<今回のデマ>
  • マッカーサーは日本の戦争が自衛戦争だと認めていた。
<事実>
  • マッカーサーは self-defence ではなく security と言っている。
  • マッカーサーは該当箇所前後で軍事的衝突の話はしておらず、資源確保や失業の懸念など専ら経済の話をしている。直前に失業者について言及しているので、この security は軍事的な安全保障の意味ではなく、雇用の安定を意味する job security のことだと考えるのが妥当である。
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↑とっくの昔に検証がなされているデマを脳みそ停止して鵜呑みにして再拡散するバカの典型例。困ったもんである。


デマというものは恐ろしいもので、何度否定されても、否定されたことを知らない人がまた同じデマを広め始めます。今回はこんなデマをご紹介しましょう。

この「マッカーサーが大東亜戦争は日本の自衛戦争だったと認めている」というデマは、ちょっと検索すれば真相がバシバシ出てくるんですよ。だからこのデマの存在は知っていたんですが、正直もうこんなの信じてる人はいないだろうと思ってこのブログで取り上げてこなかったんです。

↓他のサイトでデマ検証がとっくの昔になされているので、このブログでは取り上げてこなかった。


ところがまだこんなデマを流す奴がいるんですね。なんでいまだにこんなの信じられるのか、その脳みその回路が理解できませんが、今回はこれを取り上げます。


マッカーサーが言ったのは security であり self-defence(自衛)ではない


「マッカーサー 自衛戦争」なんかで検索すると同じデマ吐いているサイトが山ほど見つかりますが、実はこのデマの元の発言ってwikipediaにまで掲載されているので、まんま引用しますね。。


STRATEGY AGAINST JAPAN IN WORLD WAR II
・Senator Hicknlooper. Question No.5: Isn't your proposal for sea and air blockade of Red China the same strategy by which Americans achieved victory over the Japanese in the Pacific?
(ヒックンルーパー上院議員・第5質問:赤化中国に対する海空封鎖というあなたの提案は、アメリカが太平洋において日本に勝利したのと同じ戦略ではありませんか?)

・General MacArthur. Yes, sir. In the Pacific we by-passed them. We closed in.・・・ There is practically nothing indigenous to Japan except the silkworm. They lack cotton, they lack wool, they lack petroleum products, they lack tin, they lack rubber, they lack great many other things, all of which was in the Asiatic basin. They feared that if those supplies were cut off, there would be 10 to 12 million people unoccupied in Japan. Their purpose, therefore in going to war was largely dictated by security.

The raw materials -- those countries which furnished raw materials for their manufacture -- such countries as Malaya, Indonesia, the Philippines, and so on -- they, with the advantage of preparedness and surprise, seized all those bases, and their general strategic concept was to hold those outlying bastions, the islands of the Pacific, so that we would bleed ourselves white in trying to reconquer them, and that the losses would be so tremendous that we would ultimately acquiesce in a treaty which would allow them to control the basic products of the places they had captured.

In meeting that, we evolved an entirely new strategy. They held certain bastion points, and what we did was to evade those points, and go around them.

We came in behind them, and we crept up and crept up, and crept up, always approaching the lanes of communication which led from those countries, conquered countries, to Japan.

(マッカーサー将軍:はい。太平洋において、我々は、彼らを回避して、これを包囲しました。(中略)・・・日本は産品がほとんど何もありません、蚕(絹産業)を除いて。日本には綿がない、羊毛がない、石油製品がない、スズがない、ゴムがない、その他多くの物がない、が、その全てがアジア地域にはあった。日本は恐れていました。もし、それらの供給が断ち切られたら、日本では1000万人から1200万人の失業者が生じる。それゆえ、日本が戦争に突入した目的は、主としてsecurityの必要に迫られてのことでした。原材料、すなわち、日本の製造業に必要な原材料、これを提供する国々である、マレー、インドネシア、フィリピンなどは、事前準備と奇襲の優位により日本が占領していました。日本の一般的な戦略方針は、太平洋上の島々を外郭陣地として確保し、我々がその全てを奪い返すには多大の損失が生じると思わせることによって、日本が占領地から原材料を確保することを我々に黙認させる、というものでした。これに対して、我々は全く新規の戦略を編み出しました。日本軍がある陣地を保持していても、我々はこれを飛び越していきました。我々は日本軍の背後へと忍び寄り、忍び寄り、忍び寄り、常に日本とそれらの国々、占領地を結ぶ補給線に接近しました。)
— p.170、General Macarthur Speeches & Reports: 1908-1964
この「日本が戦争に突入した目的は、主としてsecurityの必要に迫られてのことでした」という発言を「日本が戦争に突入した目的は自衛のためでした」と訳して拡散したバカがいたんですね。


しかしそもそも「自衛」は self-defence ですし、読めばわかるように「絹産業を除いて製品がない」とか「石油がない」とか「供給が断ち切られたら1000万から1200万人の失業者が生じる」とか、経済の話しかしていません。


その直前に失業者が生じる恐れについて言及していることを考えれば、この security は「自衛」ではないことはもちろん、軍事的な安全保障の意味でさえなく、経済的な安定の意味でしょう。英語で job security って言うと「雇用保障」「職の安定」って意味なんです。「失業者を出さないために資源をアジアに奪いに行った」という趣旨です。


ま、このsecurityを「雇用保障」と訳そうが「安全保障」と訳そうが、どこどう読んだって、マッカーサーが日本の戦争を自衛戦争だと肯定したなんて意味にはならんのですよ。資源や経済的利益を求めて軍隊を動かすなんて侵略戦争以外のなんだと言うのやら。というか、それを侵略戦争というんだろうに。


ちなみに今回引用したイサク (@bER2YpZXY3TapXc)って人、以前このブログで紹介した名越二荒之助っていうデマ屋の「世界の指導者が日本の戦争を絶賛」系デマも信じまくっているみたいです。



今回のデマツイートをしているイサクってやつは、「共産党とサヨクのデマ」とか言ってますが、自分は自分に都合のいいデマを一切何の検証もしないで脳みそ停止して鵜呑みにしている典型的知能停止バカだと言えます。こういう奴を信じないようにしたいものです。

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