<今回のデマ>
  • 野党は対案を出さずに批判ばかりしている。
  • 野党は与党の逆張り批判ばっかりしている。
<事実>
  • 野党は多くの対案を提出しているし、対案以外の法案も提出している。
  • 成立法案の大半は全会一致に近い状態で採決されている。野党は逆張り批判をしているわけではない。
  • そもそも民主主義を成り立たせるために野党に求められる最も重要な仕事は、対案を提出することではなく、政府与党をチェックし、批判し、ダメ出しをすることである。
  • 間違っているものを間違っていると批判することは当たり前であり、絶対に必要なことである。大げさに言えば、野党は批判ばかりでも何の問題なく、「批判ばかりだ」という批判こそ間違っている。
  • 対案をいくら提出しようが民主主義が成立するかどうかには関係ないが、批判が無くなったら民主主義は崩壊する。批判こそ民主主義を成り立たせるための絶対必要条件である。


このブログにこんなコメントが来ました。

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>>(野党は)批判はするけど対案は出さない

もうこの言説に心底うんざりしているんですが、はっきり言わせてもらいます。


「野党は批判するけど対案は出さない」とか言ってる奴は、一人残らず、自分では何も調べず他人の言ったことを脳みそ停止して鵜呑みにしているだけの大バカ者です。


このバカな言説は、日本の民主主義を根本から破壊しかねない妄言であり、2重に間違っています。


1つは、「野党は対案を出している」という点。


もう1つは、「健全な民主主義を成り立たせるためには、対案ではなく批判こそ野党に求められる重要な仕事である」という点。


今回はそれを見てみましょう。



「野党は対案を出さない」は大嘘である


一体だれが言い始めたのか知りませんが、そもそも「野党は対案を出さない」は大嘘です。こんなの数秒調べれば確認できるはずなんですが、なんで確認しようとしないでどこぞの馬の骨が言ったことを鵜呑みにするんですかねえ?


例えば今年3月の政府の「薬機法等改正案」に対して、立憲民主党は
「オミクロン・感染症対策支援法案」
「『コロナかかりつけ医』法案」
「『日本版EUA』特定医薬品特別措置法案」

の3つを出しています。



4月、政府の侮辱罪厳罰化に対しても、「加害目的誹謗等罪」を新たに設けるという対案を出しています。



5月、政府の「こども家庭庁法案」に対し、「子ども総合基本法案」という対案を出しています。



このように、野党は対案を提出しています。


「野党は対案を出さない」とかいうのは何も調べないでその辺のどこのだれかわからないアホが言ってることを鵜呑みにしただけにすぎません。いい加減にしましょう。



野党は数多くの法案を提出している


上記のような直接的な政府案への「対案」だけでなく、野党は様々な法案を提出しています。


例えば今年6月、野党4党は消費税を当分の間5%に引き下げる法案(消費税減税野党共同法案)を4党合同で提出しました。



共産党は度重なる政治資金不正を是正するために、「企業・団体献金全面禁止法案」なんてのも提出しています。



他にも、「SDGs基本法案」



「多文化共生社会基本法案」など



与党への「対案」のみならず積極的に法案を数多く提出しています。



例えば立憲民主党の場合、一昨年秋の臨時国会で10本、昨年の通常国会で46本の法案を提出しており、そのうち23本が成立しています。



同国会で提出された法案は全部で184件。成立は94件でした。そのうち立憲民主党が提出したのは46本、成立23本ですので、国会の提出法案及び成立法案の約1/4を立憲民主党が出していることになります。



成立した法律の1/4を出してるのに、これでも「批判ばかりで対案を出さない」とか言うんですかね? どこに目をつけてるんでしょう?


