<今回のデマ>
  • 関東大震災での朝鮮人暴動は事実。内務省も司法省も認めている。
  • 自警団の行為を虐殺と言うのは不正確。
  • 関東大震災で殺された朝鮮人は約300人。
<事実>
  • 内務省は大正15年発行の『大正震災志』の中で当時流れた流言(デマ)として朝鮮人虐殺の記事を紹介しているし、司法省は大正12年に朝鮮人暴動や井戸に毒を流したなどの噂を「一定の計画の下に脈絡ある非行を為したる事跡を認め難し」として否定している。
  • 震災時の「自警団」の「多くは震災直後に自然発生的に形成された」ものであるうえに、「当時武器を持った民間人集団はすべて『自警団』と表現された」にすぎず、「自警団の行為だから虐殺と言うのは不正確」という弁解は全くの意味不明。
  • 当時の司法省の記録には、警察に保護されている朝鮮人を民衆が警察署を襲撃して殺害した事件なども記録されており、暴動に対する自衛どころか明らかな虐殺である。
  • 約300人とは起訴された事件での被害者人数にすぎず、実際の数はもっと多い。内閣府の中央防災会議は虐殺された人数は震災死者数の1%~数%と推測しており、それに従えば1000人~数千人が虐殺されたことになる。
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東京都が東京都人権プラザで開催されている企画展において、関東大震災での朝鮮人虐殺題材の映像作品を上映禁止にしたことで、朝鮮人虐殺がにわかに注目を集めています。




記事によれば「(都の担当)職員は朝鮮人虐殺が歴史家の見解が分かれる史実だと意識し」たとなっていますが、このブログでは朝鮮人虐殺否定論については既に数回取り上げております。殺害された人数については諸説あるにせよ、「歴史家の見解が分かれ」てなどおらず、虐殺の事実を否定しているのは歴史家でも何でもない、井上太郎とか坂東忠信とか自称愛国者のバカだけでしょう。






にもかかわらず、まだこんなことを言う奴がいるから困ってしまいます。


石井は「虐殺はあったがそれは朝鮮人暴動があったからだ。自警団による正当防衛だ」と言いたいようですね。石井孝明についてはこのブログで何度か取り上げたことがありますが、今回も酷い。何度も同じことを記事にするのも何なんですが、また同じ問題が再燃して同じようなデマを飛ばす奴がいるので、また記事にしてみたいと思います。



全く根拠にならない当時の新聞を根拠にする石井孝明


まず、石井は朝鮮人虐殺についてこう述べています。


>>自警団の行為で虐殺の言葉を使うのは不正確です


意味不明ですね。自警団がやろうが警察がやろうが軍隊がやろうが誰がやろうが虐殺は虐殺です。石井の頭の中では、軍隊が行ったウンデット・ニーの虐殺とかソンミ村の虐殺とかも虐殺じゃなくなるんでしょうか?


そもそも石井は自警団を何だと思っているんでしょう? 内閣府の中央防災会議の報告書によれば「(自警団の)>多くは震災直後に自然発生的に形成された」ものであり、「当時武器を持った民間人集団はすべて『自警団』と表現された」ので、警察でも何でもない連中がただ武器を持っただけなわけです。「自警団だ」なんてのが弁明になるわけがありません。


なぜ「自警団がやったんだから虐殺じゃない」などと言うのか。それは石井が朝鮮人暴動などというデマを100年以上たった今も信じていて、虐殺ではなく正当防衛だと思っているからでしょう。やれやれ。


石井は当時の新聞記事を根拠にしていますが、全くの無意味です。なぜなら、通信手段もヘリコプターのような取材手段も何にもない当時は新聞も伝聞に頼っていたため、こんなデタラメ記事が踊りまくる始末だったからです。

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参照
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大正15年(1926年)に内務省が発行した『大正震災志』には、当時の新聞報道についての記述があります。現在国会図書館のHPで読むことができますが(270ページ~276ページ)、そこにはこんな風に書かれています。
交通通信がすべて途絶した当時であるから、東京横浜市民さえ、眼前の惨害より他の一切は全く知らなかった。まして他地方の人達はただただ張膽駭目するのみで、あせりにあせってもその被害状況をつまびらかにし得なかったのである。当時各地方新聞が号外もしくは本紙において報道したものの中には、随分思い切ったものがあった。
現在と違い碌な取材ができないため、先ほどの「伊豆大島沈没」とか「新島出現」とかデタラメが載りまくったのです。『大正震災志』には当時の新聞の誤報が数多く載っており、中にはこんなものまであります。
品川は海嘯(津波)によって全滅(福岡日々新聞)

宮城も尚焼けつつあり(大阪毎日新聞)

九月一日午前六時富士山爆発(台湾日々新聞)

小笠原伊豆諸島は(略)海中に没し全ての島はなかった(岩手新聞)

皇居を一時京都に移すことに決定す(樺太夕刊)
富士山が爆発し、伊豆諸島は全て沈み、皇居を京都に移すことも決定しています。うーん。すごい。当時の新聞が情報源としてまるで信頼できないことがよくわかりますね。



内務省も司法省も朝鮮人暴動を否定


さて、その『大正震災志』には朝鮮人暴動のデマとしてこんな例も載っています。
麻布連隊一個小隊は横浜方面より隊伍を組み進行してきた四百名の鮮人と衝突し激戦の結果全滅(伊予新聞)

