノ門ニュース』において、上念司は「6人を学術評価ツール『スコーパス』で調べたら全員低評価で、国際的にはとても学者とは言えない」と発言。しかし、『スコーパス』は英語論文中心で、日本語論文をほとんど収録していないのが原因でした。



ちなみに、日本の論文検索サイトにCiNiiというのがありまして、そちらで今回任命されなかった6人の名前を検索すると、論文を数多く見つけることができます。例えば、加藤陽子氏の名前を検索すると、477件ヒットします。



基本的に、上念司の発言は信頼しないのが賢明でしょう。余談ですが、これまでこのブログで取り上げた上念のデマの中で、私が個人的に最も面白かったのは、こちらの「共産党が市価2万円のツアーを1万円で開催している」というデマです。



電車代とバス代を間違えていたり、個人客と団体客の値段を間違えていたり、さらには弁当の値段と弁同箱の値段を間違えていたりと、間違え方がかなり壮絶でした。上念司がどういう人間か、よくわかると思います。


なお、ファクトチェックされてデマが指摘された上念司。何ら反省することなく、こんなことを言っていました。何言ってるか私には理解できないんですが、理解できる人いますか?


==追記==

これについて、「英語論文じゃないとだめだ」と言ってる人がいるようだが、そのような人は無知だと言うほかはない。

たしかに、科学分野においては、日本人であっても英語論文を書くのがスタンダードになっていると言って過言ではないだろうが、文系分野においては日本語論文はまだまだ多い。今回任命拒否された6人は、行政法、刑法、キリスト教学、憲法、政治、日本近代史が専門であり、みな文系の学者である。日本人に向けて論文や本を執筆する際に、日本語で書くことはむしろ当然のことだ。

「英語論文じゃないとだめだ」と言っている人は、任命拒否された6人の専門分野が何かさえ確認していないのだろう。

7.「防衛大卒業生は、東大などが大学院受け入れを拒否」はデマ


デマ発信者:櫻井よしこ

櫻井よしこは、BSフジの番組内で「(日本学術会議は)防衛研究をさせないだけでなく、防衛大学卒業の学生が大学院に行きたいという時に、東大をはじめ各大学は『防衛大学から来た、防衛省の人間など入れない』と断っていた」と発言。しかし、それは事実に反していました。




BSフジも誤りを認め、キャスターが同番組内で「番組側で事実関係を調査したところ、国立大に入学した防衛大卒業生の存在、これが確認されましたので訂正させていただきます」と発言しました。櫻井よしこは「たしかに過去において自衛隊関係者がごく一部を除き国立大に入学出来ない時代が続いていました。しかし近年は自衛隊関係者の入学を認め始めました。その点を付け加えていませんでした」とコメント。


ちなみに、櫻井の最初のコメントは14600RT、32300の「いいね」がついていますが、訂正コメントはわずか451RT、913「いいね」です。
この拡散スピードの違いには愕然とするものがあります。


(なお、名古屋大、東京都立大などで自衛官の入学拒否をした事例があることは事実だが、「ごく一部を除き国立大学に入学できない時代が続いていた」が事実かどうかは未確認。また、櫻井が具体名を挙げた東京大学での入学拒否は探しても見つからないので、誤情報と思われる)

8.「学術会議幹部が北大に乗り込んで恫喝し研究を辞めさせた」はデマ


デマ発信者:奈良林直(国家基本問題研究所)、阿比留瑠比産経新聞)、長谷川幸洋、「もえるあじあ」、「デイリースポーツ」、「政治知新」など

「国家基本問題研究所」というところが流したデマ。名前を聞くとまるで公的な組織のように勘違いしそうですが、実態は櫻井よしこが作った右翼サークルと言っていいでしょう。


その「国家基本問題研究所」の奈良林直という男が、日本学術会議の幹部が「北大総長室に押しかけ研究を辞退させた」というデマを流し、「学術会議こそ学問の自由を侵害している」とデマを流しました。しかし、そんな事実は存在しませんでした。



