<ざっくり言うと>
  • 社会学者・古市憲寿、国民の「分断」を「別に悪いことじゃない」と発言。社会学者なのに「分断」がなぜ起きるのか、なぜ悪いのか、全く理解できていない。
  • 「分断」は為政者が他人の意見を聞かない、もしくは自分に賛同する意見だけを聞いて政治を行うことによって起きる。為政者が多様な意見をうまく擦り合わせているときには「分断」は起きない。
  • 今回の国葬も、前例に倣い内閣・自民党合同葬なら「分断」は起きなかった。一切の議論なしに独断で国葬を決めたから「分断」が起きた。古市が「分断は別に悪いことじゃない」と思っているのは、古市が国葬賛成派だからに過ぎない。
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↑古市は「分断」を健全な民主主義だと勘違いしているが、決して健全ではない。

古市憲寿がこんなことを言っていたらしい。
 テレビ朝日系のニュース情報番組「中居正広のキャスターな会」が1日に放送され、27日に行われた安倍元首相の国葬を特集。国内のみならず海外メディアからも「分断を招いた」と報じられたことに、社会学者でコメンテーターの古市憲寿氏(37)が「分断は悪いことではない」と自論を展開した。

(略)

 古市氏は「分断って別に悪いことじゃないと思うんですよね。逆に分断なく日本中がみんな喪に服すの怖いじゃないですか」ともっともな指摘。さらに「民主主義の国で、しかも政治家の葬儀なんだから、そこに賛成反対があるのは然り。両方の立場の人が声を上げられるチャンスもあった。だから、分断は悪いことじゃないと思う」と自論を展開し、国内外が問題視する「分断」という見方に釘を刺した。(2022年10月1日
古市憲寿は、現在問題視されている「分断」が、あたかも民主主義の言論の自由の結果みたいに言っています。この古市の発言に納得してしまった人も少なくないでしょうが、はっきり言わせてもらって古市は「分断」が何か全く理解できていません。


社会学者を名乗っている人にこの手の問題で説教するのもなんですけど、古市みたいに勘違いしている人のために「分断」とは何か、「分断」の何が問題か、記事にしておこうと思います。



「分断」は民主主義ではなく為政者の傲慢で起きる


驚いたことに、なんで今回の国葬が「分断を招いた」と言われているのか、古市憲寿は社会学者を名乗っているくせに全く理解できていません。


今回の国葬が分断を招いたと言われるのは、岸田が勝手に決めたからです。


もしも最初から国葬に関する法律があって、それに則って決めたなら分断を招くことはありません。


もしも国会を開き、議論を重ね、与野党が合意できる形に持って行ったのなら、分断を招くことはありません。


しかし、今回、岸田は反対派の声を一切聞くことなく、前例も無視し、世論調査で反対が6割を超える中、国葬を強行しました。


古市は「分断」が健全な民主主義による意見の相違で起きているかのように勘違いしていますが、事実は真逆で、「分断」はこのように為政者の傲慢によって起きるのです。



分断を生まないのが真の民主主義


まともな民主主義国家であるならば、為政者は様々な意見を聞き、落としどころを探します。ちゃんとプロセスを踏んで、できるだけ多くの人が納得できる道を探します。


他方、不健全な傲慢な為政者は、他人の意見を聞きません。だから為政者と同じ意見の人は大いに満足するのに対し、反対派は全く納得しません。


こうして生まれるのが国民の「分断」です。


今回で言えば、安倍を追悼したい人も、安倍を嫌う人も、どっちも文句を言わない落としどころとして、せいぜい内閣・自民党合同葬ぐらいにしたことでしょう。


ところが、前例も無視し、法整備もなく、国会にもかけず、岸田の独断で決めたのが今回の国葬です。


結果、国葬賛成派は大いに盛り上がり大賛成するのに対し、国葬反対派は全く納得がいかず、対立が起きます。


お互いをののしりあい、今回賛成派は反対派を「反日」だの「日本人じゃない」だの「極左暴力集団」だの「売国奴」だの滅茶苦茶言うようにまでなりました。


これが国民の「分断」です。


為政者が反対派の意見も聞き、お互い納得いく形に落とし込んでいればこんなことにはならなかったのです。


古市は「分断」の反対が全体主義みたいに言っていますが、とんでもない間違いです。


全体主義は、国家の考えに国民全員が従っている状態です。


「分断」は、国家が国民の声を聞かない、もしくは一部の国民の声だけを聞くことによって起きます。


為政者が国民の声を聞かない非民主的な状態という点では全く同じで、反対意見を粛正することで「分断」を解消した状態が全体主義です。


表にするとこんな感じ。

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古市は「分断」を「別に悪いことじゃない」とか言っていますが、それは古市が安倍晋三の国葬賛成派だったからにすぎません。


古市は「分断」が意見の自由がある結果だと思っているようですが、そうではなく、為政者が意見を聞かない結果が「分断」なのです。



安倍晋三が招いた「分断」とそれを引き継いだ岸田


安倍晋三は反対派の意見というものを全く聞こうとしない男でした。事実、安倍晋三は自身への批判を「なるべく受け流していく」と発言しています。



自分を批判する国民を指さして「こんな人たち」と言い、「負けるわけにはいかない」と敵意をあらわにしました。

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2015年の安保法案の時は、まだ国会に法案を提出してもいないときに、米議会で「この夏までに成就させます」と約束してしまいました。議会軽視もいいところです。


↓国会議論を始めさえしていない状態で法案成立を国際的な約束にした安倍
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そして、憲法学者の98%が違憲、もしくは違憲の疑いと指摘する中、安保法案を強行採決しました。

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弁護士ドットコム参照


このように、「反対意見は聞かない」「議論は無視する」が安倍政権の基本的な姿勢でした。


それを継承した岸田政権も、大臣が「野党の言うことは一切聞かない」と堂々と発言し、その大臣を改造内閣でも留任させました。



そして、本当に野党の言うことを一切聞かず、反対の国民の意見を一切無視して、国会議論も何一つなしに国葬を強行した岸田文雄。


現在の国民の「分断」は、国民が自由な意見を言えることによって起きたのではなく、為政者が国民の自由な意見を聞かないことによって起きているのです。

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