数百の不逞鮮人隊伍を組みて蜂起暴戻(伊勢新聞)

鮮人二千御殿場襲撃(樺太夕刊)
当時朝鮮人暴動があったなんて記事は内務省が否定しているわけです。石井孝明は当時の新聞記事を引用し、「当時の内務省が10月に朝鮮人暴動があったことを発表している」と言っていますが、実際には内務省は朝鮮人暴動の記事を否定しています


さらに、現在の内閣府のHPには中央防災会議による「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」というものが掲載されていますが、そこにはこのように書かれています。
 民間人による殺傷行動についての官庁資料で最も網羅的なものは、震災直後に内務大臣を務めた後藤新平の文書中に残る「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」(略) である。これは司法省が作成したもので、(略)司法省としての見解をまとめたものと思われる。

 この資料によれば、朝鮮人による殺傷事件は殺人2件、傷害3件が記録されているが、すべて被疑者不詳であり、殺人に関しては被害者も不詳である。このため、起訴には至らなかったと考えられる。流言にあった蜂起、放火、投毒等については、「一定の計画の下に脈絡ある非行を為したる事跡を認め難し」と否定している。検察事務統一のため、9月11日に臨時震災救護 事務局警備部で開催された司法省刑事局長主宰の司法委員会会同で、朝鮮人の「不逞行為に就ても厳正なる捜査検察を行ふこと」が決議され、翌日各主務長官の承認を得て実施されている (「関東戒厳司令部詳報」)。この方針に従って調査したものの、上述の程度にしか確認できなかったということである。
石井孝明は「司法省が、朝鮮人による暴動や乱暴を広報しています」と言っていますが、実際には司法省は朝鮮人暴動を否定しています。


石井孝明はこの辺を全く読んでいないのでしょう。「裁判記録などがあれば誰か調べて公開してほしい」などと言っていますが、中央防災会議によれば、当時の司法省に資料によれば朝鮮人暴動なんて存在さえしていないし、散発的な殺人や傷害さえ被疑者不詳や被害者不詳で起訴にさえ至っていないのです。


ジャーナリストを名乗るなら「誰か調べて公開してほしい」とか言ってないで自分で調べればいいのに。そうしていれば、司法省が朝鮮人暴動の存在を否定していることも、散発的な殺人や傷害さえ起訴に至っていないことが分かったでしょうに。



朝鮮人被害者の数をできるだけ小さく見せようとする石井孝明


石井は「約300人の殺害」と言って、あたかも殺された朝鮮人が300人しかいなかったかのように言っていますが、これも事実に反します。


中央防災会議の報告書には、朝鮮人虐殺について、当時の司法省の記録に「9月2日から6日までに発生した53件の事件で、合わせて朝鮮人233名を殺害し、42 名に創傷を負わせたことにより、11月15日現在、367名が起訴されていた」とあると記されています。これは、「『犯罪行為に因り殺傷せられたるものにして明確に認め得べきもの』として起訴された事件だけ」ですので、実際の被害件数の一部にとどまります。また、朝鮮人と間違われて、日本人58名や、中国人3名も殺害されています。いずれも起訴された事件についてのみの数字ですので、実際の被害の一部にとどまります。



震災から約1か月半後に内務省が把握したいた数が248名、朝鮮総督府が出した見込み数が813名、「在日本関東地方罹災朝鮮同胞慰問班」の調査だと6600名と、その数ははっきりしませんが、起訴に至った事件だけで朝鮮人に間違えられた日本人を含めて300人以上いるのです。なんと、この中には、「警察署内に保護されている朝鮮人を襲撃して殺害」したものもあるとのことなので、いかに当時狂気が世の中を支配していたかがわかります。


「自警団の行為で虐殺の言葉を使うのは不正確」なんて言って、あたかも自警団による正当防衛であるかのように言う石井の主張は全くデタラメです。


この報告書によれば、震災死者数の1%~数%が殺害によるものだと考えられるそうで、とんでもない話です。関東大震災の被害者は約10万5千人ですので、1000人~数千人の被害者がいたと考えられます。石井が言っている「300人」とは起訴に至った数にすぎません。



石井孝明を信じてはいけない


石井が今回言っているようなことは、当時の内務省の『大正震災志』や内閣府のHPには中央防災会議による「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」を読めば否定できます。石井はジャーナリストを名乗りながら、この辺の物を調べもせずに、恐らくネットで見た与太話を信じて朝鮮人暴動は事実だなどと思ってしまったのでしょう。


石井が碌に調べずにデタラメを言うことは今回に限ったことではなく、これまでもタレントのローラが辺野古移設反対署名を呼びかけたら「内政干渉だ」と言ったり



検察庁法改正案でも碌に調べないままデタラメ言ったり



ただの略字を「中共の簡体字だ!」と言ったり



さらには香山リカ氏に対し「精神疾患」とか「外国政府から資金が提供されている」とか「暴力団や極左暴力集団と繋がっている」とかデタラメ言ったり(訴えられそうになったためデマを認めて謝罪)、辛淑玉氏に「工作員」とか「スリーパーセル」とか言って訴えられて敗訴したこともありました(しかも訴えられたら「冗談のつもりだった」と小学生みたいな言い訳をした)。



こんな男の言うことは一切聞かない、信じないと言うのが賢明でしょう。

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