9.「学術会議が北大の研究を軍事研究と決めつけて非難する声明を出し、圧力をかけて有用な研究をやめさせた」はデマ


デマ発信者:奈良林直(国家基本問題研究所)、阿比留瑠比産経新聞)、長谷川幸洋、「もえるあじあ」、「デイリースポーツ」、「政治知新」など


上記と同じ文章の中で、奈良林直は北大が防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募し行った研究を「『軍事研究』と決めつけ、2017年3月24日付の『軍事的安全保障研究に関する声明』で批判した」と発言。


阿比留瑠比や長谷川幸洋は、それを引用する形で「学術会議が学問の自由を侵害している」と批判。しかし、件の「軍事的安全保障研究に関わる声明」には、北大についての記述は一切ありません。実際の文は以下のようなものです。

 防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015 年度発足)では、将来の装備開発に つなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の 職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。学術の健全な発展という見地から、むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研 究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である。

「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と、制度の問題を指摘していますが、北大の研究を「軍事研究と決めつけて批判した」などという事実は一切存在していません。


また、奈良林は、「学術会議幹部が北大総長室に押しかけて研究を辞めさせた」というのがデマだと指摘されると、「事実上の圧力」で辞めさせたと、曖昧な表現に変更。しかし、これについても、BuzzFeedによれば、「北大の広報担当者は、防衛省からの資金辞退の経緯について、『北大としては2017年3月24日に出された声明を受け、2018年3月の更新のタイミングで声明を尊重し、研究の更新を行わなかった』と説明した。あくまで学内の自主的な判断」とのこと。



学術会議は人事や予算配分を握っているわけでもないのに、「軍事的安全保障研究に関わる声明」を出したことを「事実上の圧力」だなんて言うのは無理がありますし、元会長の大西隆によれば、学術会議が各大学に圧力をかけることはありえないし、そのような権限もないとのこと。


さらに、奈良林直が「辞退させられた」と言っている「微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らすM教授(流体力学)の研究」は、科研費で継続されています。防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度として研究費を受け取らなくなっただけです。学術会議がこの研究を軍事研究と決めつけて圧力をかけてやめさせたなんて事実はありません。

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北大HP

「軍事研究と決めつけて北大に圧力をかけて研究をやめさせた」という奈良林の記述を鵜呑みにした長谷川幸洋は、「燃費改善がいったい、どう軍事研究に結びつくのか。そんなことを言い出したら、自動車も作れなくなる」と学術会議を批判していますが、全くの的外れのデタラメです。


「学術会議が北大総長室の乗り込んできた」というのがデマだと判明した後も、「学術会議の誰が、どのように圧力をかけたのか」「北大側は誰が応対し、なぜ圧力に屈してしまったのか」などと言いだします。長谷川の頭の中では「学術会議が北大に圧力をかけて研究を止めさせた」というのが絶対的真実として固定化されてしまっているのです。


そして、驚いたことに、「『M教授が研究を辞退しないと、学術会議は北大の学者を学術会議の会員に推薦しないぞ』と脅したのではないか」と、完全な妄想で発言しています(参照)。もちろん、一切何の根拠もありません。

10.「学術会議は職務を果たしていない」はデマ


デマ発信者:下村博文(自民党)、有本香など

自民党の下村博文は、「政府に対する答申は2007年以降出されていない」「活動が見えていない。ちょっと色々な課題があるのではないかと我々は思っております」と発言。


有本香は、『夕刊フジ』の中で、「『勧告』『答申』が、この10年まったく行われていない」として、「10年間職務を果たさない集団」「そんな団体は、この際、解体すべきだ」と発言。


しかし、「答申」とは政府からの諮問を受けて検討し、出すものですので、政府からの諮問がなければ出しようがありません。2007年から答申が出ていないのは、政府が13年間学術会議に諮問していないからにすぎません。むしろ、政府の方が批判されるべきことでしょう。



また、2008年からの12年間で、学術会議は321の提言10の報告を提出しています。



そもそも政府が諮問していないのに「答申が出ていない」とする下村博文の発言は完全に間違っていますし、「10年間職務を果たさない集団」などという有本香の発言も完全に間違いです。