「野党は批判ばかりで対案を出さない」とか言ってる人は、こういった事実を知らずに、自分では何も調べずに、どこぞの馬の骨が言ったことを脳みそ停止して鵜呑みにして拡散してるだけでしょ。こういう頭を使わずに「野党は批判ばかりで対案を出さない」とか言うバカを鵜呑みにしないで、ちゃんと自分で頭使って調べて考えましょう。



そもそも野党は批判ばかりで構わない


上で見たように、「野党は批判ばかりで対案を出さない」はデマですが、そもそも「野党は批判ばかり」という批判をしている人は、民主主義を根本から理解していません。


大げさな話、野党は批判ばかりで一向に構わないのです。


野党とは英語の opposition party のことですが、opposition とは「反対」「抵抗」という意味です。政府が好き勝手しないように反対する、抵抗する、チェックすることこそ、野党の最も重要な役割なのです。別に対案なんぞ一切提出しなくても、反対があれば民主主義というものは健全に働くのです。


政府の法案Aに対して、その矛盾点や不備を指摘し、批判する。


それで政府が修正案法案A’を出してきて、それが納得できるものであれば賛成して法案成立。


まだ納得いかなければ修正法案A''を出させる。


政府はもしも野党からの批判が納得いかなければ、自分たちの法案の正当性を十分に説明する。そうして与党も野党も納得いく形の法案まで持っていく。


もし全く納得のいかないダメダメ法案が出てきたら、法案を丸ごとボツにさせる。


これで十分民主主義は成り立つのです。


逆に、別に法案Aに対して対案Bを出したところで、民主主義は成り立ちません。どっちもダメダメな場合があり得るわけですし、採決になったら単純に数の多い与党の法案Aが矛盾を孕んだまま通ってしまう恐れがあるからです。


対案を出すより、政府与党のやることをチェックして、おかしなところがあったら批判するということこそ、民主主義を保つために野党に求められる最も必要な仕事です。


だから「批判ばかりで対案を出さない」という批判は、そもそも民主主義をまるで理解していない発言です。批判こそが最も大事な野党の役割です。



「野党は逆張り批判ばかり」はデマである


「批判が重要」と言うと、「批判のための批判でもいいのか」と言い出すバカがいるので、それについても一応触れておきましょう。以前このブログにこんなコメントが来ました。

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>>自民党の逆張り批判ばっかしてるやつなんて聞くに値しない

「野党が自民党の逆張り批判ばっかしてる」なんて言う奴は、自分で何一つ調べたことがない脳みその停止したバカの典型だと言っていいです。


以前も記事にしたことがありますが、例えば、第195回国会では13の決議が行われました。その結果は以下のようになっています。

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ごらんの通り、13の決議のうち、4つが全会一致。5つが95%以上の賛成票を集めています(ちなみに5つの審議で「反対票11」を投じたのは維新の会です)。


これを見ればわかる通り、野党が「自民党の逆張り批判ばっかしてる」なんて大嘘中の大嘘です。



全会一致で成立する法案はほとんどニュースにならず、多くの批判が集まった物議を醸す法案の時だけニュースになるので、あたかも野党がいつも反対ばかりして「逆張り批判ばっかしてる」みたいに見えるんでしょうけど、実際にはそんなことないことはちょっと調べれば明らかです。そして、おかしいことをおかしいと言うのは当たり前です。


「野党は逆張り批判っかしてる」とかいう奴は、自分で何にも調べたことがないただのバカにすぎません。こういう脳みそ停止したバカに耳を貸さないように気を付けましょう。



政府与党をチェックする、批判することこそ野党の役割


与野党の役割は、マンガ家と編集者の役割に似ていると言えましょう。


マンガ家はマンガの案を作って編集者に提出します。


編集者は内容をチェックして、面白くなかったり、おかしなところがあったりすればダメ出しをします。もしも修正してもどうしようもないレベルにつまらなかったら丸ごとボツにします。


マンガ家は編集者の指摘を受けて、内容を修正し、また再度提出します。編集者の指摘に納得がいかなければ、話し合って編集者の方を納得させます。


こうやって、案を出すマンガ家と、それをチェックしてダメ出しする編集者のやり取りにより、作品が完成します。もちろん自ら案を出す編集者もいますが、それはマストではなく、別にマンガ家の案に対して編集者が自ら対案を出さずとも、ちゃんとチェックしてダメ出しをすることができれば、面白い作品を作り上げることができるのです。


国会の法案も同じように、政府与党が案を出して、それを野党がチェックしてダメ出しをして、政府与党が法案を修正したり、反論したりしながら、できるだけ多くの人が納得する形のものを作っていく。もしも根本からダメダメなら法案を丸ごとボツにする。


