<ざっくり言うと>
  • 「ネバダ州で15万票が無効にされていた」というデマが、不正選挙の証拠として拡散中。
  • 実際には、この話はネバダ州クラーク郡の郡政委員選挙の話で、大統領選と関係ない上、15万票は無効にされていない。
  • クラーク郡の郡政委員選挙の選挙区Cにおいて、候補者2人に計15万3000票が投じられたが、候補者の差が僅か10票(全体の0.0065%)しかなかったため、選挙がやり直しになっただけのことである。
  • 不正集計でも不正選挙でもなく、大統領選と全く関係ない。
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↑デマサイト『News U.S.』などが拡散。実際には大統領選でもないし、不正集計でもないし、15万票が無効にされたわけでもない。

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こんな話が流れています。

なんと、ネバダで不正集計が発覚し、15万票が無効にされていたと! Wow!


ところが、情報源がデマと差別を扇動してきた『News U.S.』。サイトには大統領選が不正だったと妄信する人たちのコメントがあふれていますが、確認したら、やっぱりデマでした。


『News U.S』は↓このツイートをソースに、「15万票が無効にされた」としていました。

これを読めば、100人に100人が、大統領選において、ネバダ州で15万の不正投票があったと読むことでしょう。ところが、実際には不正投票もなければ、大統領選の話でさえないのです。

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1.大統領選ではなく郡政委員選挙


『News U.S.』が引用したツイートだとあたかも大統領選の不正投票の話に聞こえますが、原文は「County Commission race」と書いてありますね。Country Commissionとは「郡政委員」と訳され、郡(county)の政治を行う人たちです。この15万票云々は、だいとうりょうせんではなく、ネバダ州のClark郡で行われた郡政委員選挙の話です。


大統領選関係なし。この時点で大間違いですね。日本のネトウヨさん、英語分からないならデマ訳流さないでください。

2.15万3000票は不正投票ではなく僅差すぎたためのやり直し


次に、「不正集計が発覚」「15万3000票を無効化」と言われると、あたかももっと大きな母数の中から、不正があった15万3000票が無効とされたかのように思えますが、これも間違いです。たしかに、選挙がやり直しになったのは事実ですが、それは不正のためではなく、あまりに僅差すぎたためです。


こちらにNevada Currentというネバダ州のローカルニュースサイトがありますが、ここにClark郡で行われた郡政委員選挙の詳細が書かれています。


That race, for Clark County Commission District C, is between Democrat Ross Miller and Republican Stavros Anthony. Unofficial results have Miller winning by a mere 10 votes. Miller, a former secretary of state, received 76,586 votes. Anthony, a term-limited Las Vegas city councilman, received 76,576.
Clark郡の郡政委員会はA~Gの選挙区に分かれているようですが、そのうちのC選挙区(District C)において、民主党のRoss Miller氏と共和党のStavros Anthony氏が投票数が、それぞれ76586票76576票で、15万3000票とはこの2人の得票の合計なのです。


15万票も投じられたのに、なんと差はわずか10票。わずか0.0065%の差しかありませんでした。


そして、このC選挙区では、139票の discrepancy が見つかりました。この discrepancy とは、「不正」ではなく、投票者数と投票数の不一致のことです。投票の際に数えた投票者数と、実際の投票数の合計が合わなかったという意味です。その原因の多くは、投票所に入場したのに投票しないで帰った人がいたり、入場の際に数え損ねたりと言ったミスだそうです。


通常、この投票者数と投票数の不一致は候補者の得票数の差よりもずっと小さいため、勝敗に影響なしと考えられているわけですが、今回の場合、候補者の得票数の差が僅か10票しかなかったため、この139の数の不一致が選挙結果を左右する可能性があるため、選挙のやり直しが決まったのです。これが「15万3000票が無効にされた」の正体です。


投票者数と投票数の不一致(discrepancy)は、人間が数えている以上避けられません。15万3000票のうち、discrepancyはたった139で、割合で言えば僅か0.09%です。不正があったということにはなりません。


Clark郡では、2018年にも、候補者の差がたったの4票しかなかったためにやり直しになったことがあります。



今回Clark郡の郡政委員選挙でやり直しがあったのは事実ですが、それは不正投票のせいではなく、候補者の差が僅か10票(0.0065%)しかなかったからです。



3.トランプ自身がデマを拡散 


困ったことに、このデマを扇動しているのがトランプ本人なんですなあ…。

トランプはClark郡の群政委員選挙がやり直しになったのを large scale voter discrepancy(大規模な投票者数の不一致)と言っていますが、実際には上述の通り discrepancy は15万3000票のうち、139件。割合にした0.09%です。トランプはBig victoryと言って、この投票やり直しをあたかもネバダ州で不正があったかのような印象操作をしていますが、実際には不正など確認されていないのです。


大統領自身がこんなデマツイートするんですから、本当に困ったものです。なんでこんなデマ男を支持できるのか私にはよくわからないのですが、今回選挙の不正の根拠として挙がっているのは、どれもこれもこんな感じの嘘と曲解と伝言ゲームばかりです。


日本のネトウヨさんは、どういうわけかトランプを必死に支持して「不正があった」という幻想に乗っかっていますが、そろそろツイッターで流れてくるデマ話を鵜呑みにするのはやめましょうか。人間として恥ずかしい。

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