11. 「レジ袋有料化は学術会議が提言した」はデマ


デマ発信者:KAZUYA高橋洋一など


日本学術会議元会長の大西隆・東京大名誉教授が東京新聞に寄稿した記事に、「レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ」とあったことから広がったデマ。


学術会議が提言したのはプラスチックごみの削減であり、どのような手法で行うかまでは言っていません。レジ袋有料化という手段を作ったのは、あくまで安倍政権です。




「学術会議がレジ袋有料化を提言した」がデマだとBuzzfeedが報じたのが10月13日。毎日新聞が報じたのが10月14日。でも、1週間たっても、「レジ袋有料化を提言した学術会議はタヒねばいい」とか、デマに騙されて「内情が暴かれた」だの言って、学術会議批判をする人が後を絶ちません。デマというものは恐ろしいものです。

なお、これについて、「大西元会長が自分で吹聴していた。デマというのがサヨクのデマだ」という反論が起きています。

しかし、大西元会長が言っているのは、「学術会議の提言は政府の政策に生かされている」という話であり、学術会議が提言したのは「プラスチックごみの削減が必要」というところまで。そのために「レジ袋を有料化する」という政策を提言したわけではありません。


それにしても、レジ袋有料化に怒ってる人たちって、何にそんなに怒ってんでしょう? 別にレジ袋が禁止になったわけじゃなく、その場で買うことができます。そりゃあ、1枚1000円とか言われたら怒るのもわかりますが、1枚3円かそこらですので、普段は自分のバッグを使い、どうしても必要な時は3円出すというので、特に困ることはないと思うのですが。


そして何より、レジ袋のようなプラスチックごみは分解されず、海洋汚染などが深刻化しています。



「ビニール袋の量はプラスチックごみのほんの一部にすぎない」という主張もありますが、プラスチックごみを減らすというのは絶対必要なわけで、その意識改革の第一歩として、目に見える身近なレジ袋の削減から始めるというのは、決して悪くないと思うんですけどね。



12. 「学術会議はコロナ禍で沈黙していた」はデマ(追記あり)


デマ発信者:猪口邦子(自民党)

この人、元学術会議の会員なんですが、なんでこんなこと言うんでしょう?

これを Share News Japan などが拡散したんですが、まず、学術会議は、今年3月6日時点で、「新型コロナウイルス感染症対策に関するみなさまへのお願いと、今後の日本学術会議の対応」という声明を発表しています。


7月3日には「感染症の予防と制御を目指した常置組織の創設について」という提言を出し、
9月15日には「感染症対策と社会変革に向けた ICT 基盤強化とデジタル変革の推進」という提言を出しています。

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他にも
公開ワークショップ 「新型コロナウィルス禍の下での持続可能な発展のための教育の推進」
とか
学術フォーラム「コロナとの共生の時代における分析化学の果たす役割」
とか
公開シンポジウム「複合災害への備え- withコロナ時代を生きる」
とかもやっているんですが、なんで「沈黙していた」なんて言うんでしょう?


もしかしたら彼女は学術会議に何らかの期待をしていて、それがなされなかったから彼女からしたら「沈黙していた」ように見えるのかもしれませんが、彼女の発言をもとにに「何もしない税金泥棒」なんて非難が生まれてしまっているので、デマとして扱わせてもらいます。


==追記==



BuzzFeedにて、本人が「沈黙していたも同様だ」という発言をしています。やはり期待していた役目を果たしていないので「沈黙していたも同様」と述べているようです。併せてご紹介します。



13.「学術会議が科研費4兆円を再配分」はデマ


デマ発信者:渡邉哲也

このブログでも何度も取り上げてきた渡邉哲也が、『Front Japan桜』というネット番組内で、「学術会議のメンバーが中心となって科研費の再配分をやっている」「科研費ということになると4兆円とか、科研費がらみなんていうと6兆円とか」と発言。しかし、2004年度までは確かに科研費の採択を決める審査委員は学術会議の推薦に基づき決められていましたが、現在は学術会議が関与することはありません。