それで十分民主主義は健全に成り立つのです。


もちろん上で見たように野党は多くの対案を提出していますが、対案を出せば民主主義が成り立つというものではありません。民主主義を成り立たせるために、野党に求められる最も重要な仕事は、政府与党のやることをチェックし、ダメ出しすることです。


対案をいくら提出しようが、それで民主主義が成り立つかどうかには全く関係ありません。しかし、批判が無くなったら民主主義が崩壊するのは明らかです。批判なき権力は絶対腐敗するというのは人類の歴史が証明しており、その例の一つが今のロシアです。


従って、冒頭で述べた通り、「野党は対案を出さずに批判ばかり」という野党批判は、二重に間違っています。


1つは、「野党は対案を出している」という点。


もう1つは、「批判することこそ民主主義を保つために野党に求められる最も重要な役割である」という点。


もういい加減、「野党は対案を出さずに批判ばかり」とか言うバカに騙されるのはやめましょう。野党が批判を抑え、対案提出ばかりしていたら民主主義はダメになります。この批判は民主主義自体を根本から破壊しかねない妄言です。


民主主義を成り立たせるためには、対案を出すこと以上に、批判することこそが重要なんだという、当たり前の認識を、民主主義国家の国民はちゃんと持たねばなりません。



追記:自民党支持者の頭ン中


この記事のコメント欄にこんなコメントが来ました。(この「ひとりの日本人」を名乗る人は、これまでにも多くのコメントを投稿している人物で、恐らく自民党支持者だと思われる)

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>>立憲民主がどんな法案を作っているのかちょっと確認して見たのですが、ネット投票推進法案を衆議院に提出しているようですね。
>>これは評価できるのですが、おそらく自滅行為となることでしょう。

>>ネット投票の導入→若者の投票率向上→立憲民主の衰退。
>>これは簡単に予想できることなのですが、法案自体は評価できるものでも立憲民主は自身が若者にどう見られているのかすら理解出来てないのでしょうね。若者から人気だとでも思ってるんでしょうかね?
>>立憲民主は自己分析すら間違ってるわけで、これでは政権を任せる能力は無いでしょうね。



信じられないぐらい考えが腐ってる。なんでここまで腐れるのか。


この「ひとりの日本人」と言う人が言っているネット投票推進法案とはこれのこと。



立憲の説明によれば、この法案は

「日本国憲法の精神にのっとり、年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき投票所への移動に困難を有する者を含む全ての選挙人等の投票の機会を等しく確保する」

ためのものだと言います。病気、怪我、その他の理由で投票に行けない人の投票機会を確保するためのものです。国民の権利の保護が目的です。


で、「ひとりの日本人」を名乗るこの人、法案自体は「評価できる」と言いながら、


「ネット投票が可能になり、若者の投票率を上げたら、立憲民主党は衰退する」
「それなのに若者の投票率を挙げようとする立憲民主党は自己分析が出来ていない」
「自己分析もできない党に政権は任せられない」


と言って、自分が評価する法案を提出した党を批判してるわけです。


つまりこの人、「政党は国民利益ためではなく、自分たちの党に有利になるかならないかで法案を考えるべきだ」って言ってるわけですよ。


立憲民主党がこの法案を出したのは、投票所に行けない人たちの権利を保護するためであり、自分たちに有利かどうかで考えたわけではないでしょう。


一方、自民党は、検察庁法を改悪して、自分に都合のいい検事総長を据えようとしたり、選挙の区割りを自分に都合のいいように変えようとしたりと、国民のことなんて何にも考えずに、自分たちの党利党略しか考えないことを繰り返してきました。私からしたらゴミと言うしかありませんが、この「ひとりの日本人」を名乗る人は、どうやらそれが正しい政治の在り方だと思っているのでしょう。


「自分の党利党略しか考えず、自分たちの政党に有利かどうかで判断する政党」


「自分の党に有利かどうかではなく、国民利益を考える政党」


どっちに政権を預けるべきかといったら、疑いようもなく後者ですね。

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