また、科研費の年間予算は2300億円ほどで、「4兆円」の20分の1ほどしかありません。


渡邉哲也はこれに対して、ツイッターで「年間4兆円なんて言っていない」「2004年度までは審査委員は学術会議の推薦に基づき決められていた」と反論しました。

しかし、これも嘘でした。


まず、渡邉哲也の現在形で話していました。さらに、「ここを廃止されると大きなダメージになるから必死に守ろうとしている」などと言っています。

もしも本当に2004年までの合算であるのならば、そう言っているはずですし、すでに学術会議は科研費の配分とは関係ないのですから、「科研費4兆円の配分に大きな影響力を持っている」から「必死に守ろうとしている」という渡邉の主張は筋が全く通らなくなってしまいます。


さらに、渡邉は学術会議と関係ないところでも、「科研費4兆円」という発言をしています。

このことから考えても、やはり科研費の年間予算を4兆円だと勘違いしていたとしか思えません。


また、1965年から2004年(平成16年)までの科研費を全て合計しても、1兆4500億円にしかなりません。

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(科研費の推移

この表に載っていない1965年より前の数字を合算しても、どう間違っても2兆円に届くことはないでしょう。したがって、「学術会議が科研費4兆円の配分に大きいな影響力を持っている」という渡邉の発言は、全く事実と異なります。


渡邉哲也がテキトーなことを言って、あとから言い訳にもなっていない言い訳をするのはいつものことです。↓具体例


14. 「学術会議に入ると年間4500万円もらえる」はデマ


デマ発信者:黒瀬深保守速報など

まず、結論から言いますと、「会員手当4500万円」は総額です。学術会議の会員は210人ですので、一人当たりの手当ては年間21万円です。多いどころか、むしろかなり安いと言うべきでしょう。


しかし、黒瀬深はどうやらこれを1人あたりだと勘違いしたらしく、「こりゃ選ばれなかったらゴネるわ。あれこれ尤もらしい理屈を並べておいて、結局は金なんだよね」と発言。

それを、保守速報がそれを引用して記事化。それに騙されたネットユーザーが大量発生しました。(『保守速報』は、間違いに気づいたのか、現在記事を削除)


一人当たりと210人の総額とを間違えて「特権」だの「既得権益」だの非難するなどひどいものです。


東京新聞によれば、「年度末には、手当や旅費支払いの一時凍結や受領辞退のお願いを会員に送っていた。節約のためネット会議も多用するほか、自腹で出張する会員も多いとのこと。



むしろ持ち出しにさえなることがあるというのに、どの辺が「既得権益」や「特権」なのでしょうか。

15.「新会員は現会員が指名できる」はデマ


デマ発信者:菅義偉など

よりによって、現職総理大臣が吐いたデマです。しかも、これを任命拒否の理由に挙げていました。


菅義偉は、10月5日の記者会見で「事実上、現会員が自分の後任を指名することも可能な仕組み」と述べ、新聞のインタビューでも「後任指名も可能な中、前例踏襲でいいか考えてきた」と述べ、現会員による後任指名が、今回の任命拒否の理由の一つであるという認識を示しています。


しかし、実際には210人の会員と2000人の連携会員がそれぞれ2人まで推薦し、分科会を経て、会長など16人で構成される選考委員会で決定します。最大で4000人以上もの人が推薦され、その中から105名が選ばれる仕組みですので、「後任指名」というのはできません。







仮にこの選考プロセスに問題があるのならば、その問題点を指摘し、それを改善すればよいのであり、今回の首相による任命拒否を正当化する理由にはなりえません。少なくとも、「指名できる」なんてデマで自己正当化するようではいけません。「前例打破」と言うのであれば、なおのこと「どうしてこの6人は学術会議にふさわしくないのか」という説明がなければ、改善のしようがありません。

16.「ワクチン研究が軍事研究とみなされているから日本のワクチン開発が進まない」はデマ


デマ発信者:須田慎一郎、DAPPIなど


須田慎一郎が『虎ノ門ニュース』で発言し、DAPPIがツイッターで拡散したデマです。

もちろん、ワクチン開発が軍事研究の一部とみなされるから開発できないなんて事実は全く存在しません。須田慎一郎は「日本のワクチン開発の話が全く聞こえてこない」「箸にも棒にも掛からない」なんて言っていますが、おそらく報道をろくに見ていないのでしょう。言うまでもなく、日本もワクチン開発を進めています。


例えば、バイオベンチャーであるアンジェスと大阪大学による新型コロナウイルス用のDNAワクチンの共同開発は2020年3月5日にスタートしています。3月の時点ですでに日本のワクチン開発は始まっています。



三重大学・京都大学発のベンチャー企業ユナイテッド・イミュニティ(三重県津市)が、京都大学、長崎大学の両大学と連携して、ナノ粒子型たんぱくワクチンの開発に乗り出した。



もちろん、東京大学、慶応大学、北里大学、東京医科歯科大学など複数の大学の共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」も、ワクチン開発を行っています。



須田慎一郎は「日本のワクチン開発の話が全く聞こえてこない」「箸にも棒にも掛からない」なんて言っていますが、それは須田が日本のワクチン開発の報道を全く見ていない無知なだけです。


もちろん、日本のワクチン開発は新型コロナウイルスだけの話ではなく、平時からHIVワクチンとかインフルエンザワクチンとか研究を続けています。



日本には日本ウイルス学会だって、日本ワクチン学会だってあります。もしも学術会議がウイルス研究やワクチン研究を生物化学兵器に関連する軍事研究だと言っているのなら、こんな学会自体存在できないでしょ。




したがって、軍事研究とみなされるからワクチン研究ができないという須田慎一郎の発言は完全なる虚偽です。彼は「日本 ワクチン」でググることもしなかったのでしょうか?


須田慎一郎は、国立大学協会会長も同様の意見を言っているかのように発言していますが、これも虚偽です。確かに国立大学協会会長で筑波大学学長である永田恭介氏は「防衛のための研究は軍事研究に当たらない」という見解の持ち主で、彼の専門はウイルス学です。


彼の主張は、攻撃のためではなく人を守るためのウイルス研究(ワクチン開発)が軍事研究に当たらないことを引き合いに出して、「防衛のための研究は軍事研究に当たらない」というものです。(毎日新聞参照) つまり、今現在も、ワクチン開発は軍事研究とはみなされていないのです。


どうやら須田慎一郎は、「ワクチン開発がいいんだから防衛研究もいいだろ」という主張を、「防衛研究ができないとワクチン開発までできない」という主張だと誤読したようです。彼は学術会議がワクチン開発を軍事研究扱いして禁じているかのように述べていますが、もちろんのこと、そんな事実は全く存在しません。

17.与党の責任を学術会議に転嫁する印象操作


デマ発信者:長尾たかし(自民党)

長尾は自身のブログの中で
「日本学術会議は中国人民解放軍傘下の大学留学生受け入れをどう認識しているのか。機微技術は海外にダダ漏れ、文系研究にはガイドラインを設けない。矛盾していませんか?」(参照
「中国からの留学生が日本の大学に学び、そこを経由して中国人民解放軍と直接関わりのある国防七校に留学」
「日本学術会議はこの深刻な現状に対して日本政府へ技術の流出防止を阻止するべきだと言う提言を行っていない」(参照
と学術会議を批判。(※「技術の流出防止を阻止」という間違った日本語はいったん置いておきます)


しかし、学術会議は留学生受け入れに関わる権限はなく、中国からの留学生受け入れを推進したのは自民党です。2008年に留学生30万人計画を立て、現在およそ13万の中国人留学生が日本で学んでいます。学術会議は「中国からの留学生を増やせ」なんて言っていません。自分たちで増やした留学生の問題の責任を学術会議に転嫁するのは、これこそ矛盾と言わざるを得ません。


また、もしも本当に「機微技術が海外にダダ漏れ」などという事実が存在し、長尾がその証拠をつかんでいるのならば、学術会議ではなく、自分で国会で議題に上げればいいだけのことです。彼は与党所属なのですから。なぜ責任を学術会議に転嫁するでしょう。「機微技術が海外にダダ漏れ」という主張の根拠もわかりません。


また、長尾が言う「国防七校」で検索しても、これで騒いでいるのは長尾たかし以外に見当たりません。長尾が言う「国防七校」とは、長尾によれば北京航空航天大学、北京理工大学、ハルビン工業大学、ハルビン工程大学、南京航空航天大学、南京理工大学、西北工業大学のことですが(長尾のfacebook参照)、もしもこれらの大学からの留学生が日本の安全保障上危機だというのならば、それに対処するのは学術会議の仕事ではなく政府与党の仕事でしょう。


さらに、長尾は「深刻な現状」があると言いますが、もしもそれが本当ならば、そのような状況を長年放置したのは政権与党である自民党の責任であると言わざるを得ません。自分たちが放置しているような問題でありながら、学術会議が提言を出していないと言って非難するのは、責任転嫁も甚だしいです。


長尾の主張は、自分で自分の宿題を放置しておきながら、「宿題をやれって言ってくれなかったお母さんが悪い!」と言う子供のようなものです。


『ハーバービジネスオンライン』は、この長尾の主張を、「とりあえずよく調べもせず学術会議の話に一丁噛みしてやろうという浅知恵が透けて見える、低レベルの印象操作」と一刀両断しています。



18.「学術会議の意向に逆らうと、学者の世界で異端扱いされ、会員になれないばかりか、研究の命である科研費の恩恵にも与れなくなってしまいかねない」はデマ


デマ発信者:長谷川幸洋

前述の「北大への圧力デマ」に関連し、長谷川幸洋が述べた全く根拠のない妄想です。どうやら長谷川幸洋の頭の中では、学術会議は学者を裏で操り暗躍するフリーメーソンみたいなことになってるみたいです。

↓長谷川幸洋の陰謀論を詰め込んだ『現代ビジネス』の記事


上述のとおり、長谷川は、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度から降りたことを、学術会議から圧力があったと決めつけ、「学術会議が『M教授が研究を辞退しないと、学術会議は北大の学者を学術会議の会員に推薦しないぞ』と北大を脅したのではないか」と、何の根拠もない発言をし、さらには「学術会議の意向に逆らうと、学者の世界で異端扱いされ、会員になれないばかりか、研究の命である科研費の恩恵にも与れなくなってしまいかねない」と学術会議を非難しました。


しかし、渡邉哲也のデマのところでも紹介したように、科研費は学術会議ではなく日本学術振興会の科研費審査委員が決めます。科研費の審査は、7千名以上に及ぶ審査委員のピアレビューにより行っています(参照)。また、科研費の審査方法や基準は、すべてHPで公開されています(参照)。学術会議の意向に逆らうと異端扱いされ、科研費がもらえなくなるなど、何の根拠もない長谷川の空想にすぎません。


むしろ、現在、冗談抜きで「政府与党の意向に逆らうと、学者の世界で異端扱いされ、会員になれないばかりか、研究の命である科研費の恩恵にも与れなくなってしまいかねない」という事態が現実になろうとしています。実際に、政府の意向に逆らったら、推薦を受けたのに総理に拒否された会員になれないという事態が起きています。与党議員である杉田水脈は科研費バッシングを繰り返しています。


長谷川幸洋は、まるで学術会議が学問の自由を侵す悪の組織であるかのように言っていますが、むしろ長谷川が批判・懸念している学問の自由を侵す行為そのものを、政府がやろうとしているのですから、長谷川が批判すべきは学術会議ではなく政府のはずです。学術会議を非難し政府を擁護する長谷川の主張は、矛盾を極めています。

19.「飯塚幸三が学術会議の委員長だった」と騒ぐ悪質な印象操作


デマ発信者:ツイッター速報、Share News Japanなど

『ツイッター速報』や『Share News Japan』など、いつものネトウヨまとめサイトが、池袋の暴走事故を引き起こした飯塚幸三が学術会議の委員長だったとして、「真っ黒」だの「疑惑の総合商社」だの「胡散臭い事や物がパズルみたいに繋がっていく」だの拡散しました。これにより、あたかも学術会議が悪の組織であるかのようなツイートをしている人が多数見受けられます。

このようなまとめサイトを鵜呑みにし、「何の研究者絵もない飯塚幸三が学術会議のメンバーだった」などと言って学術会議を批判する者が出る始末。
飯塚幸三が学術会議の「標準研究連絡委員会」というものの委員長をかつて務めていたことは事実ですが、飯塚幸三は、もともと計量学では日本のトップレベルの人物であり、専門国際度量衡委員会で日本人初の副委員長を務め、計量研究所所長、工業技術院長、クボタ取締役などを歴任した人物です。日本計量振興協会や計測自動制御学会では会長を務めていましたし、さらには2015年には瑞宝章を授与されています。


飯塚幸三が所属していたことが学術会議を非難する理由になるのであれば、専門国際度量衡委員会も、計量研究所も、工業技術院も、クボタも、通産省も同様に非難されねばなりません。また、勲章は有識者の意見をもとに推薦され、閣議に諮り、受章者が決定されます(参照)。第二次安倍内閣で飯塚幸三に瑞宝章を与えているのですから、安倍内閣も同様に避難対象になるはずでしょう。


飯塚幸三が学術会議の標準研究連絡委員会で委員長を務めていたのはおよそ20年も前ですし、飯塚は様々な研究所などで責任者を歴任し、瑞宝章まで受けています。事故を起こした後に飯塚幸三を委員長にしたのなら非難も当然でしょうが、飯塚幸三はその人格がどうあれ、研究者としては国際機関の副委員長を務めたり、国から瑞宝章を受けたりするほどの人物であり、事故を起こす20年も前に学術会議の委員会の委員長を務めていたことで学術会議を非難するのは、悪質な印象操作と言う他はありません。

デマに騙されて論点をずらされるなかれ 


そもそも今回の問題は、学術会議の任命を総理大臣が拒否することの妥当性です。そもそも立法趣旨から考えれば完全に違法であることに疑いをはさむ余地がありません。立法当時に「任命は形式的」だとはっきり国会答弁していたわけですからね。



ところが、任命拒否の問題から目をそらすために、学術会議そのものに対するバッシングが起こりました。しかし、ネットで見る学術会議批判のほとんどはデマだといってよいでしょう。


もう、ネットデマに騙されて、本来の問題から目をそらすのはやめにしましょう。


まずは任命拒否問題の違法性。違法でないというのならば、国民が納得する説明責任を果たさねばなりませんが、現在菅政権は国民への説明責任を完全放棄しています。説明せずに、この問題を終結させることは不可能でしょう。


全ては、菅政権が任命拒否の理由を説明してからです。説明しなければ、その妥当性を確認することもできません。説明できないのなら撤回すべきだし、ちゃんと理由があるのなら説明するべきです。


学術会議の在り方は、そのあとの問題です。私は、ここで取り上げたようた平井文夫だとか高橋洋一だとか有本香だとかとは違い、むしろ学術会議をもっと充実させていくべきだと思いますけどね。



だって、吉本興業にクールジャパンとか言って100億円出してるのに、予算年間10億円、会員一人当たりの手当てが年間20万円の学術会議がバッシングされるのって、どう見てもおかしいでしょ。



さらに、アベノマスクは総額507億円だそうです。



アベノマスクに学術会議50年分の予算をつぎ込んでおきながら学術会議批判っておかしいと思います。



追記:余談 


この記事に対し、こんなこと言ってる人がいました。

>>左翼が必死になっているね。どうやら核心をついたようだ。

デマを放置→「反論できない。俺たちの勝ち!」

デマに反論→「必死になってる。核心を突いた! 俺たちの勝ち!」


最強すぎる…。

結局彼らは事実かどうかじゃなくて、自分が信じたいかどうかだけだから、どっちに転んでも自分に都合のいいように解釈するんですね…。


そして、SNSのデマ情報を鵜呑みにして、「SNSのおかげで日本学術会議の正体が分かった」などと妄想をする…。

今ネットで見つかる学術会議に関する批判は、「アメリカ政府はフリーメーソンに支配されている」と同様の陰謀論になり果てています。

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